第四話 まさか、アンドロイド?
廊下を歩いている。なんで、歩いているのか、まるで記憶はない。
通路は幾重にも連なっており、扉を開けても、また通路がある。窓はあるがどれも真っ暗で、何も見えない。
ふと思い立って、窓の外を眺めてみることにする。
コンコンと叩いてみた。思ったよりも、分厚い窓だった。これは何センチあるんだろう。メートル単位ではないと思うのだが。
じっと眺めていると、目が慣れてきたのか頭上から光が漏れていることに気づく。それは青か紫色の光だった。
そして、突如、触手のようなものが窓に張り付いてきた。吸盤が窓を吸い込むようにして張り付く。どうやらタコのようだ。
うん? タコ? タコが外にいるというのか?
目を凝らして、もう一度見てみる。タコの頭がニョッとこちらを見ていた。しかし、私が見ているのに気付いたのか、タコは驚いたように、一目散にどこかへ泳ぐように飛び去ってしまう。
一体、ここは何なんだ? あのタコは何なんだ?
タコが泳ぐような摩訶不思議な場所に来てしまったのだろうか。それとも……。
もう少し窓を眺めていれば答えはハッキリしたかもしれない。とはいえ、それよりもこの場所を探索した方が有意義なんじゃないかと思い始めた。
私は廊下を再び歩く。通路を進み、扉を開け、また通路。小部屋に行きつくこともあったが、特に何も見当たらない。
窓を見ていた方が有意義だっただろうか。そう思い始めた時、廊下の壁の中に違和感を覚えた。取っ手があるように思える。
その壁に近づき、取っ手のような型取りを手で触れる。型取りはクルっと回転して、取っ手が露わになった。その取っ手を引いた。
ドサドサドサドサ
開けた瞬間に、何かが倒れ込んでくる。
見ると、それは死体だった。いや、死体なのだろうか。人形のようにも思える。
青紫色の髪をした中年の女性で、ボディコンのような露出度の高い服装をしていた。触れると、冷たい。どうやら、取っ手の中は冷蔵室になっていたようだ。
異様なのはそれが一人だけではないことだった。同じ風体をした死体が何体もある。冷蔵室を覗いてみると、まだまだ同じような死体はたくさんあった。顔を覗いてみる。どれも、まったく同じ顔だった。
「まさか、
思わず呟いてしまった。ここはアンドロイドを製造している工場のような場所なのだろうか。
それにしても、なんで私がこんな場所に……。そう思うと、ハッとする。
まさか、私もアンドロイドなんてことはないだろうか。血の気が引く。だから、気づいた時にはこんな場所にいたんだろう。
いや、私は呼吸もするし、脈もある。歩いていれば疲れるし、喉も乾いた。
アンドロイドだとすれば、こんな不要な機能をわざわざ作る必要がない。そんな仮定は無意味なものだろう。
あるいはクローンということは考えないだろうか。この女をクローンにして多量に生産したのだ。
しかし、と考えを思い直す。
クローンとは遺伝子の複製である。クローンを作ったとして、大人の身体で生成されることはない。当然だろう。生まれたばかりで、すでにおばさん、なんて生物があるわけがない。まずは、赤子として生まれ、普通の人間として成長する。所詮は人工的に双子を作る技術でしかないのだ。
それとも、単なる
しかし、なんだってこんな多量の中年女性のマネキンを必要としているのか。それは皆目見当がつかない。
そんなことを考えていると、いつの間にか大きな扉の前に辿り着いた。予感がする。
意を決して、扉を開けた。
ギギィー
錆びついていたように、不協和音が鳴る。しかし、それは一箇所からではなかった。その部屋に入ってきたのは私一人ではない。複数の人間が同じタイミングで扉を開けていた。
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