第3話 光の月(4月)のお祭り
広場に行くと、そこには、たくさんの人がいた。
みんな、楽しそうな表情で、わたしと、クレハおばあちゃんに、あいさつをしてくれる。
わたしと、クレハおばあちゃんも、笑顔で、あいさつを返した。
わたし以外には、見えてないだろうけど、精霊たちがたくさんいる。
青い色の――水の精霊たちと、緑色の――大地の精霊たち。それから、空色の――風の精霊たちがいる。
ふわふわ、ふわふわ、浮かんでるんだ。
真っ白なテーブルには、たくさんのごちそうがある。どれも、おいしそうだ。
おいしそうな匂いがする。
テーブルには、お花もかざってあって、今年も、この日がきたなぁって、じわじわと、よろこびの感情が、あふれ出した。
朝から、ワクワクしていたけれど、お祭りって、楽しいなぁ。
ロイと、リュアム君、どこにいるんだろ?
背が高くて、身体が大きな人がたくさんいるから、どこにいるか、わからないや。
いろんな人に、かこまれているんだろうな。
♢
あっ! 村長さんだっ!
今、台に上がった村長さんは、おじいさんなんだけど、とっても強そうな男の人だ。
筋肉ムキムキで、背が高くて、身体が大きいの。
村長さんの髪の色と、目の色は、緑色。
大地の魔力を持っているから、魔法は、大地の魔法を使うんだけど、すごい、身体をきたえてるから、強いらしいんだ。
村長さんは、わたしに、よく話しかけてくれる男の子、ロイのおじいさんなんだ。
ロイのお父さんも、背が高くて、身体が大きくて、筋肉ムキムキなの。
おまけに、ロイのお父さんは、炎の魔力を持っていて、炎の魔法を使うから、怒らせるとあぶないって、言われてるんだ。
わたしみたいに、水の魔法が使える人なら、炎が飛んできても、だいじょうぶだけどね。
村長さんの長いお話がはじまって、そしておわった。
そのつぎは、村まできてくれた神官さまが、台に上がり、ありがたいお話がはじまる。
今日、この村にきてくれた神官さまは、銀色の髪と、青い目を持ち、白い服を着た男の人だ。
髪の色と、目の色を見れば、氷の魔力と、水の魔力を持ってることがわかる。
♢
この世界の魔力、魔法と呼ばれるものは、炎、水、大地、風、雷、氷、光、闇。
炎の魔法は、炎を出し、あやつることができて、水の魔法は水を出し、あやつることができる。
大地の魔法は、土や、植物をあやつることができて、風の魔法は、風をあやつることができる。
雷の魔法は、雷を出し、あやつることができて、氷の魔法は、氷を出し、あやつることができる。
光の魔法は、光を出し、あやつることができる。それと、ケガや病気を治すことができるんだ。
闇の魔法は、影に入るとか、わたしが知ってるジョウホウが、本に書いてあったりするんだけれど、人をあやつるって、書いてある本もあるし、わからないと書いてある本も、あったりする。
闇の魔力を持っているオオカミの魔獣――ガルリカに、闇の魔法について、聞いてみたことがあるんだけど、おしえてはくれなかった。
わたしの影に入ることがあるのは知ってるし、言いたくないなら、それでいいんだけどね。
♢
魔力、魔法は、炎、水、大地、風が多く、雷、氷、光、闇は少ない。
なので、氷の魔力を持つ、神官さまは、とてもめずらしい魔力を持つ人だ。
魔獣も似た感じだ。炎、水、大地、風の魔法を使う魔獣が多い。
精霊は、場所とか、季節でちがう気がする。
♢
村の人たちは立ったまま、まじめな顔で、神官さまのお話を聞いている。
みんなで、太陽の女神さまに感謝のいのりをささげたあと、わたしはふと、青い空を見上げた。
あっ! 金色の――光の精霊たちだっ!
太陽の女神さまもいるのかなぁ。見えないけど、どこかから、見ていてくれているのかもしれない。
そして、ごちそうを食べる時がきた。
みんなで手を組んで、食事に、感謝のおいのりをささげてから、食べる。
光の精霊たちが、キラキラと光りかがやく。キレイだなぁ。
神官さまも、村長さんも、村の人たちも、みんな、頭に、花の髪かざりをつけて、笑ってる。
お祭りは、とってもとってもにぎやがで、神官さまは、ちょっとだけ、会話や食事を楽しんだあと、神殿に帰って行った。
♢
クレハおばあちゃんは、いろんな人にかこまれて、大変そうだ。
この前の、あの薬は飲みやすかったし、よく効いたので、よかったとか、あの時は、クレハさまの薬のおかげで、助かったとか、命の恩人だとか、そんなことを言われてる。
クレハおばあちゃんは、話しかけてくる人たち、みんなに笑顔で、楽しそうに返事をしている。
クレハおばあちゃんはすごいなぁ。
なんて、思ってたら、わたしにも、話しかけてくる人がいた。女の人だ。
「まあ! ラナちゃんっ! ちょっと見ない間に、こんなに大きくなったのねぇ!」
だれだろう? 神官さま以外は、ココ村の人だろうけど、だれなのかわからない。
ちょっと見ない間って、本当だろうか?
おぼえてないんだけど……。どこかで、わたしを見たのかな?
そんなことは聞けないので、わたしはニコッと笑ってから、頭をかるく下げておいた。
クレハおばあちゃんに、会いにくる人たちの中には、子ども連れもいるんだけど、子どもはみんな、つまらなそうだった。
よく知らないおばあさんのところに、連れて行かれても、こまるよね。
わたしもそういう時は、どうしたらいいか、わからないから、こまるよ。
感謝されるのは、すてきなことだ。
だけど、お祭りで、元気いっぱいな人たちにかこまれるのは、大変そう。
感謝を言いたくなる空気なのは、わかるけどね。
クレハおばあちゃんは、ココ村の多くの人たちから、クレハさまとか、薬草師さまと、呼ばれてる。
ロイは、ラナのばあちゃんって呼んでるし、村長さんは、クレハと呼ぶけどね。
♢
薬草師というのは、薬草などから、薬を作る人のことだ。
町まで行けば、お医者さまがいるのだけれど、ココ村には、お医者さまがいないので、とても、頼りにされている存在だ。
わたしと、クレハおばあちゃんは、ポポノンの森のすぐ近くに、住んでいるんだ。
家の近くに、2階建ての空き家があるんだけど、そのほかには家がない。
森に用事がある人か、クレハおばあちゃんが作る薬がほしい人、クレハおばあちゃんに、話を聞いてほしい人くらいしか、ふだんは会わない。
ロイとリュアム君は、ちょろちょろしてたりするけど、リュアム君だけなら、こっちにはこない。やさしい子だけど、おくびょうだからだ。
ロイは前向きというか、自信がある子だから、ポポノンの森にだって、1人で入って行こうとするんだよね。
細かいことに気づくリュアム君がいたとしても、あぶないから、あの子たちを見かけたら、わたしもいっしょに、行くようにしてるんだ。
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