第九話 どんな智者にも先が読めないことがある(Fights are done by reading two or three moves.)
ビーム兵器が放たれた。私はとっさに地面を転がり、その場から離れる。
これはどうなる? 辺見とハイドが潰し合ってくれると、嬉しいのだが。
光線銃が放たれ、辺見を焼く。だが、先ほどとは違い、辺見の肉体はビームを弾いているようで、その効き目は薄くなっていた。再生された肉体に抗体のようなものができているのだろうか。
ハイドはめげずに光線銃を何度も撃つが、辺見は意にも介さず、にじり寄っていく。
これはハイドが不利か? どうする? ミッション達成を優先するか?
しかし、辺見を倒せそうな時に倒さなくては、この先、手をつけられなくなりそうだ。ハイドが味方として機能する時は味方として利用する。
辺見はパワードスーツに纏わりつき、万力のようにじわじわと潰し始めていた。ハイドは足掻くようにビームを撃つが効果はほとんどない。私は背後から辺見に斬りかかる。
「助太刀するぞ」
VUUUUUN
光のブレードは確実に辺見の肉体を斬り刻んだ。ハイドに圧力をかけていた辺見の肉体が崩れ落ちる。パワードスーツは少し動くようになった。
「その手には乗るか。お前も殺す」
しかし、ハイドは自由になった腕で、ビーム砲を乱射し、辺見もろとも私を攻撃してくる。
ビーム攻撃をブレードで弾き、身を守る。辺見も光のブレードで削った部分はビームへの耐性が薄いらしく、瞬く間にその体積を縮めていた。
よし、とどめだ。私は辺見の肉体をズタズタに切り裂き、返す刀でパワードスーツの両腕を斬り落とす。
すでに、胸には穴が開いていた。ケリーをパワードスーツごと焼き殺した時に空いた穴だ。その穴でお前も命を落とすことになる。
私は胸の穴から、ハイドを貫いた。
HAHAHAHAHAHA
笑い声が響き、パワードスーツが割れた。文字通り、ハイドは飛び出てくる。バックパックから光の翼が羽ばたいていた。
その羽ばたきは私の腕を焼く。光のブレードを放っていた金属器もろとも、腕が落ちた。
「お前の負けだ、ジーク!」
ハイドが叫んだ。
利き腕を失い、武器も落とした。敵は高速で迫ってくる。絶体絶命だった。
だが、私はハイドの言葉を否定する。
「その武器は接近戦には向いていない。君の負けだ」
バックパックの翼を利用した攻撃を回避し、左手の爪からブレードを出した。ブレードでハイドの首筋を切り裂く。
おびただしい流血。ハイドは攻撃する力はおろか、立っているだけの元気も失い、倒れ込んだ。
HAHAHAHAHAHAHA
それでも、ハイドは笑っていた。
気が狂ったか。そう思ったが、意外なことにハイドはしっかりと喋る。
「忘れたか? ミュータントを殺して得た報酬のことを。オスプレイから降ろされた最後の武器のことを。
これが、それだ。これでも喰らえ!」
そう言うと、ハイドは手に持っていた、何かボタンのようなものを押した。
急に警告音のようなものが鳴りだす。私の目指していた建物は変形して、畳み込まれるように、どこぞに収納された。その跡地には巨大な穴が出現する。そして、その穴からはミサイルがせり上がってきた。
そのミサイルは……、核兵器だろう。
タブレットが指し示していた機密物資の在りか。それは、プルトニウムに反応していたようだ。
ミサイルが露出すると、ミュータントたちが現れる。まるで崇めるかのように祈りを捧げ始めた。
昔の映画で核爆弾をご神体として崇めるミュータントを観たことがあるが、それと同じなのだろうか。
ミサイルは発射された。それと同時に、この島も攻撃される。ミサイルが降り注いでいた。
なんだ、これは? 敵基地攻撃能力による報復か? いや違う。
ハイドの様子を窺うが、すでに事切れていた。
部隊の人数が1人になれば、残ったものが勝ち残る。ヨライム・グワント軍曹はそう言った。だが、それは真実だろうか。
実際には1人になればゲームーバーなんじゃないか。グワント軍曹はこの
だから、早く終わるように私たちを殺し合わせようとしたのだ。
核ミサイルは次々に飛び交い、この孤島を攻撃する。そのたびに地面は揺れ、周囲に瓦礫が飛び散った。
そして、ついにその時は来た。私のいる地点にミサイルが落ちた。
皮が剥げ、肉がむき出しになる。来ている服は全て焼け焦げた。あまりにも熱く、あまりにも苦しい。それでも、ゲホゲホと息をつき、生き残ったことを確認する。
だが、次の瞬間、またミサイルが落ちて……。
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