ドワーフ
「こんにちはステフさん」
「こんにちはトムくん。
あれ?発注はまだしてないはずだわ?」
顎に握った手を当てて頭を傾げるステフさん。
「はい!今日は納品ではなく、武器を買いに来ました!」
「トム君が武器?」
「副業で冒険者をやっているんです。
それで自分の武器が必要になったんですよ」
「まあトム君が冒険者なんて武器が必要ってことは街の外にでるのよね、外は危ないわよ?」
「大丈夫です!しっかり訓練してから街の外に出るつもりですので!」
「トム君の人生だし強く言えないけど、絶対に危なくなったら逃げるのよ」
「はい!」
「よろしい。
ではお客様、どのような武器をお求めでしょうか」
俺の元気な返事に納得したステフさんは仕事モードに変わった。
商会の仕事をしながらFランクの依頼をちょこちょことやっていたら、この前Eランクに昇格した。
Eランクからの依頼は街の外にあるいろんな薬草の採集が主である。
それも魔物の森と言われる森の前によく生えているらしい。
街にある神木のお陰で強い魔物は表に出てこないけど、とても弱い魔物はたまにでてくるのでしっかりそれに備えないといけない。
「ステフさん棍棒ってあります?
できれば木製がいいです」
「棍棒?
普通冒険者って剣とか斧とかじゃないの?」
疑問に思ったステフさんが聞いてきた。
「俺もできればそうしたいんですけど、刃物って職業が合ってなければすぐにうまく使えないですし。
初めて持つ武器だから間違って自分を切ったりしそうだから危ないって思うんですよ。
でも棍棒なら比較的簡単に扱えると思ったんです!」
「そういうものかしらね。
棍棒ねーちょっと場所が分からないから聞いてくるわね」
そう言ってステフさんは店の奥ににあるカンカンとなる部屋に入っていった。
少し待ってるとその部屋からステフさんと身長が低く髭を生やし筋肉がすごいお爺さんが出てきた。
「ようトム坊、遂に武器を持つようになるか。しかも棍棒なんて変わってるな!」
「こんにちはモグラさん!
棍棒には理由があって」
「言わんでもいいわ。
トム坊が賢いのはわかってるしな、それなりの理由があるんだろ。
それで棍棒なんだが、うちの店にあるのはこれしかない」
モグラさんは手に持った棍棒を見せてくる。
「棍棒の注文なんてほとんどないからな。
トム坊が急ぎでなければ儂が作ってもいいが、今は少し忙しいから一週間後ってところだな」
「少し振ってみてもいいですか」
「ああ、店の前でならいいぞ」
棍棒を渡してもらい店の前にでて、両手で棍棒持ち少しの間振り下ろしたり横に振ってみたりした。
満足したので2人のところに戻った。
「モグラさん、重さもちょうどいいし持つところもぴったりです!
これを買います!」
「そうかそうか、ちょっと待ってろ」
モグラさんは先程の奥の部屋に入り何かを持って戻ってきた。
「トム坊ついでにこれもタダで付けてやる。
その棍棒を作ったやつがセットで作ったもんだ。
使い方はなまず背中にそいつをつける、んで棍棒入れるときは縦に入れて抜くときは背中から前に振り下ろす動作をすると装置が起動して外れるようになっている。
やってみな」
モグラさんに指示された通りやってみるとすんなり入るし簡単に抜けた。
「抜いた後自動で元に戻るんなんてすごいですね。
これ結構いいやつなんじゃないですか?」
「装置としてはなかなか上等なもんだが、その棍棒にしか使えないから気にすんな。
値段だが銀貨1枚でいいぞ」
モグラさんは破格の値段を言い出した。
「安すぎないですか?
木製とはいえちゃんとした作りですし、この装置付きですよね?
もし商会に持ち込まれたら、銀貨4枚で買いますよ」
「大袈裟だな、棍棒がそんな高いわけないだろ。
それにそれを作ったやつがその値段設定したんだよ。
気にせず買ってけ、どうせ今から防具とか買うんだろ?
安ければそれでいいじゃねえか」
「そうよトム君、防具にはお金をかけないと。
店長もこう言ってるんだし、この値段で買って行きなさい」
モグラさんとステフさんに言われたので折れることにした。
「わかりました。では買わせていただきます」
「はい、ちょうどいただきますね」
銀貨1枚を鞄から出しステフさんに渡した。
「トム坊これからも棍棒使っていくのか?」
「その予定です」
「んじゃあ何本か棍棒作っておくか。
次からは儂が作るから銀貨1枚をとはいかんがな!
トム坊とステフ、儂は仕事に戻る」
笑いながらモグラさんは自分の仕事場に戻っていった。
「トム君、本当に気をつけるのよ。
決して慢心してはダメ、あと常に周りに気を配りなさいね!」
「心配してくれてありがとうステフさん。
十分に準備しから行くから大丈夫ですよ!
じゃあ、防具買いに行くので失礼します」
ステフさんに別れを告げて店の入り口に向かうと冒険者と思われる男性とすれ違った。
ステフさんは子供の手がかからなくなったので仕事復帰するために商会で少し働いていた。
その時に商会に入ってきた俺にいろいろ気を遣ってくれ、たまにご飯を作ってくれた。
ステフさんの旦那さんは冒険者で、すでに亡くなっている。
だからステフさんは俺をすごく心配したんだろう。
ステフさんにあまり心配させないために、いい防具を買いに行こう!
ちょっと高めの防具を買い、商会の寮に帰った。
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