第2話
この時間でもターミナルとなる駅付近は人通りはあるものの、コンビニを出て次の駅に近付くに連れて、タクシーを拾おうとする飲み帰りのサラリーマンがちらほら目に入るが、その程度も徐々にフェードアウトするように減って行く。
「この辺りならいつでもタクシー拾えそうだし、せっかくなのでこれだけ飲んでから帰ろうかな。飲みながら何か話そー」
「そうですね、何処か座れる場所探しましょうか」
駅の高架を潜り、オフィスやマンションが立ち並ぶエリアを適当に足を踏み入れる。独り暮らしの独身の若手会社員やキャバクラ嬢が好んで選びそうな、中心部のターミナル駅から1駅、徒歩でも15分程度のアクセスのエリアだ。僕も社会人2年目でこの街へ移り住んだ頃に、まさにそういった条件のエリアの物件に居を構え、週末夕方に起きても自転車でショップ巡りが出来る立地を凄く気に入っていた。歩いていると2ブロック程先に開けたスペースがあり、そこがこじんまりとした公園であることが認識出来た。鉄棒と滑り台とブランコを最低限に備えたこのエリアで、主婦が買い物ついでに子供を遊ばせるには必要充分なスペースだった。無難な場所だとどちらともなくその公園の方へと向かうように歩き、傍に添えられたベンチに腰を下ろそうとしたところ、おねーさんが「私滑り台の上が良いな」と言うので公園の中央まで歩いた。
滑り台の階段を登ってこちらを振り返りながら、タイトなスカートからするりと伸びる足を斜めに傾けながら腰を下ろす。僕は下で階段に足を掛けて縋りながら、若干見上げる格好の位置を取った。
「仕事帰りに飲んでたの?」
「そうですね、何処かで仮眠取って明日そのまま出社するつもりだったんです」
「元気だなぁ、僕はもうそんな遊び方出来ないや」
「私も最近はほとんどしてないですよ。人妻なので」
「あ、そうなの?予定変わったなら逆に早く帰んないとじゃない?」
「いや、たまには良いかなぁみたいな」
「不倫してそう!」
「相性が良いセフレは少し前までいました(笑)」
「良いね、そういう話好き。旦那さんとは?」
「したいと言われればします(笑)」
「相手次第と」
「ですね(笑)」
「冷めてるの?」
「そうではないですけど(笑)」
「不思議だなぁ。お仕事はセールス?いや、何となく喋りというか人馴れした感じが」
「今は受付け嬢ですね」
「あぁそれも分かるな。だってめちゃはっきりしたお顔の美人さんだよね」
「そんなことないですよ。私結婚する前は国際線のCAだったんですけど、いつも『お金は会社が持つから整形しても良いよ』って言われてたんですよ。酷くないですか?(笑)」
「CAにしては目立つとか?ぶっちゃけ派手な顔だなぁと思ったけど納得」
「褒められているのか分からない(笑)」
「めちゃ褒めてる。そのインパクト分けて欲しい(笑)」
「やっぱ褒められてる感薄いです(笑)」
和みながらだと自然とお酒も進むのだが、疲れもあってか彼女の方がグイグイと飲み進めているのが分かった。そして滑り台の階段を登りきった踊り場のスペースの傍に、先に空になった缶を彼女が軽い音を立てながら置いた。
「後どれくらい残ってるの?(笑)」
そう言いながら彼女が僕の手元の缶を取り上げ、大きく2クチくらい飲み込んで残りを逆さにして滑り台の上から地面へと垂れ流した。持て余していた僕は、お酒はそれでも良いと思いながらも、飲むものを切らしてこのまま解散というのはどこか味気ない気がした。
「蚊がいるし場所変えません?」
おねーさんの本意を見抜けず「屋外なら何処へ行っても蚊は舞っているのではないか?」そう感じながら、「飲むものも飲んだし場所を変えたところで何をしよう?」と気後れしていると先に切り出された。
「あの、さっき私朝まで遊んで明日そのまま出社するって言ったじゃないですか?」
「でも予定変わったから帰るんだよね?」
「いや、旦那にもう帰らないって言っちゃってるので色々説明が面倒だなって」
「確かにそういう発想もあったか」
「朝まで寝れるところ連れて行ってくれたら何でもします(笑)」
「はぁ?」
「おにーさんはヤルコトやったら帰っても良いし朝まで一緒に居ても良いですし、とにかく私寝る場所ないなって(笑)」
「あぁ『宿泊費出してくれたお礼にSEXしても良いよ』って?」
「女の子にそんなこと言わせないでください(笑)」
「ちょっと待って、そう来る?まだチューもしてないし誘ってもないのに、初めて先手打たれてしてやられた感ハンパ無いんだけど!(笑)」
「引いちゃいます?」
「全然。寧ろココで一旦オッパイ見たいくらいには前のめりだよ」
「良いですよ(笑)」
「ってか膝斜めに折ってないとさっきから思い切りスカートの中見えそうなんだけど!」
「パ●パンなんで場所移動してからにして下さい(笑)」
「ちょっと僕気後れしてるわ…。まぁとりあえず行こう。サッサと帰って今日は帰って寝たい」
「でもチェックインしてから帰って下さーい(笑)」
「大丈夫、そこは互いにその気なのなら僕もブチ込んで帰りたいから(笑)」
「言い方(笑笑笑)」
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