俺宛

「君宛だよ。見てこれ。山吹シンジ君って書いてある」

そう言って山下君はある一通の手紙をポケットから取り出し、

それを目の前で開いて俺に確認させた。

「すごいよ。差出人のとこ」

「ん?」

「学園のマドンナの氷室レナって書いてあるだろ」

「ん、あああ…」

「あの、男子全員を鼻であしらっている学園一のモテ女を惚れさせるなんて

なかなかできる芸当じゃないよ…?」

「んー、何かの間違いじゃね?

世の中には嘘告白なんて言葉もあるくらいだから、嘘手紙なんてのも

あるってことで…」

「ひねくれてるねえ…」

「俺の人生、いろいろあったからな」

「詐欺師に会うと会うやつすべてが俺をだまそうとしてんじゃないかって

そんな気になるんだ」

「ふーん」

ここまで山下君にしゃべって話を止めた。

なぜってチャイムが鳴ったから。


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