第94話 富豪税と、宝石店と、悪臭除去

 貴族派が打ってきた次なる一手は富豪税。

 金持ちをターゲットにした税金だ。

 完全に俺を狙い撃ちにしているな。


「どういたしましょうか?」


 文官が聞いてきた。


「1割ぐらいは寄付して、後は物を買ってしまえ。上がりそうな美術品とか貴金属とかあるだろう」

「貴金属や美術品なら確かにいつでも換金できます。寄付はどうしてですか」

「金持ちは妬まれる。それをやわらげようというわけだ」

「他の貴族にはない発想ですね。ですが、名声を得るのは良いと思います」


 貴族派も考えることは同じで、富を蓄えている奴は貴金属などを買い漁った。

 もっとも、こういう行為の走ったのは貴族派でも下っ端だ。

 上の連中は堂々と脱税している。

 策を仕掛けたつもりなんだろうがなんだかな。

 摘発して下さいと言わんばかりだ。


 ただ、それをすると全面戦争になるがな。


 俺が作った倉に入ろうとする盗賊の多い事と言ったら。

 自動迎撃があるのを知ってか知らずか。

 たぶん貴族派が盗賊に情報を与えて煽っているのだろう。


 今日はエクレアを連れて宝石店に来た。


「これはこれは、子爵様におかれましては」


 揉み手で俺達を迎える店員。


「エクレア、欲しいのがあったら遠慮なく言え。税金で持っていかれるぐらいなら使った方が良い」

「どうしようかな。どれも高級過ぎて似合わない気がするの」

「じゃあ、こうしよう。店員、この店のアクセサリー、全部買い上げる」


「お客様、全部ですか」


 驚いた様子の店員。


「全部だ。金なら腐るほどある」

「金貨2000枚を超えると思われますが」

「構わない。エクレア、次の店に行こうか。ここの商品は全て買ったから見てる意味がない」

「はい」


 呆れた様子のエクレア。

 何軒か宝石店を梯子した。

 そして、何百組もの銀の燭台と、銀食器も購入した。

 特注して金で作らせようかなとも思ったが悪趣味なのでやめた。


 燭台のロウソク部分には光を発するアプリが付けてあるのは言うまでもない。

 これだけ買ってもまだ使いきれない。

 貴金属の店はほとんど回ったな。


 買い占めるとしたら何かな。

 貴族派が困るような買い占め方をしたい。

 買い占めても腐らない物がいいな。


 何かあるだろうか。

 ああ、魔石を忘れてた。

 消耗品で腐らないし、いざという時は換金も出来る。

 魔道具生産をしている貴族派はかなり痛手になるだろう。

 俺は買い占めた魔石をアプリにして放出すれば、金はどんどん入って来る。


 よし魔石を買い占めよう。

 魔石の買占めが始まった。

 この買占めは永遠に終わらない。


 魔石の高騰は魔道具を扱っている貴族に大打撃を与えた。

 魔石買占めに対する法律ができたぐらいだ。

 くそっ、法律を自由に作れる奴は強いな。


 何か法律を作れないような商品はないかな。

 俺は香水や香の原料を買い漁った。

 これは他国の物も多い。

 他国での商売にも法律を適用できるかな。

 ワクワクしながら見守っていたら、俺の奴隷になっている貴族達が根を上げた。


「香のない生活には耐えられん。貴殿が買い占めているのだろう。融通してくれないか」


 そう奴隷になっている貴族が言ってきた。


「お前達が使うぐらいの量までは融通してやろう。転売したらどうなるか分かっているな」

「もちろん。女房にせっつかれて大変だったのだ」


 体臭がきついものな。

 香水がない生活には耐えられないか。

 貴族なんだから、毎日風呂に入れよと思わないでもない。

 お湯を作るアプリは前に作ったのにな。


 匂い取りは作ったから、体臭を取るのは少しの改造でいける。

 ただ匂いを取ると何にも匂いがしなくなる。

 香水の匂いも除去してしまう。


char stink[100]; /*悪臭百立方センチ*/

extern int tax_collection(int money);

extern MAGIC *magic_make(char *target_obj,int target_size,int image);

extern void magic_delete(MAGIC *mp);

extern void mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 if(tax_collection(100)==1){ /*税金徴収、銀貨貨1枚 金が無ければ、何も起こらない*/

  mp=magic_make(stink,sizeof(stink),IMAGEUNDEFINED); /*悪臭を魔法として登録*/

  magic_delete(mp); /*悪臭を消去*/

  mclose(mp); /*魔法を終わる*/

 }

}


 悪臭だけを取るアプリを作った。

 毒感知もだが、悪臭かどうか判断するイメージは五感に頼っている。


 本人が臭いと思わないと除去されないが、まあ良いだろう。

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