第63話 スパイと、真空パックと、コンテナ
スパイが捕まる事、捕まる事。
まるでスパイホイホイだ。
自動迎撃の魔道具があるからなんだが、いい加減学習しろよと言いたい。
ちょうど今も捕まって連れて来られたところだ。
「拷問されたくなければ、大人しく魔法に掛かれ」
「こうなったら仕方ない」
「【奴隷化】。やけに素直だな。素直ついでに名前と所属を喋れ。命令だ」
「喋らんぞ。チュロス、諜報ギルド所属。口が勝手に」
「雇い主は?」
「はっ、もうこうなったら。知らない。ギルドの幹部しか知らないんだ」
まあそうだよな。
捕まるような下っ端に、重要な情報は洩らさないよな。
「俺が言う情報を持って帰るんだ。後はここに来る任務以外は好きにしろ。ここに来た場合は顔を出せ。命令だ」
「はい」
「それで任務は?」
「財務状況です」
何の情報を知りたがっていると思ったら財務状況か。
運用資金を除いた余剰金は金貨2万を超えたところだ。
余剰金はタンス貯金しないで、各方面にばら撒いている。
美容アプリが好調だからな。
「余剰金は金貨1000枚程度だと言っておけ」
「分かりました」
「もう行っていいぞ」
通行証を渡すと、それを持ってチュロスが出て行った。
干物工場でも見学するか。
「いま作っている。干物です」
焼きたての干物が皿に載せて出された。
うん、美味い。
塩加減もちょうど良い。
米のご飯が欲しいところだ。
米、探そうかな。
「スパイです」
男が捕まえられてきた。
男は散々に殴られた後がある。
「自動迎撃に引っ掛かったんじゃないのか?」
「引っ掛かったんですが、毒を持ってまして。その後は言わないでも分かるでしょう」
干物工場に勤めている職人がキレたんだな。
毒はたぶん干物に混入させるつもりだったんだろう。
そりゃ、キレる。
しかし、干物に毒か。
商品を狙いにきたようだな。
嫌らしい手を使う。
商品のイメージダウンを狙っているんだな。
輸送途中も危ないな。
どうするかな。
とりあえず、注意喚起。
毒検知のアプリは前に作ったから、それを商人に持たせるとして。
それから、包装だな。
真空パックみたいなのが作れると良いんだけど。
モンスター素材に期待だな。
皮は通気性があるから駄目だ。
樹液とかかな。
「封をする為の素材がほしい」
困った時の商業ギルド。
職員に相談してみた。
「薄い皮膜が出来る樹液みたいな物。ありますよ。熱を加えて冷やすと固まります」
タンパク質の一種なのかな。
「高いのか?」
「いいえ。ただ粘着力が低いので接着剤にも向かないんですよね。水を入れたりすると破けるし、今のところ使い道はないですよ」
脆そうだな。
真空パックには不向きかも。
そうか、結界の魔道具を作ればいいのか。
難題だな。
魔王タイトの魔法指南書にはバリアは載っている。
だが、結界はない。
缶詰も考えられるが、技術的には難しい。
アルミで真空パックかな。
でも、真空に耐えられる厚さと言ったら簡単に開けられないだろう。
「たかが封をするのがこんなに難しいとは」
「個別に考えるからややこしいのではないですか。大きい箱なら魔道具で封が出来ます」
「コンテナを作るのか。それなら難しくないかもな。封が開けられたら警告音が出るなんてのは簡単にできる」
「毎度ありがとうございます」
「ええと」
「箱を注文なさるのですよね?」
「そうなるな。でも魔道具はこちらで作るぞ。そうしたら商業ギルドには俺達が魔道具を納入する事になる。コンテナは商業ギルドでも使うんだろ。便利だぞ」
「コンテナという名前は存じませんが、どのように便利なのですか」
「コンテナに合わせて馬車も作るんだ。そうするときっちり積める。コンテナの種類は色々とつくる。中に仕切りとか緩衝材とか。とにかく色々だ。何度もコンテナは使い回す」
「なるほど運搬の技術を売るのですね」
「そうなるかな。商業ギルドならその辺のノウハウはあるだろ」
「ございます」
「大商いになりそうだな」
「嬉しい悲鳴が上がりそうです。ありがとうございます。これで私の売り上げトップは間違いなしですね」
「大きさとかは良く考えろよ。一度規格を決めたら変更はなかなか効かないのだから」
「その辺のノウハウはばっちりですよ。農作物から考えてみます」
「魔道具は封と冷凍と酸素排除からだな」
真空パックを作ろうとしたら、コンテナ作ってたぜ。
俺にも訳が分からん。
コンテナに付ける魔道具はアプリにしよう。
ますます儲かるに違いない。
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