第65話 告訴と、断罪と、子供

「フィーユ、お前を不貞の罪で告訴する」

「なによ今更」

「金輪際、俺の金は銅貨1枚たりとも使わせない。そして慰謝料を払ってもらう」

「訴えるって、なんの証拠があるの?」

「それはこれからだ。嘘判別の魔道具を用意した」


「嘘よ。嘘判別の魔道具は国宝よ。遺跡からしか発掘されていないわ」

「だが、俺の手元にある。裁判所での機能証明書付きだ」


 魔道具と証明書を見せた。


「したわよ浮気。これでいいんでしょ」

「神官様、聞きましたよね」

「然り」


 案外と簡単に事が運んだな。

 しらを切り通すと思っていた。

 でも、今更だからな。

 侍女やメイドも浮気の事実を知っている。


「魔法契約すれば許してやろう。生活の面倒はみてやる」

「分かったわ」

「【魔法契約】。お前もだ【魔法契約】」


 フィーユと間男を奴隷化した。


「お前達はこれからアフォガート領で、開拓に従事してもらう。命令だ」

「かしこまりました。はっ、口が勝手に。騙したわね」

「騙されるのが間抜けなのさ。それに贅沢させてやったろう。ツケを払えよ。ギブアンドテイクだ」


「こんな事をしてお爺様が黙っていないわ」

「伝えに行ければな。家の周りは、登録していない者が近づくと、攻撃するようにしておく。くっくっくっ、助けは来るかな」

「くっ」

「間男も一緒に連れてってやる。開拓地でいちゃつくがいいさ」


「今にみてなさい」

「そうそう、王族も全員始末して、お前を女王にするからな」

「そんな事できるわけがない」


「出来るさ。あと3万も軍勢がいれば可能だ。この一年で村人1から3千人まで膨れ上がったんだぞ。不可能じゃない。命令だ、付いて来い。そっちの間男もな」


 フィーユと間男を連れてアフォガート領に帰る。

 犯罪奴隷達が開拓している村に連れて行った。


 家は建築ラッシュで沢山ある。


「入れ」

「何これ、ここが住まい? 使用人の部屋より狭いじゃない」

「女王になるまでの辛抱だ。女王になったら次の日には俺に王位を譲る事になるがな」

「その後は殺すの?」

「殺さないさ。間男と暮らすがいい。子供も産めよ。人質になって都合が良い」

「絶対、嫌!」


「そのうち妊娠させる魔法を開発するから楽しみにしておけ」

「この人でなし! 極悪人!」

「自殺も含めて犯罪を禁ずる。命令だ」


「お母さま、フィーユは駄目な娘です。謝りますから、助けて下さい」

「迷惑を散々掛けてきた自覚があるんだな。謝罪の手紙でも書けよ。時間ならいっぱいある」

「何としてでも抜け出してみせるわ。とっとと行きなさい。笑っているのも今のうちよ」


 あんな事言ってたわりには手紙を書くんだな。

 手紙を見て助けを呼ぶ暗号が入っていたのに気がついた。

 斜め読みとはまた古典的な手を。

 手紙の文章を少し変えて、フィーユの母親に届けるようにした。


 手紙は代筆した事にしたから怪しまれないはずだ。

 少し経って返事が来た。

 仲良く暮らしているようで何よりですと書いてある。


 フィーユの現状は、働かないが、間男が頑張って働いて食わせている。

 間男は殺されると覚悟したんだろう。

 貴族の妻と不貞を働いて訴えられたのだからな。

 フィーユはまだ脱出の機会を窺っている。

 諦めない奴だ。


「実家からの援軍は来ないぞ。手紙は書き換えておいた」

「くっ。でも筆跡が違う」

「偉い人は秘書に手紙を書かせるんだ。知っているだろう」

「そんな」


「妊娠したってな」

「誰から聞いたの?」

「間男からだよ。子供を殺すのは罪だからな。沢山食って元気な子を産めよ。少し早いが出産祝いだ」


 俺は食べ物を差し入れた。


「馬鹿にして。産まれた子にあなたへの憎悪を吹き込んでやる」

「やってみろ。俺は産まれた子に正道を吹き込んでやろう。どっちが勝つかな」

「勝負よ」


 勝ったな。

 もし男が産まれれば、男なんて女ができれば母親離れする。

 物心ついたら適当な女をあてがってやろう。

 それでも転ばなかったら褒めてやる。

 世間を知れば何が正しいかなんてすぐに分かるはずだ。


 女の場合だと母親よりも恋人の男を優先するような気がする。

 一概には言えないがやり方次第だろう。


 もちろん罪を犯せば犯罪奴隷に落とす。

 俺は公正な男だ。


 そのうち間男も懐柔しておこう。

 父親の意見も少しは憎悪を和らげるはずだ。

 たぶん子供が大きくなる前に事は終わっていると思う。

 俺は王位に就いているだろう。

 その時は、フィーユと間男と子供が安心して暮らせる場所を、用意してやるつもりだ。


 俺は働いた仕事に対する対価は払う。

 全てはギブアンドテイクだ。

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