訓練


福ちゃんが嘴で顔をツンツンしてくれたおかげで今日も同じ時間に起きられた。


「今日もありがとね福ちゃん!」

福ちゃんにお礼をいいモフモフしてると変な声が聞こえた。


【主様ー、おはよう。

今日のテンプレを報告するわ

『仕事に遅刻しそうな青年がパンをかじった状態で女性にぶつかる』以上だわ】

野太い声でそう聞こえた。



「え?誰?」

俺が部屋の周りを見て声の主を探した。


【探してもいないわよ、主様の中にいるんだから。

主様のステータスを開いたらわかるわよ】

「『ステータス』」

言われた通りステータスを出す。


 名前:トム 年齢:15歳 性別:男


職業:テンプレ使いver2


Lv:19

HP:52/52

SP:60/60

STR:57

DEF:42

AGI:50

DEX:88

LUk:60


パッシブスキル

フラグ LV Max

テンプレサポート LV 1


アクティブスキル

フラグ LV 4

テンプレインストール LV 1

テンプレボックス   LV 1


新しいスキルが増えている、俺はテンプレサポートを触ってスキルの効果を調べる。

今日起きるであろうテンプレ内容をランダムで一つ教えてもらえる効果らしい。


「とういうことは、貴方はスキルってことですか?」

【そうよスキルよ。

1日に一回、我の気分でテンプレをおしえてあげるわ。

あと暇だから話しかけるわ】

「話しかけるとは?」

【言葉の通りよ、話し掛けるのよ】

「つまり俺の頭の中で勝手に話しかけてくるってことですか?」

「ご主人様?どうなさったんですか?」

いつの間にかレイスの姿に変わった福ちゃんに聞かれた。


「福ちゃん、なんかスキルが新しく発現して話しかけてくるんだよ」

「そうなのですか。

わたくしには全く聞こえませんが、たしかにご主人様の身体の中に何かいる気配はします」

福ちゃんはすごい剣幕で俺の体を凝視している。


【さすがに気配はわかるのね。

主様、この子に敵対する気がないことを伝えてくれないかしら】

「福ちゃん、なんか敵対はする気ないってさ。多分俺のスキルだし大丈夫だよ」

福ちゃんを安心させるために笑いかけて言う。



「そうですか、ご主人様が言うなら信じます。

ですがもしご主人様に危害を与えたら滅します」

福ちゃんが白く光って俺のスキルに言う。


【主様この子の波動を止めてほしいわ、少し苦しいのよ】

「福ちゃん!それを止めて!」

「申し訳ありません、ご迷惑をおかけ致しました」

そう言って光を止めてくれた。


【ありがとう主様、少しこの子と話すから身体をお借りるわ】

それを聞いて俺は意識を失った。





目を覚ますと1時間くらいしか経ってないらしい。

福ちゃんは小さい梟の状態で俺の腕の中で眠っていた。


「福ちゃん、福ちゃん、」

「ワッ」

起きた福ちゃんが返事をしてくれた。


「福ちゃんあの後どうなったのか聴きたいんだけど」

福ちゃんを見つめて尋ねる。

【あら、我に聞いたらすぐに答えられるわよ】

またあの声が聞こえたので、身体がびくって

なった。


レイスになった福ちゃんとスキルテンプレサポートと話し合いの結果

特に害がないことがわかった。

ただ、テンプレサポートを呼ぶ時に、テンちゃんと呼ぶこと強制された。




数日で、頭の中で話すテンちゃんとの会話に慣れた頃セリーさんに訓練所に呼ばれた。


【あら、貴方のお気に入りの女のところに行くのね】

【テンちゃんうるさい!お気に入りとかじゃないよ!】

【あら、素直じゃないわねー】

テンちゃんを適当にあしらいセリーさんがいるとこについた。


「セリーさんお待たせしました。

今日は誰もいませんし貸切にしたんですか?」

訓練所に誰もいないので聞いてみた。


「そうだよトムくん!

今日は、トムくんに特訓をしようと思って貸切にしてもらったんだ!」

「特訓ですか?」

「そう特訓だよ。

私は知ってるんだよ、トムくんがまだ冒険者になりたいって!

だからなれるように協力しようって!」

「協力ですか、でも戦闘職じゃない俺には無理ですよ」

俺は顔を俯いて答える。


「普通はそう思うよね。

でもね、トムくんみたいに戦闘職じゃなくても活躍した冒険者もいるんだよ。

武技という技を生み出し、それを使ってね。


今からその冒険者が開発した一子相伝の技をトムくんに教えます」

「そんな技を俺に教えてくれるんですか?

それに一子相伝ってことは1人しか教えることが出来ないのですよね?」

気が付いた俺はセリーさんに聞いた。


「そうだよ!

私の師匠は母様。

母様の許可は取ってあるよ。

もちろん、とても難しい技術だからトムくんが絶対に武技を使えるようになるとはかぎらないんよ。


でもトムくんがまた冒険者になる可能性を少しでも高めたくてさ。

迷惑かな?」

不安そうな顔で俺を見る。


「迷惑なんかじゃありません。

すごく嬉しいです。

よろしくお願いします」

セリーさんに頭を下げた。


「ならよかったよ!

