雫23号…恋と愛[完]

「好きな人が出来ました。

ごめんなさい、さようなら」


三行半とか、言うけど…


たった2行で、

俺らの3年間は終わりか…


「好きな人が出来ました」

…は、相手に有無を言わせない

決定打、だよね


何も言えず

は?

って、独りごち

多分強烈呆けた顔してたと思う。


理由は

好きな人が出来たんだろう。


そうなんだろう


と、思うしかなかった。

連絡も取れず、

家も知らなかった。


改めて、考えると

3年も傍に居たのに

実家も知らず

両親にも会ったことがなかった


俺は、誰と恋に落ち

誰と愛を育もうとしていたのか


いや、

どう考えてみても

信じられない。


と、思いながら

何もせず、探そうとも

しなかった。

真実を知るのが怖かった。


いや、何が真実で

何が虚偽なのか…

ずっと分からなくても

良いとさえ思った。


何をする気にもなれず、

ただただ、

広くなったワンルームの

片隅で、膝を立て

ドアの開く音だけを…


見ていた。


そう、ずっと見ていた。


俺は、耳の後ろの

リスタートボタンの事は、

しっかり覚えている。


ただ、

20代では、使うまいと

思っていた。

多分、色々あって

熟年過ぎて、

初老になり始めた頃に


振り返って

苦い思い出として、

また

綺麗な思い出として、

自分の生きて来た道を

見つめ直す為に

ボタンを押そうと、

思ってる。

やり直したいんじゃなくて

俺、よく頑張ったな


皆も頑張ってるか?

って、

選ばなかった過去達の

確認をしたいと思ってる。


自分で納得はしてなくても

歩いて来た道、色々、

葛藤があって、心で泣きながら、

不条理に地団駄を踏みながら、

今の自分に至ってる


と、大人になった自分は

そう、思いたい。


生きていれば、何かしら

悔やんだり、やり直したいと

思う事はある。

親を見ていて、そう思う。


それでも、自分で

選んで歩いて来た道、

悔やんで、過去に縛られて

真実が見えない事の方が


切ないよ


俺が、初老になった時

ボタンを押して

確認に行くよ


好きな人が出来ました


と、手紙を残して

去って行った君は、その後

幸せになったのか…


きっと探しに行く

何故なんだと、問い詰めるよ

教えてくれ…と

懇願するよ


例え、キラキラと

虹色に光っていたんだとしても


恋は自分本位

愛は相手本意


恋は一時的で




愛は

愛は永遠

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