薬草


「ふぅ。流石にてごわかった」

手や顔に切り傷をつけた俺は依頼を完了したので依頼達成書を持って冒険者ギルドに向かっている。


俺はまだ街の外に出る依頼を受けていない。

ステフさんに言った通りしっかりと準備するつもりだからだ、つまり今はまだ準備不足。


できればDランクの依頼を受けられるようになる、講師からもらえる許可証をもらってから街の外に出ようと思っている。

通称Dランク訓練。



冒険者ギルドに着いた、もう特に緊張もなく慣れた手つきで扉を開けると怒鳴り声が聞こえた。


「おい!せっかく小遣い稼ぎに薬草取ってきてやったのに依頼主が受け取らねーぞ!

どうなってんだ!」

とバッテスが受付嬢の人に文句を言っていた。


「バッテス様、この依頼書に書かれています通り出来るだけ根っこを傷つけていない状態で納品して欲しいとなっています。

バッテス様がお持ちになった薬草は萎れてはいなものの、とても多くの傷がついております。ですのでご依頼された薬草とはいえません」

受付嬢さんは大柄の男性に怒鳴られても、おくすることなく淡々と答える。


「はあ?萎れてなきゃ別にいいだろ!

前にいたとこはこれで大丈夫だったんだよ!

薬草なんざ萎れてなきゃどれも同じだろ!」

「申し訳ありませんがそれを決めるのは、ご依頼主様です。

当ギルドはご依頼を斡旋しているだけですので、依頼内容に口を出すことはできません。

そんなことより、このままご依頼を達成できなければ罰則がございますが、

よろしいのですか?」

「くそっ」

バッテスは持っていた薬草を受付嬢に投げつけた後、入り口にいる俺を突き飛ばしギルドから出て行った。


「坊主大丈夫か?ほら手につかまれ」

「ありがとうございます」

突き飛ばされギルドの中で倒れていた俺にどこかで見たことがある男性が手を差し伸べてくれた。


「たくあの野郎!よそから来たくせにでかい態度とりやがって!

ここにはここの流儀があるんだよ!


坊主あいつには関わるなよ?」

「そうですね。あの人初めて見た時も冒険者登録しに来た人に絡んでましたし、

関わらないよう気をつけます」

「そうしろそうしろ。

そうだ俺の名前はゴンザ!

何かされたら俺に言え、これでもBランクの冒険者だ!」

ゴンザさんはドヤ顔で言ってきた。


「Bランクですか!すごいですね!

では何かあったらお願いします」

「素直でよろしい!


冒険者ギルドに用があるんだろ、ほらいきな」

「はい!

ゴンザさん、手を差し伸べてくれてありがとうございました」

ゴンザさんにお礼言った後、受付に向かった。



「すいません依頼達成書を持ってきました」

バッテスが薬草を投げたせいで掃除をしている受付ではなくその隣の受付で言った。


「達成書の確認だね!

机の上に出してよ」

水色の髪をポニーテールにし、赤い金属製の胸当てや手甲などを身につけた女の人が誰もいなかった受付に受付嬢として来た。


「えーと受付嬢さんですか?」

「受付嬢?君は不思議な言い方をするね!

確かにうちの受付にいる職員は美人揃いだからお嬢様って言われても間違いはないけど!


後この格好だけど、私は冒険者兼ギルド職員ってやつなんだ。

冒険者相手にはいつもこんな口調でしゃべっているから丁寧語は勘弁してね。


でもれっきとしたギルドの人だから安心して達成書をだしなよ」

周りが誰も彼女を止めないので本当にギルドの職員さんだと思ったので、依頼達成書を受付の机の上に置いた。


「えーと

Fランクの依頼ね。確かここに、、、見つけた!

依頼主はキャシーさんで、君はトムくんだね。

依頼は逃げた猫の捕獲、うんサインもきちんとある。

じゃあ達成報酬の銅貨8枚だよ」

「ありがとうございます」

冒険者兼ギルド職員さんは受付にある控を見ながら確認して報酬を渡してくれた。


「報酬を受け取るときにお礼を言うなんて、トムくんは変わっているね」

お金をもらう時つい癖でお礼を言ってしまった。

冒険者は基本荒くれ者なので報酬などを受け取るときにお礼なんて言わない。


「えっと商会で働いているのでお礼をすることが癖になっているんです。


それよりDランク訓練の予約を取りたいんですけど」

「Dランク訓練ね、明後日が一番近いかな。

どうする?」

「はい!よろしくお願いします」

「じゃあ予約入れとくよ!

昼の2時からだから遅れないでね」

「わかりました、気をつけます!

じゃあ用事が終わったので帰ることにします!ありがとうございました」

「ふふ、こちらこそありがとうございました」

受付をしてくれたポニーテールの女性にお礼をしたら何故か笑われてお礼を言われた。







明後日になりDランク訓練を受けるため冒険者ギルドの訓練所に来た。

訓練を受けるのは俺含めた12人。

そして講師は


バッテス。


1人ずつバッテスと訓練する。

しかしそれは訓練とはいえず、バッテスが木刀で痛めつけいくだけのもの。

しかもすぐに倒れないように長引かせて。

そして俺の一つ前人の番になった。


「おら、次の奴さっさと来い。

たくっ罰則とはいえなんでこんなザコども相手をしなきゃいけねーんだよ。

ほらさっさとかかってこい」

バッテスが木刀を肩に置き、一つ前の人に向かって手のひらを上にして手招きした。


一つ前の人がバッテスに切りかかりバッテスが交わし木刀で叩く。

それが繰り返され、最後にはお腹を蹴られた一つ前の人は持っていた剣を離し、吹っ飛ばされた。


「弱すぎだ!冒険者なんてやめちまえ!

くそ、お前を見てるとあのヒョロイ奴を思い出してさらにイライラしやがる」

そう言ったバッテスは一つ前の人に近すぎ止めとばかりに木刀を振り上げ一つ前の人に木刀を当てようとする。


あまりに急な動きだったのでここからじゃ間に合わない、そう思った俺はスキルを使う。

「『フラグ』」

スキルが発動すると木刀は当たる前に女性に

止められていた。

水色ポニーテールの女性だ。


「バッテス!あなた何をしているの!

無防備な相手に攻撃するなんてなに考えてるのよ!」

「うるせーな、今日は俺様が講師なんだ!

訓練内容は俺が決める!」

「そんなの許されるわけないでしょ!

訓練内容は冒険者ギルドで決まっているのよ」

「ちっじゃあ後はてめえがやれよ」

そう言って木刀から手を離し訓練所から出て行った。


「まったく効率主義の副ギルめ!

なんて奴に講師任せてるのよ!


大丈夫だった?ほら」

木刀を持っていない手を差し伸べて一つ前の人が掴み立ち上がった。


「みんなごめんね。

これは完全にギルド側のミス、本当にごめんなさい。

訓練のことだけど、また後日ちゃんとした講師をつけて行うから安心して。

あと医務室で払う治療代もギルドが出すから。


この中でまだやってない人いる?」

そう聞かれたので最後の1人だった俺は手を挙げた。


「トムくんだけなんだね、

じゃあ他のみんなは医務室に行って怪我を治してきて。

ちなみに今日の訓練は一応終わりだからね」

そう言われた俺以外の人たちは訓練所を出て行った。


「じゃあトムくん軽く打ち合おうか。

ん?武器が棍棒なんて、やっぱり変わっているね君」

俺が棍棒を前にだすと、ポニーテールの彼女は笑いながら言った。


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