プロローグ②

…人としての目覚め…


なんだか、温かくて

ちゃぷちゃぷ浮かんでいたり

ゆらゆら、揺れていたり

窮屈だけど、

包まれている安心感と、

語りかけて来る声や心地良い音が

聞こえて来て、

雫から人になるんだって、実感する。


これまでになかった感覚。


多分。


何度目かの魂だとしても、

細部までは覚えてないんだよね。


ざわざわ〜って、かたまり

隅々までが熱くなる感じ。


それから、雫にもよるけど

地球時間の531360分(369日)は、

大きな選択はない。


いつから話し始めるか、歩き始めるかは、

人の身体になった雫自身が行動を起こす。


それが最初の選択なんだ。


のんびりしてるコ

急ぎたいコ


それぞれさ

正解なんてない。


雫の時に、

一番輝いてたコはもう魂の完成なんだ。

みんなに祝福されてた。

キラキラが虹色に輝いてたよ。

メルクリウスさんが

迎えに来てくれるんだって。


選択の旅を続ける僕達は、

「めざめ」が待っている。


大人になっても忘れていない場面が多く、

感情と行動がぴったりあった瞬間、

気付く時がある。


沼地一面に広がる、蓮の花の弾ける

パチンという音を聞いて、

悟りを得た人みたいに、頭の中で

ポン

て音が、響いた様な感覚。


そう、例えば立って歩き始めた時に、

周りの人達が手を叩いて、

満面の笑顔で

応援してくれて、

ちょっとびっくりしたけど、

僕も何だかとても嬉しくて、

近くの人の伸ばされた手の中に、

飛び込んで行った時に胸の辺りが

ズキンって。


一歩また一歩

自分から大きく移動するのは、

それが初めてで、皆の喜ぶ声、

誰かの腕に飛び込んだ時の、温かくて、

全身から力が抜けて行く様な

ふんわりした感触。


ひとりじゃないんだ、と全身で感じた。


人の形になって、何度目なんだろう

何番目かの喜びから

しっかり覚えている。


大人になっても、鮮やかに覚えている。


所々でも、記憶がある。

それが「めざめ」なんだよね。

人としての目覚め

その時は、分からないけど。


ずっとずっと、後になって気付くんだ。

たった一つの決して、

同じものなんてない

とてもとても大切な人生だ、って。


覚えてはいなくても、

小さくても、「めざめ」がなくても

既に、沢山の選択が始まっている。


ご飯より、

甘いお菓子が食べたくなったり、

言いたい事が上手く伝わらなくて、

手当たり次第モノを投げたり、

泣きわめいたり。


そうして、

その小さな選択から

嬉しい事や楽しい事、

痛い目にあったり、お腹を壊したり、

全身ずぶ濡れになったり、

とわくわくする事がいっぱい始まって。


誰だかとても偉い人の言うところの、

「四苦八苦」も始まるんだよね。


なんだか、

ゾクゾクするし、


キュンとするね。









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