第4話
「あれ? いつの間にか暗い」
どうやら夜になったみたいだ。
アニメに夢中で気付かなかった。
積み上げられた視聴済みのDVDの山より、未だ視聴を待ってるDVDの方が多い。
洞窟の入口を見れば差し込む光が無くなっていた。昼間と比べると冷たい空気が入ってくる。それでも寒いと感じる程じゃないけど。
全く考えてなかったけど、ここって常夏なんだろうか?
まあいいか。次を視よう。
プレイヤーに入っているDVDを切り替えながら宝箱に手を乗せる。宝箱はいつの間にか元のサイズに戻ってテーブルの隣を陣取っていた。動いた? いや元々そこらに
まあ、どっちでもいいか。
「ピザで。トマトとバジルのやつ。飲み物は赤い炭酸飲料、瓶でお願いします」
そんなにお腹は減っていないけど、時刻的に摘む物を食事に切り替える。
ペッ、と吐き出されたピザがテーブルの上を滑る。続いて吐き出された瓶も直立してピザの隣へ。すげぇ。箱ごと出てくるのか。そういえば海苔弁も容器ごとだった。
特に滑り落ちて大惨事になるというオチもなく、ピザと赤い炭酸の瓶がピタリと止まったのは散乱しているDVDの隙間だった。
バランサーでも付いてるんだろうか? めちゃくちゃ優秀。とてもあの女神の持ち物とは思えない。だって赤い炭酸の瓶には栓抜きがセットで付いている。箸もそうだったけど配慮が凄い。
ソファーに寝転がりながら再生されたアニメのオープニングを聴く。
聴きながら食べる。
間違いなく太る。
生活が快適過ぎて病気になりそうだ。そもそもやることが無いのだからインドアが引き籠もりになるのは当然の流れじゃないかな?
でも病気は不味い。一人だから余計に。
明日からダイエットする。やろう。絶対する。やるやる。
そんな決意を抱いて眠気に負けるまでアニメを見続けた。
次の日の昼になった。
異世界生活二日目、もしくは無人島生活二日目。
とりあえず顔を洗おうと水を頼んだら、ペットボトルの水が出てきた。飲料。別にいいけど面倒なので宝箱から放水出来ないか頼んだところ出来た。ちっちゃな虹付き。
めちゃくちゃ便利だな宝箱。無機物ってところが特に良い。怒られない。
細かい配慮で吐き出されたタオルで顔を拭いてから今日の予定を立てる。
今日というか、これからの予定。
まずは運動だろう。
クセをつけないと割と本気で洞窟に籠もってしまいそう。宝箱が本当に宝の箱過ぎて生きるのがツラいとかそういうあれだ。
そんな訳で島を探索することにした。
僅かながらの好奇心が運動のめんどくささを消してくれると信じて。
島の外周は五時間程で回れた。腕時計を出して測ったので間違いない。宝箱が便利過ぎて持ち運ぶのが怖くなってきた。どうせ誰もいないのだから自宅(洞窟)に置きっぱなしにしておこうかな。フラグ建設中。
島の外周の半分は砂浜で、三分の一が岩場。残りは川と崖だった。川はそんなに大きくない。動物の水場としては上々。そんな感じ。動物いないけど。
さすがに生き物の存在が全くの皆無というわけじゃなさそうで、川には魚がいたし、ちっちゃな昆虫も見つけた。
洞窟に虫が入ってくる気配が皆無なのは前任者のおかげなのかもしれない。前は何が住んでいたのか気になるところ。
まあいいけど。
川を遡り、湧き水が出ているところを見学。これも初めて見た。こんな染み出すみたいに出てくんだな。自然ってファンタジーだな。
なんだかんだと更に五時間程うろうろ。最大の発見は鳥だ。雀? のちょっと大きいバージョンを見た。バレーボールサイズ。直ぐに逃げられたけど。
鳥避けとかしたほうがいいんだろうか? 見終わったDVDでも吊るしておこうかな。気が向いたら。
探索を終えて最初の砂浜に戻ってきた。
ちょうど水平線に夕日が沈むところに間に合った。何気に海に日が沈むのを見るのも初めて。
特に感想とかはない。
紫に光るとか分裂とかはしなかった。普通の夕日。
しかし問題はあった。
「困ったな。意外と暗いや」
完全に日が沈んでしまったので明かりがないのだ。
森の見通しが良いとはいえ、明かりが無ければ見えることもない。そもそも昨日の洞窟に辿り着けるか自信がない。
ついでに言うと疲れた。動きたくない。
途中から洞窟に戻るために彷徨いていたのは秘密だ。
初日から大した運動量だと思う。健康に不安は無くなった。帰り道に不安を残したから。
砂浜に腰を降ろして、夕日が再び上がってくれないかなー、と暗くなった海を見つめ続ける。
「箱から懐中電灯……いや、危ないな」
危険な動物はいなくとも森であることに間違いはないのだから、夜に入るのは止めといた方がいいのかな?
「とりあえずご飯にするか」
今日は宝箱を持ち歩いていて良かった。明日なら泣いていたまである。
僕は宝箱から海苔弁を取り出した。
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