第68話 子爵と、監査と、暗躍
あー、爵位が男爵から子爵に上がった。
そして大幅に上がる税金。
そんな物は余裕で払えるから、払ってやった。
そして脱税の監査がまた入った。
「監査官様、お疲れでしょう。おいマッサージして差し上げろ」
「「「はーい♡」」」
「ええい、寄るな。汚らわしい」
今度はハニートラップは通用しなかった。
仕方ないな。
手札を切るか。
手で合図すると、裁判官が入ってきた。
「嘘判別のアプリに掛かって宣誓します」
「何だ。何が始まる?」
「私は脱税してません」
「事実です。裁判官たる私が保証します」
「そんな物証拠になるわけないだろう」
「ここでお引き取りしてくれないか。そうすれば荒事は避けられる」
「引き下がるわけないだろう」
「冤罪を作り出そうとしてますね。さあ答えて」
「作り出そうなどしておらん」
「嘘ですね」
「これはこれは、監査官ともあろう方が濡れ衣とは」
「知らん」
「逮捕するか。この領で行われた犯罪だから、俺に裁く権利があるよな」
「横暴だ」
「貴族派に頼まれましたか?」
「知らん」
「嘘ですね。賄賂を貰いましたか?」
「知らん」
「嘘ですね」
「役人の横領は財産没収だったな」
「くそっ、貴族派が黙ってないぞ」
「俺の領での犯罪は有罪。他の領で犯した罪は裁判官に突きとめてもらいますか。連れていけ」
監査官を兵士が連れて行く。
これから奴隷化して全部喋ってもらうつもりだ。
余罪は凄くあるだろう。
全部合わせれば死罪だな。
同情はしない。
貴族派もこれに懲りてもう監査は来ないだろう。
ここからは暗躍の時間だ。
俺は海へと出かけた。
そして船にアプリを山と積み込む。
密輸だ。
もちろん税金は払うつもりだ。
だが悲しいかな、密輸に対する税率がない。
税が掛かってないのだ。
なので脱税じゃない。
厳密に言うと密輸もやってない。
船にアプリを積んだだけだ。
「海賊だ」
「よし、命あっての物種だ。みんな船から降りろ」
「へい」
海賊が船に乗り込んで来る。
「略奪ご苦労様」
「では手筈通りに」
略奪も本当だ。
ただ裏で取引があるだけだ。
奪われた船も後で買い戻す。
そして驚いた事に海賊から教会に寄付があるのだ。
この国の法律では教会の寄付に税金は掛からない。
密輸でもないし、脱税でもない。
教会からは俺に金が入って来る。
労働力という形でだ。
教会の信者が俺の領でただ働きしてくれる。
ぶっちゃけアプリは使用料が入るから無料で持っていかれても問題ない。
信者のただ働きはおまけだ。
もちろん教会は信者に日当を払っている。
「これはこれは神官様。本日はどのようなお話で?」
「開拓が好評なもので、もっと増やしたいという声が上がってます」
「じゃんじゃんやって構わない」
「しかし、太っ腹ですな。開拓した土地の使用権は開拓者が持てるとは」
「出来た作物の税金を払ってくれれば問題ない。家だって好きに建ててくれたら良い」
「水利権もないし、物価も安いし、税金も安い。天国のような所だと評判です」
「まあな。水生成のアプリさまさまだな。税金が安いのは土地が痩せてて、作物があまり採れないからだ」
「御冗談を。魚を肥料にした畑は普通の畑より収穫があると聞いてます」
「肥料が税金みたいな物だ」
領地はどんどん発展していく。
教会が裏切れば、お終いだが、裏切らない自信がある。
教会が国を盗ろうとした事はない。
裏から操った事はあってもな。
なぜなら教義に支配は悪という文言があるからだ。
ただし、ただの支配が悪というわけではない。
そこは色々と教義で決められている。
だから教会は国の経営はしない。
支配を恐れていると言っても良い。
過去に国を経営した歴史があって、その時は上手くいかなかったと歴史の本にある。
暗黒時代だったようだ。
とにかく教会は領地の経営権は求めてない。
「海賊も律義なものですね」
「やつらの本業は水先案内人だからな。略奪は副収入だ」
「信者になって頂いた方もおられますし、海賊中に支部ができるのも時間の問題かと」
「名前を変えた方が良いかもな。簡潔に海衆とかにしてもらうか」
「それは良いですね」
魔道具省をぶっ潰したいな。
ちょっと策を練るか。
教会と裁判官を抑えたから、力技でもなんとかなるだろう。
いっちょかましますか。
「エクレア、王都に居を移すぞ。ラメルには領地に来てもらう。入れ替えだ」
「分かりました」
エクレアは身重だが、飛ぶ板はほとんど揺れない。
移動しても平気だと思う。
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