第64話 結婚と、不貞の罪と、嘘判別

「王命である。心して聞くように。ラッカー・アフォガート、貴殿はフィーユ王女と婚姻するようにしかと命じる」


 くそう、家を乗っ取るつもりだな。

 王を動かすとはなかなかやる。


 調べたところ、フィーユ王女は25歳。

 この世界では行き遅れだ。

 しかも金遣いが荒く、王位継承権もない。

 完全に不良物件だ。


 王宮には住んでおらず、母の実家で暮らしている。

 実家は侯爵家なのだが、持て余しているようだ。

 もちろん侯爵は貴族派だ。


 さらに色々と醜聞が入って来る。

 男を取っ替え引っ替えとか。

 婚約者に浮気がばれて、婚約破棄されただとか。

 男を取り合って3角関係になり、刃傷沙汰を起こしただとか。

 なんと言うか酷い女だ。


 やりたくないが、王都で結婚式を挙げた。


「あなたとは一生一緒に寝ないから、ベッドは別にしてね」


 そうフィーユに初夜の晩に言われた。

 初夜にいきなり毒を盛られるよりは良いが、どうしたものか。

 フィーユは栗色の髪をしたスタイルの良い女で、目つきが鋭いが美人の範疇に入るだろう。

 だが、この女はごめんだ。

 頼まれたって抱く気にはなれない。


 フィーユの部屋には間男が既にいる。

 こっちが強く出られないと思って、やりたい放題だな。


「そうか、好きにするがいい」

「寝酒はブリュレ産ワイン142年を持って来て」


 ブリュレ産ワイン142年は金貨10枚はする。


「かしこまりました」


 メイドがそう言ってワインを買いに行く。


「あなたまだいたの。邪魔よ。用があれば呼ぶから、顔を見せないで」


 俺は無言で部屋を後にした。

 この家を借りるのだって、凄い金が出ているのだぞ。

 大邸宅とは言わないが、ゲストルームだって3部屋もある。

 前世の感覚で言うと充分に大邸宅だ。


 この家には泊らない。

 ラメルの家でくつろぐに限る。


「さて、どうしよう」

「困った奥様ですね」

「まあね。でも考えようによっちゃ良いかもな。王位継承権はないが、そんなのみんな死んじまえば、関係ないだろう」

「物騒です」

「あっちから喧嘩を売ってきたんだよ。貴族派を始末した後は、王族派だ。そして王座を奪い取る。フィーユにはとうぶん贅沢させるさ。料金はつけといて、後で払ってもらう」

「そうですね。使われた分の料金は支払わないと。商売の基本です」


 そうと決まれば、まずはウエハス教皇に挨拶だな。


「御無沙汰しております」

「とんでもない。それで今日はどのような用事ですか」


 ウエハス教皇はいつもと変わりない。

 教会の改革は進んでいるようだ。


「結婚の挨拶にと思いまして」

「おめでとうございます。神の祝福を」


「教会では不貞に関してどう思いますか」

「いけませんね。不貞は罪です。教義に反しています」

「証人になっては頂けませんか」

「適当な神官を派遣しましょう。ですが王女を離縁する事は出来ないでしょうね」

「慰謝料を払ってもらうつもりです」

「それが良いでしょう。神の前で誓ったのに、離婚では外聞が悪い」


 さてと、これから行われる芝居の小道具を作ろうか。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <string.h>


extern char liar_check(char *s,char *question);


char main(int argc,char *argv[]) /*argv[1]が神秘魔法名。argv[2]が質問*/

{

 char str[256+5]; /*神秘魔法名の格納場所*/

 strcpy(str,argv[1]); /*文字列に神秘魔法名を入れる*/

 strcat(str,".soul "); /*神秘魔法名に『.soul 』を連結*/


 return(liar_checks(argv[2],str)); /*嘘判別の結果を返す*/

}


 嘘判別の魔道具だ。

 これで準備は整った。

 この魔道具は後でアプリにしておこう。


 俺は公証人に会いに行った。


「誓約書を書かせたい」

「お金さえ頂ければ、仕事はきっちりこなします」


「その前に嘘判別の魔道具を手に入れたんだ。試験してこれが本物かどうかの書類も作りたい」


 この国の公証人は行政書士も兼ねている。

 便利屋だな。


 嘘判別魔道具の管轄は裁判所だ。

 俺はそこに行き書類を作った。

 これで小道具の準備は整った。


 これから、フィーユをきっちり型に嵌める。

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