第59話 落とした橋と、アーモの最後と、よろしいならば戦争だ

「橋が落とされたぞ!」

「退路が!」


 俺は犯罪奴隷に命じてアーモの軍の背後の橋を落とした。

 木の橋だったから簡単に落とせた。


「逃げるんだ!」

「うわあ」

「皆殺しにされるぞ」


 橋が落とされて退路がなくなった兵士が慌ててパニックになる。

 俺達が陣を構えてた所にも大挙して押し寄せて来た。

 後ろが無いから前に進むしかないのは分かっているが、もはや軍とは言えない。


「持ち場を離れるな!」

「俺は逃げる」

「こらっ!」


 士官が何とかしようと試みるがどうにもならない。

 死兵とやるつもりはないので、進路を開けてやる。


 兵士達は自動迎撃の魔道具の死地に飛び込んでいった。

 あらかた収まったところで魔道具による包囲を完成する。


 落とされた橋の向こうに兵士の一団が現れた。

 増援かと思ったら違うらしい。


 隣の領主のようだ。

 招きたくなかったが、空を飛んでもらって、招いた。


「橋を壊すとは言語道断」


 その文句は分かる。

 じゃあアーモの軍を黙って通したそっちはどうなんだ。

 言いたいが、こらえる。


 こっちの方が悪いからだ。

 橋や街道を壊すのは最大のタブーで、軍を通すのは領主の裁量になる。

 でないと盗賊を追ったり出来ないからな。

 俺も商業ギルドの依頼で犯罪奴隷を派遣した時は許可を取った。

 袖の下とも言うがな。


「橋は石造りの良い奴を作ってやるよ」

「ふん、ならばよろしい」


 魔法でパパっと作りますか。

 土台の石を川に沈め、アーチ状の石材を置いていく。

 後は平らな部分を作れば良いだけ。


 隣の領主はあんぐり口を開けて1時間ぐらいで出来る橋を眺めてた。


「娘をどうかな?」


 優良物件だと思われたらしい。

 婚姻を勧めてきた。


「間に合ってるよ」


 俺はにべもなく断った。

 さて、アーモの軍はどうなったかな。


 犯罪奴隷達が、武装を解除していた。

 もう諦めたらしい。

 死ぬ攻撃ではないが、包囲から出ようとすると、攻撃が飛んで来るのだから、まあ心理状態はお察しだ。


「近衛騎士は全員殺していいぞ」

「へい」


「俺達は貴族に連なる者だ。貴族に相応しい扱いを要求する」

「この悪魔崇拝者が何を言う」


「へっ、悪魔崇拝者」

「ですよね。司祭」

「ええ、生かしてはおけません」


「情けだ。電撃で一瞬のうちに葬ってやれ」

「やめろ。うわぁ」


 断末魔が次々に聞こえた。

 そして、俺の前にアーモが引きずり出される。


「お前さえいなければ」

「アーモ、お前は色んな負のギブを俺に与えてきた。負のテイクをやってもらおう」


 木材が組みあげられ、磔が出来上がる。

 アーモが磔に括られ、磔が立てられた。

 足元には大量の薪。


「何を?」

「悪魔崇拝者は火あぶりと相場が決まっている」

「何だと」

「さあ、心置きなく死ね。火を点けろ」


「へい」

「やめろ。謝るから。もう嫌がらせはしない」


 アーモの顔がくしゃくしゃになる。


「家名に誓う。熱い」


 アーモはついに涙を流し始めた。


「ごほごほっ」


 咳き込むアーモ。

 煙が凄いな。


「うぎゃあ。お母さーん」


 アーモが火で炙られる。

 最後に頼るのは母か。

 ある意味真理かも知れない。


 火あぶりだと窒息の方が早いんだな。

 火事で煙に巻かれてとかあるけど、そういう事か。


 近衛騎士共の親戚とか親がうるさいのだろうな。

 敵になるなら容赦しない。


 俺は後始末を終え王都に出発した。


 思えば長かった。

 あれから11年。

 エクレアをアーモから助けたのが、始まりだったな。

 俺のアーモに対するギブアンドテイクは終わった。

 もう微塵もアーモに対する恨みはない。


「殺伐公の空飛ぶ馬車だ。みんな逃げろ」


 街道を行く旅人が叫んだ。

 心外だな、理由なく平民を殺したりはしないぞ。


 王都はパニックだった。

 俺を見るとみんな逃げていく。

 だが、平民は殺さないと分かったのか。

 すぐに治まった。


 俺は役所に行った。


「ひっ、殺伐公」


 役人が青い顔で後退る。


「俺の婚姻願いはどうなった?」

「さ、先ほど、は、破棄されました」

「俺の耳が悪くなったのかな。破棄されたと聞こえたぞ」


「お願いします。殺さないで」

「謝罪は良い。誰が破棄したんだ?」

「き、き、貴族派の長老が」


 喧嘩を売られたって事だよな。

 よろしい、ならば戦争だ。

――――――――――――――――――――――――

1章あとがき

 1章がこれで終りです。

 いちおう完結にしておきます。

 2日後から、再開予定です。


 本作はガチプログラムシリーズの一つですが、『異世界で俺だけがプログラマー』と比べて8分の1しか読まれてない。

 そこから考えると失敗だったと思います。


 ですが、ガチプログラムシリーズがライフワークになりそうです。

 本作も180話ぐらいは続けたいなと思ってます。


 次にガチプログラムシリーズを書くのなら、悪役令嬢物か、農業物辺りかな。

 それでは、2章か次回作でお会い出来たら良いですね。


ガチプログラムシリーズ


https://kakuyomu.jp/users/455834/collections/16817139554789723084


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