第3話 光の月(4月)のお祭り

 広場に行くと、そこには、たくさんの人がいた。

 みんな、楽しそうな表情で、わたしと、クレハおばあちゃんに、あいさつをしてくれる。

 わたしと、クレハおばあちゃんも、笑顔で、あいさつを返した。


 わたし以外には、見えてないだろうけど、精霊たちがたくさんいる。


 青い色の――水の精霊たちと、緑色の――大地の精霊たち。それから、空色の――風の精霊たちがいる。

 ふわふわ、ふわふわ、浮かんでるんだ。


 真っ白なテーブルには、たくさんのごちそうがある。どれも、おいしそうだ。

 おいしそうな匂いがする。


 テーブルには、お花もかざってあって、今年も、この日がきたなぁって、じわじわと、よろこびの感情が、あふれ出した。


 朝から、ワクワクしていたけれど、お祭りって、楽しいなぁ。


 ロイと、リュアム君、どこにいるんだろ?

 背が高くて、身体が大きな人がたくさんいるから、どこにいるか、わからないや。

 いろんな人に、かこまれているんだろうな。



 あっ! 村長さんだっ! 

 今、台に上がった村長さんは、おじいさんなんだけど、とっても強そうな男の人だ。

 筋肉ムキムキで、背が高くて、身体が大きいの。


 村長さんの髪の色と、目の色は、緑色。

 大地の魔力を持っているから、魔法は、大地の魔法を使うんだけど、すごい、身体をきたえてるから、強いらしいんだ。


 村長さんは、わたしに、よく話しかけてくれる男の子、ロイのおじいさんなんだ。

 ロイのお父さんも、背が高くて、身体が大きくて、筋肉ムキムキなの。

 おまけに、ロイのお父さんは、炎の魔力を持っていて、炎の魔法を使うから、怒らせるとあぶないって、言われてるんだ。


 わたしみたいに、水の魔法が使える人なら、炎が飛んできても、だいじょうぶだけどね。


 村長さんの長いお話がはじまって、そしておわった。

 そのつぎは、村まできてくれた神官さまが、台に上がり、ありがたいお話がはじまる。


 今日、この村にきてくれた神官さまは、銀色の髪と、青い目を持ち、白い服を着た男の人だ。

 髪の色と、目の色を見れば、氷の魔力と、水の魔力を持ってることがわかる。



 この世界の魔力、魔法と呼ばれるものは、炎、水、大地、風、雷、氷、光、闇。


 炎の魔法は、炎を出し、あやつることができて、水の魔法は水を出し、あやつることができる。

 大地の魔法は、土や、植物をあやつることができて、風の魔法は、風をあやつることができる。


 雷の魔法は、雷を出し、あやつることができて、氷の魔法は、氷を出し、あやつることができる。

 光の魔法は、光を出し、あやつることができる。それと、ケガや病気を治すことができるんだ。


 闇の魔法は、影に入るとか、わたしが知ってるジョウホウが、本に書いてあったりするんだけれど、人をあやつるって、書いてある本もあるし、わからないと書いてある本も、あったりする。


 闇の魔力を持っているオオカミの魔獣――ガルリカに、闇の魔法について、聞いてみたことがあるんだけど、おしえてはくれなかった。

 わたしの影に入ることがあるのは知ってるし、言いたくないなら、それでいいんだけどね。



 魔力、魔法は、炎、水、大地、風が多く、雷、氷、光、闇は少ない。

 なので、氷の魔力を持つ、神官さまは、とてもめずらしい魔力を持つ人だ。


 魔獣も似た感じだ。炎、水、大地、風の魔法を使う魔獣が多い。

 精霊は、場所とか、季節でちがう気がする。



 村の人たちは立ったまま、まじめな顔で、神官さまのお話を聞いている。

 みんなで、太陽の女神さまに感謝のいのりをささげたあと、わたしはふと、青い空を見上げた。


 あっ! 金色の――光の精霊たちだっ!

 太陽の女神さまもいるのかなぁ。見えないけど、どこかから、見ていてくれているのかもしれない。


 そして、ごちそうを食べる時がきた。

 みんなで手を組んで、食事に、感謝のおいのりをささげてから、食べる。

 光の精霊たちが、キラキラと光りかがやく。キレイだなぁ。


 神官さまも、村長さんも、村の人たちも、みんな、頭に、花の髪かざりをつけて、笑ってる。

 お祭りは、とってもとってもにぎやがで、神官さまは、ちょっとだけ、会話や食事を楽しんだあと、神殿に帰って行った。



 クレハおばあちゃんは、いろんな人にかこまれて、大変そうだ。

 この前の、あの薬は飲みやすかったし、よく効いたので、よかったとか、あの時は、クレハさまの薬のおかげで、助かったとか、命の恩人だとか、そんなことを言われてる。


 クレハおばあちゃんは、話しかけてくる人たち、みんなに笑顔で、楽しそうに返事をしている。

 クレハおばあちゃんはすごいなぁ。


 なんて、思ってたら、わたしにも、話しかけてくる人がいた。女の人だ。


「まあ! ラナちゃんっ! ちょっと見ない間に、こんなに大きくなったのねぇ!」


 だれだろう? 神官さま以外は、ココ村の人だろうけど、だれなのかわからない。

 ちょっと見ない間って、本当だろうか? 


 おぼえてないんだけど……。どこかで、わたしを見たのかな? 

 そんなことは聞けないので、わたしはニコッと笑ってから、頭をかるく下げておいた。


 クレハおばあちゃんに、会いにくる人たちの中には、子ども連れもいるんだけど、子どもはみんな、つまらなそうだった。


 よく知らないおばあさんのところに、連れて行かれても、こまるよね。

 わたしもそういう時は、どうしたらいいか、わからないから、こまるよ。


 感謝されるのは、すてきなことだ。

 だけど、お祭りで、元気いっぱいな人たちにかこまれるのは、大変そう。


 感謝を言いたくなる空気なのは、わかるけどね。


 クレハおばあちゃんは、ココ村の多くの人たちから、クレハさまとか、薬草師さまと、呼ばれてる。

 ロイは、ラナのばあちゃんって呼んでるし、村長さんは、クレハと呼ぶけどね。



 薬草師というのは、薬草などから、薬を作る人のことだ。

 町まで行けば、お医者さまがいるのだけれど、ココ村には、お医者さまがいないので、とても、頼りにされている存在だ。


 わたしと、クレハおばあちゃんは、ポポノンの森のすぐ近くに、住んでいるんだ。

 家の近くに、2階建ての空き家があるんだけど、そのほかには家がない。

 森に用事がある人か、クレハおばあちゃんが作る薬がほしい人、クレハおばあちゃんに、話を聞いてほしい人くらいしか、ふだんは会わない。


 ロイとリュアム君は、ちょろちょろしてたりするけど、リュアム君だけなら、こっちにはこない。やさしい子だけど、おくびょうだからだ。


 ロイは前向きというか、自信がある子だから、ポポノンの森にだって、1人で入って行こうとするんだよね。

 細かいことに気づくリュアム君がいたとしても、あぶないから、あの子たちを見かけたら、わたしもいっしょに、行くようにしてるんだ。

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