第五話 こいつら、正気か?
扉を開ける。扉を開く音がその空間の中で何重にも響いていた。何人もの人間が同時に部屋に入ってきていたのだ。
その部屋は広く、部屋というよりも広間と呼ぶべきだろう。
入ってきたのは老人もいれば、女性もいて、若い男性もいる。なんなら、軍人さんもいた。
老人の足元は血にまみれていた。彼はデスゲームに忠実に参加して、誰かを殺したのだろう。そう思った。
だが、どうも違うらしい。老人は
なんでも、かつてデスゲームに参加したが、人を殺してはいない。それに、デスゲームから出る方法を知っているということだった。話を聞く限り、嘘や誇張も多分に感じはするものの、大元のところでウソはついていないように思う。
最悪、彼に聞き出せば、この場所から出られるだろう。
続いて、女性が話し始めた。
彼女もまたデスゲームに参加し、生きて戻ったいう。そして、驚きなことに、青紫色の髪をした露出度の高い中年女性に襲われたらしい。これは伝吉さんも同じで、私が見た奇妙なクローンの死体と関係があるのだろうか。
そのデスゲームとは、そのままズバリ、オンラインゲームのことだという。開発中に出現したバグのような存在に戦いを挑み、文字通り死屍累々の状況になったのだとか。
次に話したのは、
彼もまたデスゲームに参加し、生き残った。そのはずだった。つまり、最後は死んだのだ。
彼に恨みを持つ犯罪者ばかりが集められた島で、犯罪者たちの攻撃から逃げるゲームを強要されたのだという。その島からは命からがら逃げ出したものの、核戦争に巻き込まれたのだ。
これには嫌な予感がしてならなかった。我々がアンドロイドだかクローンだかであるという証左のように思えてしまう。それに、彼の話によると大規模な戦争が起きたらしい。本当にあったことなのだろうか。
さらに、もう一人の女性、
彼女が話したのは死後の世界の話だった。本当に露木さんは死を体験し、死後の世界を見たのだろうか。それは疑問だ。
話の内容は、突然迷い込んだ死後の世界で、妖怪と戦うという荒唐無稽なものだった。そこでは死者が生き、生者が死んでいるのだという。
だが、透瓏さんの話と奇妙な符合があった。核戦争が起き、それにより地球上の人々がほとんど死に絶えたという。恐ろしい話だが、なぜか納得感がある。
最後に話したのが軍人さんだ。フリード・
彼の話もまた、透瓏さんや新さんの話を補完する内容だった。軍の秩序を乱した者たちが罰ゲーム的に集められ、ミュータントと戦わさせられるのだ。その結末は、死闘の末に核戦争の始まりに立ち会った、そのように受け止められる。
ということは、私たちはすでに死んでいるということになってしまう。
そんな話をしながらも、フリードは自らの物語を否定する。
「そんな、おかしいデース。力を込めれば、筋肉がみなぎるデショ。腕をつねれば痛いデショ。皆サン、やってみてくだサーイ。死んでるなんて、そんなことないヨ。バカバカしいことダヨー」
私はそんな話を聞きながらも、考えていたことを話すことにした。
「皆さんの語り、参考になりました。私はデスゲームに参加したのは初めてですけど、でも気づいたことがあります。
疑問に思いませんか。ここがどこなのか、なぜデスゲームなのか。それに、皆さん、同じ人物の話をしていましたよね。それって変です。
私がこの施設に来たこと、そこから話したいと思います」
私は話し始める。
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