第八話 敵の敵はやっぱり敵だ、震えているな、ガッハッハッハ
そうそう、じいさん、伝吉さんだよな。あんただったよ。
辺見が暴れたのは伝吉さんの葬式だった。だからだよな、あんたは辺見に何回も殺されたって言ってたよな。辺見がやったのはそれに似た行為なんだな。あいつのせいであんたの葬儀は遅れに遅れたんだから。
だからだよな。辺見を殺すとしたら、じいさん、あんたに動機があるんだ。
うん? 俺、何か変なことを言ったか?
確かに矛盾したことを言っている気がする。ちょっと待て、整理するか。
……ダメだな。無理だ。深く考えることができない。
あ、あああ! あ、頭が悪い。なんなんだよ、思考力が落ちているぞ。
まあ、いい。話を進めよう。
辺見は吉野の体の中から湧いて出てきた。意味がわからんよな。俺もわからん。
だけど、好都合なことに、道の脇でへたり込んでいる俺には目を向けなかった。テロ
辺見の来た方向には吉野の死体が転がっている。さすがの寄見も怯んだのだろう。背中を見せて逃げ出した。
「くっ、なんだかよくわからんが、こっちに来い。俺の準備はお前なんかに負けない。
この一帯には地雷を仕掛けているんだ。一発でも踏めば、それでサヨウナラだ」
アホなのか、あいつは。俺にも聞こえるような大声でそんなことを宣っている。
そんなことを言ってちゃあ、追いかけてくるようなバカもが……。
ドゴーン
派手な爆発がした。轟音が響く。
まさか、ウソだろ……。俺は唖然としたね。
その爆発に巻き込まれ、寄見が吹き飛んでいた。自分で踏むとか、即落ち二コマかよ。
しかし、そのダメージは深刻なようで、寄見の腰から下は見事に吹き飛んでいた。とても笑えるような状況ではない。
幸か不幸か、息はあるようで、「あ、あ、あ」という唸りとも喘ぎともつかない、声が漏れ聞こえてくる。
その爆発を見届けた辺見は、くるりとこちらを向いた。俺の目と辺見の目が合ったのがわかる。その長方形のような瞳孔が歪んだ。
そして、ニタァーという嫌な笑顔を見せて、直線的にこちらに向かって走りだした。
「う、うわああああああ」
恐ろしかったよ。
辺見は一言もしゃべらず、犠牲者が出ると、気持ちの悪い笑顔だけ浮かべて、ターゲットを切り替えたんだ。
寄見は自爆のようなものだったとはいえ、それも辺見に追い詰められた故だろう。
俺は走る。辺見から逃れるために、無我夢中で。
いつしか、俺は道を外れ、森の中を突き進んでいた。草木や蔦が俺の身体に巻き付いてくる。
死の危険を振り払うように、植物を撥ね除けながら進んでいたが、やがて、はたと気づいた。どこに進んでいるというのだろう。
完全に道に迷っていた。
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