第二話 デスゲームニ行キテ帰リシコト

 これは寄見頑人よりみがんとから聞いたんだけどよ。俺は知ってんだ、デスゲームに参加する方法も、無事に帰る方法もな。

 ん? それが正しいかどうかだって?

 そりゃ、もちろん、証明済みよ。なんたって、俺は一回行って戻ってきてるんだ。今回、デスゲームに参加するのは二回目なんだよ。


 まずは参加する方法を教えておこうか。まあ、これは一つだけじゃあないのかもしれない。だけど、この中に心当たりある奴もいるんじゃないかな。

 頑人は仏間からデスゲームに参加することになった。やっぱ、こういうのは仏さんの影響があるみたいだな。

 加えるなら、オヤジは恨まれてたからなあ。直接手を下したことがあるかどうかは知らねぇが、オヤジのやった商売の影響で不幸な目に遭った奴は数が知れねぇし、オヤジの指示で殺された奴だっているんだ。そりゃあ、ほかの奴らよりも霊魂の多い仏間だったんだろうよ。


 え? 俺はどうなのかって?

 まあ、そんなことはいいじゃないか。俺は全くの潔癖だ。なんのやましいこともない。

 そう言えば、信じてくれるかい?


 そんなさ、霊魂の多い場所で血を流すんだよ。ああ、本当の血じゃなくてもいい。似たような体液だったら、それでもいいんだ。

 ただ、時間は決まっている。6時6分6秒だ。ぴったり、この時刻である必要があるんだ。あんたら、ここに来た時間を覚えているかい。そんな時間じゃなかったかな。

 んん? 違ったって? まあ、よく思い出してくれ。そんな感じの時間だったら、それでもいいんだ。

 まあ、これだけが参加する方法じゃないのかもな。


 それでさ、一回試してみたんだ。俺が、じゃないよ。子分の一人がさ。

 そしたらよ、本当にいなくなっちまったんだ。そいつがどうなったのか、俺は知らねぇ。おそらく、残念なことになったんだろうよ。書類の上では行方不明のままだけどな。


 正直、俺は怖かったよ。だけど、ビビってるとこを見せちゃあ、ヤクザは商売あがったりなんだ。子分たちにも示しがつかんしな。

 知らぬ間に、俺は追い込まれていた。子分が一人、行方を消しちまったんだからな。それも、みんなが見守る中で、だ。

 俺も儀式をやることになっちまったよ。ただ、自信満々な仕種を崩しちゃあいけねえ。子分を必ず救い出してくる、そう大見得を切ってしまった。


 仏間に入り、オヤジの遺影と目を合わせたよ。妙に雰囲気があったんだよなあ。オヤジは俺を睨みつけてきた。なぜだか、そう感じたのよ。

 時間を見計らうと、俺は手のひらを短刀で切った。ぽたぽたと血が流れた。不思議と痛みはあまり感じなかったなあ。

 だけどよ、妙なんだ。血が落ちた。確かに落ちたよ。けど、どこにも血痕ができなかった。どこか、得体のしれない空間にいつの間にか消えちまっているんだ。

 そして、その空間が次第に広がっていく。それがわかったんだ。


 それは、この世に未練を残した怨霊たちの仕業なのかもな。俺はいつの間にか、この世にはいなかった。

 そうだよ、ここは生者の世界じゃねぇんだ。かといって、死者の世界でもねぇ。狭間の領域ってやつさ。怨霊たちは俺たちが死者の世界に落ちてくるのを今か今かと待ちわびている。そんな場所なんだ。


 でもよ、幸いなことに俺はこの場所から帰る方法を知っている。その方法は……。

 おっと、まだ言わねぇほうがいいな。お前さんたちもさ、ここから元の生活に戻りたいんだったら、俺の言うことを聞くのが身のためだよ。

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