第6話

 その晩はジュリに案内されて教職員寮に荷物を運んだ。湊音からは明日の朝から部員による自主練があるからきてほしいと言われた。


 早起きは出来なくはないが用務員としての仕事もあるし、剣道室だけでなくて他の部活動の部員も来るため校門を開けるために朝七時には行かなくてはいけない。


「冷蔵庫の中に朝ごはんとある程度作り置きしておいたけど、あとは自分で自炊してちょうだいね。近くにスーパーやコンビニもあるし。あ、今ここに住む教職員は全員世帯持ちの男性教師ばかりのノンケだから寂しくなったら呼びなさいよ」

「俺は男は好んでやるわけじゃない。てか単身赴任の教師ばかりなのか」


 シバは綺麗に盛り付けされてしまってあるたくさんのタッパーを冷蔵庫の中で見てしばらく数日暮らしていけるなぁとホッとする。


「そうね、全国から優秀な専門知識を持つ教師を呼んでるの。勉強だけでなくて運動部や文化部の先生たちも遠くから来てもらってるのよ」

「すげぇなぁ、さすが進学校……」


 ジュリがシバに近寄り体を密着させる。


「優秀な学生を育てるために優秀な人材、優秀なプログラムで学校を運営しているのよ。多分あなたの後輩もどうかしら」


 シバはジュリに体を触られつつも思い出す。


「あぁ、体はそう強い方じゃないが頭はキレる奴らばかりだな。サイバー班とかデスクワーク系に多いし、過去の剣道部員もここ出身だったな、そいや……宮野っていうんだが」


 ボタンを一つづつ開けていくジュリ。


「もうやめろ、明日は早い。てか男子校の理事長がこんな破廉恥なやつだなんて……まさか生徒や教師に手を出して……」


 ジュリは両掌でシバの頬を挟んだ。そしてじっと見つめる。


「バァカ……私だって誰でもいいってわけじゃないんだよ、この野蛮な野良犬」


 ぎゅっと更に挟んだのちに手を離して去っていった。


 はぁとシバはため息をついた。


 胸元に入れていたタバコを蒸そう、と取り出すとそれを見計らったかのようにジュリが再び玄関のドアを開けて


「この学園内は禁煙ですから」


 と言ってからまたドアを閉めた。シバはまたため息をついて部屋にあったゴミ箱にタバコとライターを捨てた。


 

 カバンの中からスマホを出してジュリからメールで送られてきた用務員としての仕事の内容が書かれた書類をみなくてはいけないのだが気が重い。大体のことは警備会社の警備員が扉の開閉も遠隔操作してる。

 出退勤の記録もスマートフォンを利用すればできるなどあれやらこれやら刑事時代や今までの仕事よりもハイテクで便利すぎである。


「今時はなんでもかんでもデジタルかよ……」


 と他にも細かな規約やらなんやらあったのだが気づけばそのまま寝ていたシバであった。

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