冒険者


「聞いているのかトム」

「聞いてる聞いてる」

座り心地の悪い馬車に乗せられながら、ガンツがこれから冒険者になりどう活躍するかを淡々と聞かせられている。

一緒に乗っている冒険者さん達の生暖かい視線を感じながら。

比較的街に行く道は安全であるのだが、子供達が12人乗っているので念のために雇ったようだ。



適当に相槌をしていると馬車が止まった。

街に着くにはまだ早いし休憩でもするのかな?


「おい、仕事だ」

布で仕切られて見えなくなっている、御者さんがいる場所から聞こえ、その声を聞いた冒険者さんは、1人を残し3人が仕切りに向かい布を開けて表に出ていった。


外から金属と金属がぶつかる音が聞こえる、

少し嫌な予感がする。


「ゴーゼス!お前も来い!こいつら強い」

焦った声で叫んでる声を聞いて残っていた冒険者さんも表に出て行った。


しばらくして音やみ、布が開いた。


「ようガキども」

スキンヘッドで顔中が傷だらけの男が俺達に言った。


「おい女、占え」

「は、はい」

スキンヘッドの男がそういうと、黒いワンピース姿に、水晶みたいなものを両手で持った女の人が出てきた。


「『テン』」

女の人が僕達の方に水晶を向けそう言うと水晶が光、少し経つと光がおさまっていった。


「あ、あの子みたいです」

「あのガキか」

女の人が俺を指差し、それを確認したスキンヘッドの男は俺の前に来た。


「おいガキステータスを見せろ」

「え?」

「死にたくなけりゃさっさとステータス見せろって言ってんだよ」

「ス、『ステータスオープン』」

もちろん死にたくないのでステータスを見せた。


「テンプレ使い?ガキこれはなんだ?」

「俺にもわからないです」

どう説明すればいいかわからないのでこう答えた。


「かぁー!珍しい職業って言うからわざわざ来てみればハズレかよー

ほんと使えねー女だな」

「ご、ごめんなさい」

「まあいいわ、この前アタリ引いたからな。

特別に許してやる。

よし野郎どもいつもと同じように魔物にやられたように馬車を細工しろ」

どうやら俺は期待外れだったらしくスキンヘッドの男は喋りながら表に出ていき、女の人もついていった。

そして、入る時に使った馬車の後ろのドアが開いた。


「おいガキども外へ出ろ、おかしな真似したら、ただじゃおかないからな」

ドアの前に、頭にバンダナをつけた男が6人立っている。


大人しく外へ出ると、獣の牙や爪を模した道具を持ち、馬車に傷をつけていらのが見えた。


「おいテッド、生贄はあのガキだ」

「へいお頭」

スキンヘッド命令されたバンダナの男は、さっき見た道具を持って近づいてき。

「茶色頭のガキ今からこの道具を使って、お前を殺す。死にたくなったら逃げろ」

そう告げた。


向かってきたので俺は逃げ出す。

バンダナの男は、ギリギリ逃げられる速さで追いかけてきながら、道具で痛めつけてくる。

きっとこのままじゃ本当殺される。

今、俺ができるのはこれだけだ。

「『フラグ』『フラグ』『フラグ』『フラグ』『フラグ』『フラグ』」

「何をぶつぶつ言ってんだ?

そういえばもう頃合いだな、あばよ」

俺を追い越し道具を振り下ろそうとしたバンダナの男は道の脇に生えている木に衝突していた。


「遅くなってごめんね。

今治してあげるよ」

黒い髪と黒い目をした青年が反対側の木の影から出てきた。

「『ヒール』これで大丈夫かな。

僕は今から残りの盗賊をやっつけてくるから、ゆっくり休んでて。後で迎えにくるよ」

体を治してくれた青年は次の瞬間には姿がなく。

緊張の糸が切れ、俺は地面に倒れ込んだ。

「助かったー」





しばらくすると本当に迎えに来てくれてみんなと合流できた。

「うーん馬車は流石に直せないなー。馬もいないし。

自前の物を使いますか。


召喚サモン』」

灰色の馬が二匹と俺達が乗ってた馬車よりひと回りでかい馬車が現れる。


「すげー!馬車を召喚したよ!

トムあの人Sランク冒険者なんだってよ!」

「Sランク冒険者!?」

「そうなんだよ!俺達を助けに来た時なんてすごいかっこ良かった!

一瞬で現れて指パッチンしたらあそこにいる女の人以外が倒れたんだぜ!

きっとすごいスキル使ったに決まってる!

トムもそう思うだろ」

「いや見てないからわからないし、でもすごい人だと思うよ」

興奮が冷めていないガンツが身振り手振りでその時の状況を語ってくる。


「さあみんな、この馬車に乗って街に行こうか。

大丈夫。この馬車の中は快適だから安心して」

最後にウインクした青年は俺達を誘導し馬車の中へ入れた。

水晶を持った女の人も一緒に来るみたい。



本当に快適だった、馬車の中は見た目の3倍くらいの大きさで、台所やトイレが完備されている。しかも御者無しで動くらしい。

それを召喚した青年はガンツに質問攻めにあっている。


それを見ながら。

ガンツの話を思い出し、やっぱり冒険者やりたいなーって思った。

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