職員
「ありがとうございました。
またのご利用をお待ちしています」
接客していた人が変な顔をしながら受付から離れていった。
「トムっちそれ商会のやつっす。
冒険者ギルドでそれはおかしいっすよ」
後ろからマロンさんに小声で話しかけられた。
「そうでした。
なかなか習慣が抜けなくて、すいません」
「まああながち間違いじゃないっすけど、
冒険者ギルドっすから、依頼内容や依頼中の怪我に気をつけるように言うのが普通っすよ。
それよりトムっちお昼休憩の時間っす。
うわー相変わらず触りごこち最高っす」
お昼休憩を伝えにきてくれたマロンさんは頭の上の福ちゃんを触っている。
ギルド職員のお願いにより仕事中も頭の上に福ちゃんはいて、受付嬢や女性冒険者にモフモフされている。
「トムっち、受付変わるから早くどいてほしいっす」
マロンさんに受付を譲ったあとギルド職員専用の休憩室に入り、福ちゃんと仲良くお昼ご飯を食べた。
そう、俺は冒険者ギルドに就職した。
就職した日を少し思い出した。
「トム、今日からお前もギルド職員だ。
お前はあいつのお気に入りだが、職員になったからには遠慮せずに仕事をふるからな」
「はい!与えられた仕事を一生懸命がんばります」
ギルドマスター室でミーナさんに元気よく返事をした。
「よろしい、では会議室に向かってくれ。
そこにお前の教育係が準備をして待っている。
場所はわかるか?」
「大丈夫です!冒険者時代の経験でこのギルド内は把握しています。
では、行ってまいります」
部屋を出て1階に下り、会議室に向かった。
会議室の扉を開けると冒険者登録した時に受付してくれたケモミミの受付嬢が紙の束を持ちながらこちらを見た。
「おーやっときたっすね!
初めましてではないけど、初めまして!
君の教育係のマロンっす!
よろしくっす!」
俺は受付をしてくれた時との違いに思考も身体も固まった。
「どうしたんすか?
早く部屋にはいってほしいっす!
今日覚えてもらうものがたくさんあるっすから時間がもったいないっすよ!」
「あっはい、すいません」
ようやく立ち直った俺は部屋の中に入った。
「とりあえずここに座ってスケジュール表に目をとおしてくれっす」
「はい」
指示された椅子に座り、ギルド職員になるための教育スケジュール表を見ながらチラチラとマロンさんを見た。
「チラチラとうちを見てどうしたんす?
あーそういうことっすね!
受付の時と今のうちの態度が違いすぎて戸惑ってるんすね!よく言われるっす!
でもトムっちはもう仕事仲間っすから、丁寧な態度はしないっすよ!
あとこの口調っすけど、親が建設関係の社長をやっているんす、そこの部下の人たちの真似をしていたら癖になってしまったんすよ。
直そうとしたんすけど、今はもうあきらめたっす。
まあそのうち慣れるっすから、気にしない方がいいっす」
「わかりました。気にしないようにします」
「じゃあこのスケジュールの通りに、仕事を覚えてもらうっす!
まずはギルド規約からっすね」
そう言ってマロンさんは資料を俺のいる机の前にだし、説明してくれた。
ちなみに資料は自作らしく、
マロンさんがいかに優秀なのかわかるくらいわかりやすかった。
その日覚える仕事を教えてもらったあと、次の日から福ちゃんを連れてくるように必死に頼まれた。
「ふう、ごちそうさま。
福ちゃんも満腹になった?」
「ワッ」
「それは良かったよ」
休憩時間が終わるまで福ちゃんをモフモフしいた。
時間になったので、さっき座っていた受付ではなく空いている受付に座った。
冒険者をまっていると見知った顔の冒険者が来た。
「ようトム!依頼を受けに来たぜ!」
「おうガンツ、どの依頼受けるか教えてくれ」
普通は丁寧な対応を求められるが、お互いに違和感があったので、いつも通りの態度で話すことにした、ガンツ限定で。
「Cランクの依頼で中央都市までの護衛だ」
「Cランクね、ちょっと待って」
ガンツを受付に待たせ、依頼達成書とその控が置いてある場所にいきそれを取って受付にもどった。
「はいガンツ、めんどくさいと思うけど依頼達成の報酬が出るのは、このギルドじゃないと無理だから気をつけてね」
「わかっている」
「あとガンツ、この依頼が達成したらCランクに昇格するよ!」
「本当か!ついにCランク!やはり才能があったんだな俺」
「あると思うよ、かなり早い速度での昇格だよ!よかったね」
「おう!では依頼行く前に準備を整えるからまたなトム、お土産期待してろよ!」
「気をつけてねー」
ガンツがギルドから出て行った。
ガンツ達のパーティーからミリメちゃんは抜けた。やはりちゃんと冒険者としてやっていくには、休みの日だけでは依頼についていけなかったみたいだ。
今はミリメちゃんと一緒に教会で働いていたソラさんが教会を辞めガンツのパーティーに入った。
多分ガンツに惚れている。
ギルドの仕事が終わったので家に福ちゃんと帰ってきた。
商会を辞めたので流石に商会寮にはいられないので、ミーナさんの紹介で家を借りた。
3LDKで1ヶ月の賃貸料が銀貨5枚は破格すぎた。
なぜこんなに安く借りられるのかミーナさんに聞くと、領主の秘密基地の一つだそうだ。
福ちゃんとお風呂に入り、夜ご飯を食べて
ベッドに座り、また日課になったステータスを見る。
「『ステータス』」
『
名前:トム 年齢:15歳 性別:男
職業:テンプレ使いver2
Lv:18
HP:52/52
SP:60/60
STR:55
DEF:42
AGI:50
DEX:88
LUk:60
パッシブスキル
フラグ LV Max
アクティブスキル
フラグ LV 4
テンプレインストール LV 1
テンプレボックス LV 1
』
「今日は特に変わってないね」
福ちゃんを触りながら確認した。
福ちゃん曰く久しぶりにあった俺に抱きしめられた時、
『追従するもの』というスキルが発動して、福ちゃんの経験値が俺に渡されたらしい。
色々実験してみた結果、夜によく起きることがわかった。
ちなみに、初めて『追従するもの』が発動したのは名前をつけてもらった時らしい。
おそらくテイムみたいなものだと思う。
テンプレボックスはその経験値をもらった時に発現したスキル。
テンプレに関係する無機物を入れることができる空間を得る効果があるらしい。
今のところ福ちゃんが拾ってきた石しか入っていない。
相変わらず意味がわからん。
あとテンプレインストールも使ってみてはいるんだけど、『変顔』とか『蛙の鳴き声』とか戦闘に使えないスキルしかでない。
「はぁ、寝るから福ちゃん今日もモフモフよろしくね!」
今日も福ちゃんのモフモフに癒されながら眠った。
眠った瞬間に新しいスキルが発現しているのを知らずにスヤスヤと。
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