第八話 目的を忘れてちゃ、目的は達成できない(Hold your goals high.)
ヨライム・グワント軍曹の敗北とともに、ミュータントの圧倒的な力を目の当たりにした。
それでハイドはとち狂ってしまう。いや、彼は元から狂っていたのかもしれない。
ケリーが殺され、ついに孤島にいるのは私とハイドの二人になってしまった。いや、ミュータントたちはどれだけいるかわからない。その上、頼みの綱であったグワント軍曹も半死半生の有様だ。
「待て。部隊の残り人数が1人になったら、生き残った者の勝ち。そんなのはグワント軍曹が言っていただけだ。それにそいつはもう死ぬぞ。
私たちは2人きりだ。そして、ここは敵地。協力するのが正しいんじゃないか」
なんとか説得しようと、私はハイドに声をかける。しかし、ハイドは鼻で笑っただけだった。
「まだ、オスプレイは飛んでいる。少なくとも、操縦者はいるだろ。全然、2人きりじゃないんだよ」
その言葉とともに、バックパックから光の翼が漏れ出る。
飛ぶ。そう思った瞬間には、ハイドは空中にいた。
私は必死で走る。できるだけ障害物の多い場所へ。
飛行するハイドは急降下して、私に襲い掛かってくる。できるだけジグザグに走り、タイミングを計って木陰や岩陰に隠れた。どうにか、ハイドの攻撃を回避することができた。
やがて、建物が見えてくる。タブレットで地図を見て、この場所のことは知っていた。全力疾走して、どうにか建物の中に潜り込む。
DOKAAAAAN
突如、建物が砲撃される。飛行するハイドが光線銃を撃ってきていた。ケリーが持っていた武器だ。死体からはぎ取っていたというわけか。
しかし、ビーム兵器というものは敵に回すと恐ろしい。建物を一撃で半壊させるほどの出力があるのだ。
BEEEEM
光線銃による砲撃は続く。ついに建物は根こそぎ破壊つくされた。私のいた場所は瓦礫で埋もれる。
だが、私は知っていた。この建物には地下室があり、周囲の建物とは地下通路でつながっているのだ。
私は地下通路を通りながら、目的地を探す。島の中心にある丘にある建物。その中から異常な反応が出ていた。おそらく、この場所にこそ機密物資があるのだろう。
別の建物から地上に戻る。外の様子を窺い、ハイドが近くにいないことを確かめると、目的地に向かって走り始めた。
できるだけ見つからないように、木々や草むらを進む。草むらを歩くのはなかなか骨の折れることだが、爪に隠してあるブレードを出し、どうにか道を作った。やがて、目的の建物へと辿り着く。
しめた。見張りもいない。
私は喜び勇んで、建物へと走った。
その時である。背後から気配がした。振り返ると、青紫色の髪をした、肌を露出させた中年女性が現れている。そう、
辺見は腕を振り上げると、その肉がぶくぶくと肥大化していった。その圧倒的な体積を振り下ろし、私を潰そうとする。
絶体絶命か、南無三。そう思いながらも、円筒形の金属を取り出し、起動する。
VUUUUN
金属器から光のブレードが出現した。ブレードで叩きつけられた肉塊を切り裂く。ブシャアという音ともに肉が弾け、血が吹き飛ぶ。辺見は片腕を失った。
すると、もう片方の腕を振り上げる。今度は細く輝く形状に変わる。そしって、振り下ろす。
KAKEEEEEEN
とっさに受け太刀するが、固く重い痺れるような感覚が伝わってきた。辺見の腕は金属質のものに変化し、ブレードと化していたのだ。
カキンカキンと何度も切り結ぶ。剣の腕では私に分があるようだったが、辺見はリーチが長い。その差を埋めることができず、戦いは膠着した。
何度も切り結び、徐々に疲労が蓄積する。焦る気持ちを抑え、どうにか活路を見出そうとした。
そんな時だ。ガチャンガチャンとした重量のある足音が響いてきた。何者かがパワードスーツに搭乗し、近づいてきている。当然、ハイドだろう。
パワードスーツには光線銃が取り付けられているが、パワードスーツのサブパーツと組み合わさることで、まさに砲身というべき形状に変形している。出力が相当上がっていることが予想できた。
BBBEEEEEEEEEMMM
パワードスーツからビームが発射される。それは、私と辺見に向かって放たれていた。
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