第89話 視察の旅と、盗賊国の今と、カジノ

 盗賊国アーキは、街道で関税を取っている。

 盗賊国が街道を整備したので益々行き来が盛んになったようだ。

 隣の国に物を売るには金を払って通るしかない。


 もちろん俺は払ってない。

 盗賊国の名誉公爵だからな。


 他国の爵位を持っている事は問題にはならない。

 そういう貴族も少なからず存在する。


 他国の王位継承権を持っている王族すらいる。

 もちろん、ほとんど末席だが。


 俺は犯罪奴隷を供に視察の旅に出ることにした。


 街道が確かに綺麗になっている。

 盗賊が出そうな木立は伐採されていて、日差しも差して込んでいる。

 前に通った時は鬱蒼と暗かったのだがな。


 やつらは元盗賊だけあって、そういう事を心得ている。

 もう道路整備だけで食っていけるんじゃないかな。


 盗賊国近くの村に立ち寄った。


「よう、景気はどうだい?」


 俺は村人に話し掛けた。


「お貴族様、好景気ですよ。盗賊国が食料を高値で仕入れてくれるんでウハウハです。街道も良くなって、旅人や商人の行き来も活発になってます」

「困ったことはないか?」

「かなり前ですが、盗賊国討伐に、国軍が来ましたよね。負けたので、一部が野盗化して始末に負えない」

「それは大変だな」


 はははっ、奴隷候補みっけ。

 俺は手紙をしたためた。


 しばらくこの村に逗留しよう。

 そして、3日後。

 うちの領から犯罪奴隷がやってきた。


「野盗がいるんだ。お前らのお仲間に加えてやれ」


 透明化と電撃のアプリがあるので、9割方の野盗は捕まった。

 奴隷化して犯罪奴隷に加える。

 半数をTSするのも忘れない。


「ありがとうございます」

「別に礼なんかいいって。野盗はゴブリンと一緒だからな」

「その通りです」


 街道に出る野盗は根こそぎ奴隷化してやろう。

 街道はますます栄え、盗賊国は肥え太るだろう。


 俺達は盗賊国の勢力圏内に入った。


「お疲れ様です」


 盗賊国の見張りが挨拶にきた。


「今回はお忍びの旅だ。上の方には、とりあえず好きにやれと言っておけ。俺の目ざわりにならない程度にな」

「はい、伝えておきます」


 盗賊国は凄かった。

 10階建ての建物が幾つも出来ている。

 いくら鉄筋コンクリート製とはいえ、大丈夫かな。

 ここは大陸で地震は少ない。


 まあ、こいつらが死んでもそれはそれで自業自得だ。

 高い建物はリスクがあると知っているはずだからな。

 でも高い建物を建てたかったのだな。


「何か不満はあるか?」

「楽しみがないって事ぐらいですね。酒飲んで、女とやるしか、やる事がない」

「そいつはなあ」


 娯楽か。

 魔王タイトの魔法手引書に、エアホッケーの魔法があった。

 これを提供してやるか。

 パンチングマシーンもあったな。

 飛ぶ板を改良したのも載っている。

 これを使えばレースとかも開催できるな。


 カジノを作ってやるか。

 それとフィールドアスレチックでも作ってみよう。


 温泉も良いな。

 まずは、カードゲームとサイコロ賭博はこの世界にもあるので、その台を設置。


 簡単なカジノは賑わいを見せた。

 旅人や商人も立ち寄るぐらいだ。

 それに関して俺は助言した。


「いいか、カジノは安全じゃなくてはならない。犯罪者を徹底的に取り締まれ。それとイカサマはなしだ。胴元というのは普通にやっていたら儲かるようになっている。変な欲はかくな」

「イカサマを使う客がいたら?」

「奴隷にしてやるから連れて来い」

「へへへ、楽しくなってきましたよ」


 賭場が安全なので、かなり賑わった。

 ただ、財布を軽くした商人は多数でた。


 フィールドアスレチックとかの大物施設は徐々に出来上がるだろう。

 盗賊国はカジノと道路整備でこれからもやっていけそうだ。

 早く温泉が出ないかな。


 こればっかりは運頼りだ。

 魔王タイトの魔法手引書にも地面に穴を掘る魔法はあっても、温泉を探す魔法はない。

 魔法は召喚魔法だから、温泉水を召喚する事はできる。

 でも温泉の温度や品質が安定しない。


 温いのぐらいならいいが、化学物質で肌が真っ赤に火傷するみたいな事態は勘弁してほしい。

 そして、温泉を遂に掘り当てた。


 魔法で掘ったから、手間はほとんど掛かってないが、とても苦労した感じがする。


「うひぃ、生き返りますね」

「そうだろ。温泉は良い物だ」


 俺は頭にタオルを載せて温泉に入りながらそう言った。

 さて視察の旅もこんなところでいいかな。

 王都から報せでは、貴族派が騒ぎ出しているらしい。

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