第70話 王命と、対策と、略奪

 俺の都市は着々とできていく。

 ほとんど完成だと言っても過言ではない。


 だが人が少ないのは否めない。


 それでも人口5千は超えた。


「大変です」


 文官が血相を変えて領地の執務室に入って来た。


「なんだ?」

「王命がでました。荒野の土地を貴族に分け与えるようです。爵位を乱発してます」


「ええと、荒野の土地は俺の物じゃなかったのか?」

「まだ開拓や開発されていない所は全部取り上げられました」


 やってくれるな。

 俺の領地はもう広がらない事になったようだ。


「海への道は?」

「お館様の所有物ですが、貴族に使わせるようにとお達しが。修繕費用はうちで出さないといけないようです」


 くそっ、美味しい所をもっていきやがって。

 爵位を乱発していると言っていたから、次男以降の息子とかがやって来るのだろう。


 デメリットとメリットを考えよう。

 デメリットは領地が広がらない事だ。

 それと道の修繕費用。


 メリットは新しく入植した所と商売が出来る。

 周りを人里に囲まれた為にモンスター対策は考えなくても良い。

 となると、上手く吸い上げる仕組みを作らないといけないな。


 モンスター対策しなくていいのはデメリットもあるな。

 魔石が手に入らない。

 買うという手も残されているから、大したデメリットではないが。


「開墾が進んだ所の境界はちゃんと杭でも打っておけよ」

「はい、そのように指示します」


 新しく来た貴族は、素直に商売に応じるかな。

 ここは商業ギルドを間に入れるべきだな。

 ピンハネされるけど仕方ない。


 売るのは肥料と生活するためのアプリと魚の干物辺りだな。

 俺は塩をアプリで作っているから価格では負けない。

 それに魚を獲るのは大変だ。

 俺達は電気ショックと召喚でやっているが、奴らはどうするかな。

 セオリーでは地引網か舟で網だが、モンスターもいる海ではたして出来るかどうか。


 購入するのはモンスターの死骸だな。

 肥料に加工できるし、魔石はアプリの材料になる。

 これも商業ギルドを通さないと駄目だろうな。


 商業ギルド支部に行ってそのむねを担当者に伝えた。


「おい、干物を売れ」


 新しく来た貴族がそう言ってきた。


「この量だと負けて金貨1枚だな」

「駄目だ。銀貨20枚だ」


 5分の1はないだろう。


「格安にしたつもりだから、気にいらないなら買わなくてもいいよ」

「お前の領地などそのうち潰れる。あとで吠え面かくなよ」


 貴族が出て行った。


「境界の自動迎撃の数を倍にしておけ」

「はい、手配します」


 来るかな。

 俺は境界で見張った。

 顔に布を巻いて隠した男達が集団でやって来るのが見えた。

 やっぱりな。


「野郎ども。畑の作物を奪え」


 開墾などやってられないというわけか。

 まあ、そう考えるよな。


「ぐわっ」

「がっ」

「何だ」


 男達が自動迎撃の魔道具に打ちのめされる。


「おい。気絶した奴を領の外に叩き出してやれ」

「奴隷にしなくてよろしいので?」

「奴隷だと金は生まないからな」


 何度か試して、突破出来ない事が分かったら、大人しく商業ギルドから買うだろう。

 金は実家から借りたりするはずだ。


 何度か繰り返して、やがて襲撃もなくなった。

 ゴブリンの死骸が商業ギルドから入ってきたところからみると、狩りに精を出しているようだ。


 海に行ってみた。

 奴らは俺達が漁をするのを横目で見て、指をくわえている。

 漁の時も自動迎撃の魔道具は展開してある。


 奴らがどうするか興味があったので見ていた。

 奴隷達が撤収すると、奴らは海に入り始めた。

 死んで浮かんでいる魚はあるからな。

 おこぼれを狙う心算らしい。


「うひょう、大漁だ。あれっ」


 海面が大きく盛り上がる。

 大きな口を開けてイルカを狂暴にしたモンスターが現れ、海に入ってる男達を飲み込んだ。


「誰か助けて」

「早く陸へ上がれ」


 生き残った男は数人しかいなかった。

 だって俺達が漁をすると魚が死ぬ。

 それを食いにくるモンスターは多い。


 漁が終わった後の海は危険というよりはない。

 俺達は離れた所から召喚して獲っているから安全だけど、そうでもしないとやってられない。

 奴らが凄い奇策でも出すのか気になっていたが、そういう頭はないようだ。


 うちの魚の干物の競争相手にはなりそうにないな。

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