第五章 フリード・神宮・シーヴルズ将軍@結婚詐欺師

フリード・神宮・シーヴルズの語り その一

第一話 将軍、大いに語る(General, speaks volumes.)

 Ladies and gentlemen, let me tell you, General Fried Jingu Sievers. As you may already know, I am an officer in the U.S. Marine Corps and a descendant of the Italian aristocracy... Oops, disrespect.


 これは失敬。つい、癖でね、英語で話してしまったようだ。日本語じゃないとわからない方もいるだろうね。

 それでは改めて、この私、フリード・神宮じんぐう・シーヴルズ将軍に話をさせてもらおう。ご存知の方もいるだろうが、私はアメリカ海兵隊の将校にして、イタリア貴族の末裔だ。

 そうだな、ヴァチカンには先祖が多額の寄付をしててね、その影響でシーヴルズの当主たる私には年金が出る。それなりにまとまった金額のね。残念ながら私は結婚はしていないが、もしすることになれば、多額の結婚支度金が出ることになっている。莫大な金額が入るんだ。それは私と伴侶の共通の資産ということになるな。


 おっと、失礼。話が脱線してしまったか。

 今までの君たちの語ったお話を鑑みて、あの日の話をしないわけにはいかないだろう。イトァーリアの英雄といわれたこの私だが、その英雄の名を返上することになった悲愴な事件があった。


 そう、その時だ。私は気づいたらオスプレイに乗せられていてね、あろうことか手足を縛られ、身動きのできない状態だった。周りを見ると、同じような状況の兵士や将校が数人いることがわかる。

 そして、私の正面にはニヤニヤと私を見つめる兵士がいたよ。階級章を見ると、軍曹であることがわかる。


「気づいたか、この豚ども。いつまでもスヤスヤ眠りこけやがってよ。とっとと目覚めろ、腰抜け野郎チキンども!」


 そう言うと、軍曹は私たちを足蹴にしていった。

 下士官に過ぎぬ軍曹が中将たるこの私を足蹴にするとは何事か。そう思ったが、言葉を発することができない。口には猿ぐつわが嵌められ、喋ることもできなかった。


「俺はヨライム・グワント軍曹。お前ら、豚どもを人間に戻す任務でここにいる。せいぜい立派なクズ野郎に出世することだな」


 ヨライム・グワント。気づいた者もいるかな。君たちが度々口にした寄見頑人よりみがんとだが、私も似た名前のものと会っているんだ。

 だが、グワント軍曹の印象は最悪なものだったよ。


「おう、フリード! お前はどうしてこんな目に遭っているか、わかっているんだろうな。今は開き直って、正しいことをしたとでも思っているか? 少し前までビクビクしてたくせによ」


 グワント軍曹が俺の顔に近づき、唾を吐きかけつつ、そんなことを問いかける。

 確かに心当たりがあった。


 その少し前、私はアフリカの戦線にいた。独裁政権の暴走に端を発した紛争を解決すべく、我々海兵隊が駆け付けたのだ。

 おっと、海兵隊の説明をした方がいいかな。海兵隊は陸海空のどの軍にも所属せず、陸海空のすべてに対応した装備と技術を持つ独立組織だ。対外部隊として知られ、紛争が起これば、最前線に赴き、先端を切り開く。それが役目だ。


 現地は悲惨なものだったよ。男は皆殺しにされ、女は老若問わず慰め者となり、子供たちは暴力にさらされていた。

 そんな中、部下の一人が傷ついた少女を見つけた。そして、言ったんだ。「彼女は自分の妹だ」と。

 確かに、彼はアフリカ系のアメリカ人だったし、聞いていた話だと、その土地は先祖の暮らした場所だった。だが、それは昔の話。実際の家族がそんなところにいるはずはないんだ。彼は悲惨な状況を目の当たりにして、精神を病んでしまったのだろう。少女を妹と思い込んでいた。


 しかし、それで任務に悪影響があるわけでもない。私たちは彼がを甲斐甲斐しく看護する様を微笑ましく見ていた。

 だが、その土地から転戦するにあたって、彼は私に相談を持ち掛けてきた。「この地に残りたい」と。つまり、脱走の相談だった。

 私は彼の痛ましい思いに共感していた。彼に逃げ道を与え、書類を改ざんして、脱走を手助けする。


 そして、このザマだった。


「お前たちは軍規に違反し、風紀を乱したものたちだ。本来なら軍法会議にかけられる。しかし、チャンスが与えられた。

 今から、お前たちだけで孤島に進軍し、島民に盗まれた軍事物資の回収をしてもらう。これは最後のチャンスだ。生き残りをかけた決死の作戦デスゲームと知れ」

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