第6話 小児性愛に効く薬毒6
その夜、杏里は熱を出した。
身体は震えて汗を大量にかいている。
何度も病院へ連れて行ってと母親に頼んだが、母親は面倒くさそうに生返事をしてから布団に入った。
美優は何度もタオルを水で濡らして杏里の頭を冷やしてやった。
今夜は寝ないで杏里の看病をしようと思って、布団の中で震えている杏里のすぐ側についていた。顔や身体を拭いてやる度に杏里は「ありがとう、お姉ちゃん」と言って少しだけ笑顔を見せる。
深夜、さすがに美優もうとうととなってしまい。
杏里のすぐ横でたたみの上に横になって寝てしまっていた。
はあはあという息苦しそうな声がすぐ側で聞こえて、ふっと目を覚ました。
ぱっと杏里の方を見ると、布団をめくり上げパジャマのボタンを外す黒い影があった。「杏里!」
慌てて身体を起こすと、酔って目の焦点の合っていない継父が妹の上に乗っかっている。
「杏里は熱があるの! やめて!!」
「ああ? うるせえーよ。てめぇ」
継父の腕を押さえて止めようとして強く振り払われ、押し入れの方まで身体が飛んで行った。
素早く身体を起こして、
「やめてっていってるでしょ! 杏里は熱が高いの!」
と言ったが、継父は苦しそうな杏里の身体を無理矢理抱き起こして、汗をかいた首筋をべろり、べろりと何度も舐めた。
父親の舌は杏里の汗を何度も舐めとったのだ。
「やめて! やめて!」
と美優が何度も妹を奪い返そうとかかっていくが、その度に顔や頭を殴られる。
「おねえ……ちゃん」
苦しそうな息づかいで杏里が美優の名前を呼んだ。
「杏里!」
「へっへっへ」
と継父は下卑た笑い声を出した。
だが次の瞬間、継父の笑顔が止んだ。
杏里から腕を放したので、杏里の身体がどさっと布団へ落ちた。
美優は素早く杏里に寄り添い、熱のある震える身体を抱き寄せた。
継父は喉を押さえ、うげっうげっと嘔吐いている。
嘔吐きながら身体を起こし、よろよろとふすまを開けて台所の方へ行く。
流し台に寄りかかり、コップに水をくんで飲んでいる。
美優は杏里を布団に入れてやってからふすまを閉めたが、そのふすまの隙間から継父の様子をうかがった。
継父は流し台で水を何杯も何杯も飲んでいる。
水を飲みながらも、うげぇうげえぇと嘔吐いている。
それからしばらく同じ姿勢でいたが、やがて、身体がずるずると滑り落ちだした。
その身体を支える力がないようで、そのまま床にずるずると倒れ込んだ。
身体がピクピクとなっている。
目がかっと開かれ、口から泡を吹いている。
股間の辺りが濡れているのは失禁しているのだろう。
継父の目が宙を彷徨っている。
助けを求めているような怯えた目だった。
母親は睡眠薬を飲むのが習慣なので、よほどのことがないと起きないだろう。
継父の目が美優の部屋の方へ向く。
ふすまの隙間から覗いている美優とばっちり目が合ったが、美優はパタンとふすまを閉めた。しばらくはうげえうげえというような声や聞き取れないような低い声で何かを言っていたようだ。杏里の身体を拭いてやると少し楽になったのか、杏里がすうすうと寝息をたてて眠り始めた。疲れきっていた美優は自分も布団を敷いて横になった。
酷く身体や頭を殴られ、そして大泣きもしたので美優は疲れきっていた。
すぐに睡魔が襲ってきて、闇に落ちていった。
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