第6話
無人島生活何日目か。
もう数えるのが面倒だったので四日目から放棄した。
ここ数日で無人島の探索は大分進んだ。そんなに大きな島じゃないしね。もう迷うようなこともないだろう。
いくつかのエリアに分けるとするなら、洞窟近辺、森エリア、砂浜エリア、岩場エリア、崖エリア、草原エリア、川エリア、といったところ。
そうそう、草原があった。
耕せば農地になりそうな草原。
耕さないけど。
森には人が口にしても問題なさそうな果実もあり、水も豊富。
生活に困らない程度の環境は揃っているようだ。
洞窟に引き籠もってるけど。
まだまだアニメの視聴が終わらない。どんどん次が生まれるからもしかしたら死ぬまでイケるかもしれない。
イケるとこまで逝っとこう。折角の機会なので。
しかし何もずっと画面の前で過ごしているわけじゃない。
散策もしてるし、アウトドアっぽいこともした。
川があり、そこに魚もいたので、釣りをやってみた。
まるで釣れなかった。
こういう人が住んでいない環境の魚は釣りやすいと聞いたことあったのだが、やはり聞くとやるとでは違うということなのだろう。
リールにロッド、ライフジャケットに生き餌と、バリバリの釣りスタイルで挑んでもダメだというのだから異世界の魚は手強い。
見た目は鮎なんだけど、たぶん強いんだ。たぶん。
日がな一日釣り糸を垂らしてサンドイッチを食べていた。良いハイキングだったね。パン屑と生き餌を魚にご馳走してあげたと思えばプラス。僕がこの島の神です。
海は流石に危機感が湧いたので止めておいた。どう考えてもフラグだから。食べるつもりが食べられましたというオチだ。異世界あるある。
砂浜エリアをプライベートビーチみたいにしてみたくなってパラソルやらチェアーやらを置いてみたりもした。
三日目に消えた。
どうやら時間制限みたいなのが宝箱から生み出された物にはあるらしい。たぶんだ。実は消える瞬間を目にしたことはない。
再度生み出した洞窟のソファーとテーブルは、何故か消えていない。三日目の朝帰りの時は消えていたのに。どういう条件なのかよく分からない。けど困ってはないのでどうでもいい。
自宅の設備も増やした。外に仮設トイレ。何故か水が流れる。何処に行くのかは分からない。困ってないので以下略。
ちなみにお風呂も洞窟の奥に設置した。バスタブが出てきた。しかも蛇口を捻るとお湯が出る。こっちは消えることもあって、その度に宝箱にお願いしている。風呂は文化だ。それだけで文化人。
着ている物はジャージ。同じのを常に吐き出して貰っている。最初に着てたの以外は消えるので洗濯が楽。基本的に五回に一回だもの。
出した物が消えることについては諦めているが、初日の建築素材は何だったのかと問いたくなる。答えてくれる人はいないんだけど。作ってる途中に消えていたら、数日はビーチにいた自信があるよ。拗ねて。
そう考えれば良かったのかもしれない。ポジティブにいこう、ポジティブに。
森エリアに鳥が住み着いた。
初回の探索の時に見つけた鳥だ。
随分と良いタイミングで渡ってきたものだ。爪痕の着いている木に巣を作っていたので、ちょっとバカなのかもしれない。臆病な鳥だからか僕を見ただけで巣を置いて逃げるし。卵は置きっぱなしだ。
島は平和を保っている。
新しい生態系が生まれつつあるのかもしれないけど、獰猛な肉食系の動物が僕だけなので安全。生態系の頂点。
唯一危険だと思えるのは崖エリア。
だって崖だし。
もしかしたら飛び込んだり出来るのかもしれない高さだけど、そんなことはしない。
泳ぎたくなったら川も砂浜もあるんだし。
なので崖エリアだけ探索は適当。
他は充分にこなした。
結果、この島は無人島で安全だと証明された。
意外なことに、あのダメな感じの自称神様は僕との約束を守ってくれたようだ。
この宝箱だけでも充分と言えば充分だったけど。
これで安心して引き籠もれる。
一人に耐えられないと思うまで。
流石に十五年しか生きていないので、残りの人生を思えば『ずっと』なんて言えやしないけど。
でも割と死ぬまでぐらいならイケる気がしている。
別に他人が嫌いとか対人恐怖症とかではないけれど。
なんなら弟妹がいたから面倒見はいい方だと思うけど。
イケるイケる、問題は死んだ後だろう。
どうしよう、遺書と墓でも作っておこうか?
明らかに違う文明だもんね。テレビとかトイレとか。この世界の基準を知らないけど。
しかし贅沢を止めるつもりはない。
楽さを捨てるのなら何のために異世界にきたのかということになるし。
異世界に求めるものなんてハーレムと脱税に決まっているのだから。
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