武技はね、ひたすら練習するしかないの。

ただひたすらね。

見てて」

そう言ったセリーさんは緑のオーラに包まれた。

「せい!」

訓練所にある的が縦に真っ二つに切れた。


「これは飛燕って武技。

スキルは全く使ってないんだ」

切った的を指差し俺に説明してくれる。


「つまりスキルに頼らなくても攻撃の手段があるってことですね!」

「正解!だけど習得するには絶対に必要な物がある、

それは闘気っていう力を得ること。

今日はその力を習得するための方法を教えるために呼んだんだ」

胸を張りながらセリーさんは言った。


「じゃあまず片足が上に来るように組んで座る。

そして下にある足も上にあげてこんな感じにするんだ」

説明しながら座禅をするときにする姿勢をした。


「こうですか?」

「そうそう!トムくん身体柔らかいね!

私なんて、最初全然足が上がらなくて大変だったんだよ!


じゃあ次に手を開いて人差し指と親指で丸を作った後、右手を右膝に左手を左膝に手の甲をくっつけるように置く。


それで合ってるよ!

じゃあ次に息を深く吸い、吸った空気が顔から左腕、左足、右足、右腕、そして顔に循環しているイメージをしたあと、最後にゆっくり空気をはきだす。


やってみるから見ててね」

セリーさんは深く息を吸い、ゆっくり吐くと緑のオーラに包まれた。


「こんな感じ。

こんなふうにすぐに闘気がでるわけじゃないから焦らないでね。


あと最初は目をつぶった方がイメージしやすいよ。

じゃあ、最初だから少し短めにやってみよう」

「はい!セリー師匠!」

「師匠?

たしかに言われればそうだね。

じゃあ我が弟子トムよ、訓練を開始しよう!」

「はい!」

最初はセリー師匠の息遣いに合わせるように呼吸をし、慣れてきたら言われた通りイメージをするよう息を吸い、息を吐いた。


「はい!トムくん闘気習得の訓練はこれで終わりだよ。

暇をみつけてやってみてね。

やればやるほどイメージが頭に定着して、身体の中にある力が目覚めやすくなるから」

「わかりました、セリー師匠!」

「それはもういいよ、普通にセリーさんて呼んでよ。

なんか師匠って言われるとトムくんと距離を感じるし」

「そうですか?

まあセリーさんが言うなら訓練中もセリーさんって呼ばせてもらいます」

個人的には一子相伝の技を教えてもらうのだからきちんとしたかったけど、師匠本人がいうなら仕方がない。

訓練中は心の中でセリー師匠と呼ぼう。


「さて、貸切の時間が終わるまでもう一つの特訓を開始しよう」

「もう一つですか?」

俺が質問したあとセリー師匠は模擬戦用の武器がある場所に行き戻ってきた。


「そうもう一つ、剣の特訓さ」

そう言って刃が潰してある剣を渡してきた。


「剣ですか、、」

「そう、剣だよ。

トムくんもオーガ戦で気づいたと思うけど、やっぱり物理的な攻撃より斬撃による攻撃の方が弱点になる魔物が多いんだ。


トムくんが考えがあって棍棒を選んだと思うけど、魔物と戦うなら斬撃系の攻撃手段を持つべきだと思う。

本当は斧とかが動きが似てるからそれを教えてあげたいんだけど、私は剣しか使えないからさ。

それでもいいなら私の特訓を受けてみない?」

少し不安そうな顔で俺をみてくる。


「願ってもないことです!

セリーさんすごい嬉しいです!

ぜひお願いします!」

俺はテンションが上がり、二つの剣を持っているセリー師匠の両手を掴んで喜んだ。


戦闘職でもない俺に剣を教える人なんて普通はいない。

講師をしてくれた師匠でさえ、木の棍棒じゃなかったら合格をくれなかっただろう。

それだけ刃物がついている武器の扱いは難しいということだ。


「トムくん嬉しいのは分かったからさ、手を離してくれないと剣の特訓ができないよ」

「あっすいません、あまりにも嬉しすぎて暴走してしまいました」

セリー師匠に言われた通りに手を離し、少し距離も離れた。


「びっくりしたよもう。

じゃあトムくんこれを持って自由に打ち込んできてよ。

まずどのくらい動けるかみたいから」

「わかりました。でも少しだけ準備運動してもいいですか?」

「相変わらず準備に余念がないね。

私も少しだけ準備運動することにするよ」

セリー師匠に渡された木刀を置き、軽く体を動かすとセリー師匠も真似して体を動かす。



「セリーさんお待たせしました。

ではお願いします」



俺は始める前に思った通り一撃も入れられず、全力で打ち込みにいった俺は床に倒れ込んだ。

そしてセリーさんに言われた。


「んートムくん、長い付き合いになりそうだね」

「よろしくお願い、します」







全力で動いた結果、所々が筋肉痛で痛むのを我慢して家に帰った。

帰る途中は、テンちゃんに一撃もいれられなかったことを小馬鹿にされ精神的にも疲れた、まさに疲労困憊である。


寝る準備を終え、今日教えてもらった闘気習得の訓練をする。

じっとしているだけならできそうだったから。


「ふう、このぐらいでいいかな。

全然闘気なんてでる気がしないよ」

奇跡的に発動したらいいなーと考えているとレイス姿の福ちゃんに話しかけられた。


「ご主人様、フラグを使っては如何でしょうか?」

「フラグ?」

「ご主人様は認識していませんでしょうが、

アクティブスキルのフラグを使うと様々なことが起こっていたのです。

ですので、フラグを使い闘気習得の訓練をなさったら何か変化が起きる気がするのでございます」

福ちゃんが顔を近づけ、目に力を込めて言う。


【我もそう思うわ、どうせならやってみなさいよ】


「2人がそう言うならやってみるか。

『フラグ』」

スキルを発動し、訓練を始める。





翌日、闘気のオーラを纏った姿を、

セリー師匠に見せたら爆笑された。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る