第72話 村人と、紛争と、奴隷化

 周りの領地から俺の領値へ、小作農の村人が助けを求めて駆け込んで来た。

 みんなガリガリに痩せている。

 開拓は1日ぐらいでどうにかなるものじゃない。

 土だって農地にするのに時間が掛かる。


 モンスターもいるし、どうにもならなかったらしい。

 計算通りで、実に良い。


「法律を守っている限りは保護してやる。とりあえず飯を用意したから食え。もちろんただじゃないぞ。だが、ある時払いの催促なしだ」

「ありがてぇ」


 村人が飯に群がる。


「村人を返せぇ!!」


 境界で村人に炊き出しをやっていたら、貴族が押し掛けてきた。


「何の権利でもって?」

「そんなの決まっているだろ。領民なんだぞ」

「国内であれば自由に移動できる権利があるはずだ」

「ええい、屁理屈を。そうだ、誘拐だ。誘拐したんだ」


「この平和に飯を食っている光景が、誘拐に見えるとしたら、とんだ節穴だな」

「くっ、ならば、紛争だ。宣戦布告だ」

「いいだろう。掛かって来い」


 貴族は帰って、そして千人以上の村人を集めてきた。

 武器が鍬、フォーク、鎌じゃ戦いにならんだろう。

 自動迎撃が作動して、相手は降伏した。


「身代金を払ってもらう。実家に手紙を書け」

「くっ、誰がそんな事をする」

「そうだ」


「諦めないのは素晴らしい心だが、食事を与えないで何時まで持つかな」

「俺達は貴族だぞ」

「そうだ、貴族に相応しい扱いを」

「貴族派が黙っていないぞ」


「ただで飯を食わせてやる必要が、俺にあると思っているのか」

「横暴だ」

「俺達から金を取ったじゃないか」


「あれは慰謝料だ。飯が欲しければ手紙を書け。ツケで食わせてやる」

「くっ」

「みんな騙されるな」

「俺は抵抗するぞ」


 威勢はいつまで持つかな。


「牢へ入れとけ」


 奴隷達が貴族を牢にぶち込む。

 村人の身代金は貴族に払ってもらうとしよう。

 それだけじゃなんなんで、村人は金を払って働かせた。

 労働力があるなら金を払って使う。


 ギブアンドテイクだ。

 貴族たちは2日で降参した。


 手紙を出したが、実家は身代金を払ってくれるかな。

 ちょっと見ものだ。


 いくら経っても返事は来なかった。

 やっぱりな。


 貴族を一人ずつ牢から出す。


「実家から返答はないぞ」

「そんな」


「魔法契約すれば解き放っても良い。嫌なら牢へ逆戻りだ」

「やる」

「【魔法契約】。これからは俺の命令に従え。返事は」

「はい。口が勝手に。これは何だ」

「魔法契約さ。逆らえないようになっている。村人は連れて帰って良い。じゃあ開拓を頑張れ。そして俺の領から商品を買えよ」

「分かりました。くっ、屈辱だ」


 捕えてある貴族達はみんな奴隷にした。

 貴族達は大人しく俺の領から肥料とアプリと食料を買い始めた。

 金は無いからツケでだが、奴隷にしてあるから取りっぱぐれがない。


 奴隷貴族達には自動迎撃の魔道具を貸したから、モンスター被害はなくなるだろう。

 もちろん魔道具の賃貸料は取っている。


 身代金を含めて、早く借金が返済できると良いなと、貴族達に俺は言った。

 開き直って、じゃんじゃんツケで買い始めた貴族もいる。

 馬鹿だな。

 ツケがかさんだら、爵位を売り飛ばすに決まっているだろう。

 そうなったら平民だぞ。

 プライドの高い奴らが耐えられるか知らないが、俺の責任じゃない。

 自業自得だ。


 爵位が売りに出されたら、俺もいくつか買っておくか。

 これから産まれてくる子供達にプレゼントしたい。


 これで周りの貴族達の半数が俺の奴隷になった。

 爵位を売り飛ばす計画を話しておくべきだろうな。

 必死度が違ってくるはずだ。


「これはこれは子爵様。御用があるなら呼びつけて頂いても構いませんのに」


 商業ギルドの職員が揉み手で迎えてくれた。


「俺へのツケで首の回らなくなった貴族の爵位を売りたい」

「さようですか。良い商いができそうですね」

「それと、駄目貴族達にアドバイザーを雇いたい」

「ほう、それは慈悲深いですね」

「なに、永遠に金を吐き出す道具だからな。メンテナンスも重要だ。俺に言わせれば、道具の手入れを怠る奴は3流だな」


 生き残った貴族には頑張って欲しいものだ。


「それはまた言い得て妙ですな。コンテナに付けるアプリの注文が入ってます」

「分かった作っておく」

「余った金で国債を買いませんか」


 国債か。

 いずれ俺が国をぶっ潰したら、紙屑になるんだけどな。

 カモフラージュとして少し買っておくか。

 王族派が安心してくれるとありがたい。

 いずれ敵になるとしても、今は不味いからな。

 貴族派と王族派をいっぺんに相手には出来ない事だし。


「分かった買わせてもらうよ」

「ありがとうございます」

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