第73話 透明山羊と、借金と、盗賊
俺に従わない貴族達がモンスター退治に力を入れ始めた。
これは不味いな。
この流れは良くない。
なぜなら、モンスターの死骸を俺が買っているからだ。
そしてモンスターが少なくなれば奴らが定着してしまう。
揺さぶりを掛けたいが、方法を考えないと。
モンスターを放つのはやめにすると言ってある。
ならば。
俺は山羊に姿隠しを使った。
もちろん、自動迎撃の味方リストからは外してある。
そして、放牧した。
「あーあ、透明だから逃げられても、分からないや」
奴隷がお手上げの仕草をする。
「仕方ないな。お前のせいじゃない」
俺はわざとらしく奴隷を慰めた。
さあ、透明山羊が奴らの畑に襲来するぞ。
結果は見るまでもない奴らの畑はまる坊主になった。
「アフォガート子爵に法律違反の疑いありですぞ。透明な山羊を放ったでしょう。何匹かは仕留めて透明が解けております。証拠は明白。損害を補填して頂きたい」
貴族がそう言ってきた。
「ああ、山羊ね。確かにうちで飼っていたが逃げ出した。それになんの罪が?」
「白々しい。なんで山羊を透明にしたのですか」
「モンスターに襲われたら可哀想だと思ってな。嘘判別に掛かっても良い」
「くっ。だが、責任があるはずだ」
「はて、家畜が逃げ出して罪になると法律のどこに書いてあります?」
「家畜はいわゆる部下みたいな存在。責任があるはずです」
「では聞きたい。貴族派の貴族が俺の所に攻めてきたのは知っているよな。貴族派の上の方は責任を取ってくれるのかな?」
「それとこれとは話が違う」
「でも俺の方はただの動物。攻めてきた貴族は人間。どっちが責任が重いか。裁判で争っても良いぞ」
「くそっ」
「お帰りを」
貴族は帰り、部屋にラメルが入ってきた。
「言いつけ通りに、傘下の商会のいくつかは貴族に金を貸しました」
「馬鹿な奴らだ。俺の傘下から金を借りるとはな」
「貸す人がいないので仕方なかったのでは」
「まあな」
そして、俺は仮面を被り、傘下の商会の仲介で貴族と会った。
「こちらが魔法契約を執り行う魔法使いです」
「早く金を貸してくれ。すっからかんなのだ」
「では【魔法契約】」
魔法を行使して俺は仮面を取った。
ばれなかったのは最近アプリの使用料を一時的に止められるようになったのだ。
ようは税金を貰うのを一時遅延するイメージでいける。
「お前はアフォガート子爵。おのれ騙したな」
「俺の命令には絶対服従な。返事は?」
「はい。くっ、口が勝手に」
「大人しく従っていれば良い。貴族派の上の方には全て上手くいっていると報告しとけ。金がないだろうから、金は俺が貸してやる」
「くっ、こんな非道、いつまでも続くものか」
「奴隷になった事は秘密な。命令だ。拷問されても喋るな」
そして、周辺貴族の9割の奴が俺の奴隷になった。
残りは放置でいいな。
領民の村人が耐え切れなくなれば、俺の所にくるだろうし。
貴族も金が無くなれば、いずれどこかから借金する。
俺の傘下の商会から借りたら奴隷化だ。
商業ギルド辺りなら、爵位を取り上げて終わりだな。
まあ、不良物件だから貸す奴はいないと思う。
50家ほどの貴族が俺の傘下に収まった。
爵位は騎士爵か男爵たがちょうど良い。
俺より高いと奴らのプライドが持たないだろうからな。
無駄な事などせずに、長く金を稼いでほしいものだ。
それで俺に貢いでほしい。
さて、領地は落ち着いたから、エクレアが待つ王都に帰ろう。
次の戦場はそこだ。
貴族派をやる為の準備だ。
他国にいるという俺の敵をこれから、でっち上げないといけない。
そこで目を付けたのが隣国にいるコンポ―伯爵だ。
コンポ―伯爵は隣国で魔道具の販売を一手にやっている。
ラメルの商会と取引の話を持ち込む。
どうせ値切ってくるだろうから、そこは譲ってやる。
それで魔法契約して、奴隷化する。
輸出が上手くいってない事にしよう。
陸路は盗賊の被害。
海路は海賊。
海賊は本当だし。
陸路のほうもちょっと前までは貴族派が盗賊行為をしてた。
奴隷を使ってラメル商会の荷を奪わせれば良い。
マッチポンプだが、分からないはずだ。
それからラメル商会が、コンポ―伯爵に泣きつくという算段だ。
コンポ―伯爵は足元を見ていい気になるはずだから、きっと上手くいく。
「お前ら、盗賊をやれ。人は殺すなよ。荷物だけ奪えば良い」
奴隷を前に俺はそう言った。
「罪に問われませんかねぇ」
「事が終わったら補填するさ。ラメル商会以外の荷は別にしとけよ。腐る物じゃなければ後で返還するし、腐る物なら売り捌いて、後で利息を付けて返す」
「へい、抜かりなくやってみせまさぁ」
大芝居が始まるぞ。
ちょっと楽しくなってきた。
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