第74話 盗賊と、出陣と、隣国へ

 王都の商業ギルドに顔を出した。


「聞きましたか。隣国の街道は盗賊が出るそうです。行きかう商人の荷物だけが盗られています」

「それは困ったな」


 困ってなどいない。

 俺の手の者の仕業だからだ。


「噂では貴族派が雇った盗賊の制御が効かなくなったとか」

「なるほどね。それは貴族派が悪いな」


 これは嬉しい誤算だ。

 貴族派が雇った盗賊を奴隷にして、そして今回使ったから、こういう噂が立つのも頷ける話だ。


「海路は海賊が支配してますし、輸出が滞っていい迷惑です。子爵様、なんとかしてくれませんか」

「忙しいから、駄目だ」

「そうですか。残念ですね」


 さて、貴族派はどうするか。

 魔道具輸出が止まると実入りが少なくなる。

 何らかの動きを見せるんだろうな。


 噂を聞いてから2週間あまり、王都の大通りは民衆で埋め尽くされていた。

 国軍が出陣するというのでパレードをしているからだ。

 負けてあいつらが捕まっても口は割らない。

 そのように命令してあるからだ。


 とりあえず王都で推移を見守る。


 忙しい日々を送っていたら、執務室に文官が駆け込んできた。


「国軍が破れたそうです」

「もっと詳しく」

「一戦したそうですが、負けて食料と資金を奪われたようです。国軍に死者こそほとんどいないもの、戦いの継続は不可能という事で負け戦です」


 なるほどな。

 王都に国軍が戻ってきた。

 食料とお金がないので略奪騒ぎを起こしながらの帰還だ。


 国軍の評判はガタ落ちで、再出陣は難しいと言われている。

 率いていた将軍や士官はみんな左遷された。


 さて、隣国に乗り込むか。

 ラメルと一緒に飛ぶ馬車で街道を行く。

 奴隷達には旅人は襲うなと命令してあるので、俺が街道を通過するのは不思議ではない。


 国軍が破れた場所にやってきた。

 壊された戦車と、馬の死骸。

 土で汚れた旗。


 派手にやったようだ。

 国軍が弱体化するのは嬉しい。

 貴族派の次は王族だからな。


 国軍はもう貴族派の言う事を聞かないだろう。

 貴族派の影響力も排除出来て万々歳だ。


「ラメル、太ったんじゃないか?」

「お館様でもその言葉は許せません」

「ごめん。女性に太ったは禁句だったな」

「子供が出来たのです」

「そうかすまんな。そういう時期に連れ回して」

「いいえ安定期なので適度に動くのは良いそうです」


「とにかく良くやった。でかした」

「報告が遅れたのはちょっと不安だったのです。祝福されないんじゃないかと。日陰者ですから」

「俺はそんな事は思ってないぞ」

「妊娠してから不安が大きくなりまして」


「そうか夜の営みを拒否されてたので、てっきり愛が冷めたのかなと。そういう夫婦もいるから」

「愛は冷めてなどいません」


 さて、エクレアとの結婚を急がないと。

 婚姻願いの再提出は難しそうだな。

 出しても通らないだろう。


 仕方ない、子供達の認知だけで済ませておこう。


 アプリの使用料金のオンオフの魔法を作っておくか。


extern void tax_delay(void);

void main(void)

{

 tax_delay(); /*使用料を遅延させる*/

}


extern void tax_restart(void);

void main(void)

{

 tax_restart(); /*使用料を再開*/

}


 こんなので良いだろう。

 これで夜寝る時に硬貨が落ちる音に邪魔されない。

 もっと早く作っておけば良かったが、遅延している間の料金どうなるか不明だったからな。


 遅延なら良いが、無料だと勿体ない。

 なので、今までできなかった。

 今は金にかなり余裕があるので、試せる。


 魔王の魔法手引書を久々に読んだ。

 そこに気になる文言が。

 幼少期から訓練すると、特殊なスキルとも呼べる物を得るとある。

 俺の税金徴収は幼少期ではないが10年やったからな。


「ラメルの幼少期は何をして過ごしてた」

「お金を玩具にしてました」


 お金に関するスキルか。

 何だろう。


「お金に関する事で何か特別な事が出来たりしないか?」

「そういえば、お金を数えるのが一瞬です。見ただけで分かります」


 下らない能力だが、あって困る能力でもないな。

 エクレアの能力は何だろう。

 帰ったら聞いてみるか。

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