盗賊


家に帰ると領主がいた。


「領主様先程ぶりです。

何故私の家にいるんですか?」

「トムか、先程の用事がこの家にあったのでな。

まあ今終わったんだかな、シシリア嬢でわな。後旦那さんがいない時に訪ねたことは内緒にしてくれ」

そう言って領主が帰っていった。


「母さん、領主様何しに来たの?」

「トムの将来について聞いてきたわ。

あんまり気にしなくても大丈夫よ。

さっお昼ごはん作るから手伝ってね」

「はーい」


今日の昼ごはんも美味しかった。

もちろん食器は俺が洗った。







翌日ライト家族とナミ家族は、王都に旅立った。


それからこの村は少し変わった。

月一でライト手紙が来る俺に対して女の子達から鋭い視線を受けたり。

ライトが居なくなったのをきっかけに長男組が女の子にアタックしてたり。


あとファンクラブは解散した。

ライトが居なくなったからな。

だが手紙の内容は常に公開させられている。



俺には大きな変化が起きた。


白梟の福ちゃんだ。


夏のある日。

夏野菜のナスに似たテッドを収穫していると、羽ばたき音が聞こえたのでその方角を見ると近くもなく遠くもなくそんな場所に白い梟がいた。


「可愛い。

けど昼間に梟とは珍しい。

ん?

ん?

ん?」

梟は俺の持っているテッドを動かすとそれの動きに合わせるようにテッドから目線を外さなかった。


「これ食べたいのかな?猛禽類ってナスたべるっけ?

とりあえずあげてみようかな?

食べれないならポイすると思うし」

梟と俺の中間近くに投げてみると、梟はナスを上手に足で掴み、飛んでいった。


それから色んなものを餌付けしていったら、

触れるようになった。

そして福と名づけ福ちゃんと呼んだ。

福くんと言ったら威嚇されたので、福ちゃんは多分女の子なのだろう。


福ちゃんはとても賢く俺が言ってることが少しわかる。

たまに変な文字を書くけど。

あと俺が1人でいる時に呼ぶと来てくれる。



「福ちゃーん」

今日もいつも会っていた場所で福ちゃんを呼ぶ。


大きな体をした福ちゃんはすぐに飛んできて俺の前に来た。


「ワッ」

「催促しなくてもちゃんとあげるよー。

今日は特別に干し肉多めだよー」

福ちゃんの前に色んな食材を入れた皿を置いた。

福ちゃんは、上手に足を使いながら食べてる。可愛い。


可愛い?俺はそう思うが初めて見たら流石に怖いと思う。

出会ったときは普通の梟のサイズだったのに今は鍬と同じくらいだから、1メートルくらいの大きさ。

でかすぎるけど、その分モフモフがやばい。

そんな福ちゃんに今日はお別れを伝えにきた。


「ワッ」

「お粗末様でした。

福ちゃん前に言って通り。

俺、街に行かなきゃ行けないんだ。

だからこれからさ、ご飯あげられないんだ」

「、、、」

福ちゃんは顔を傾げて見つめてくる。


「流石にクルル兄の紹介で行く商会に、福ちゃんみたいなでかい梟飼いたいなんて言えないよ。

ごめんね」

それを聞いた福ちゃんは飛び去っていった。


さらばモフモフよ。


俺は家に帰り身だしなみを整え、村の中心にある神木に向かった。


神木は女神崇拝の教会が植えた木。

効果は絶大で、村の周辺に魔物を寄せ付けない。


俺は集合場所に近づくと、街に行く連中とその親。もちろん俺の両親もいる。

明らかにおかしいやつに話しかけた。


「ガンツ?長男のお前がなんでここにいんの?

誰か見送りに来たのか?」

「なんだライトの腰巾着だったトムかよ!

お前には関係ないだろ?」

「それもそうだな、じゃ」

そう言ったら腕を掴まれた。


「ライトが居ないからってビビるなよ腰巾着。

特別教えてやろう。

俺はな街に行き。

冒険者になる。

家族の中で唯一戦闘職が出た。

その時に確信してたね冒険者になれと!」

ドヤ顔しながらガッツポーズをする


「そっか、ガンツならすごい冒険者になると思うよ」

棒読みでガンツに伝えた。


「そうかやっぱわかるかこの溢れ出る力が!

腰巾着と言ってすまない。

まさか自分以外に分かるとは思わなかったんだ。


そういえば前にトムも冒険者になると言っていたな。

どうだパーティーを組まないか」

「遠慮するよ、あいにく戦闘職じゃなくてな」

「気が向いたら言ってくれ。

俺の力を気づいた男だ、ぜひパーティーに欲しい。

しかし今は諦めよう。


ん?どうやら馬車が来たようだ」


どうやら馬車が来たお別れの時間のようだ。


前日に、街へ野菜を売りにいった父さんとアル兄はギリギリ間に合い俺との別れの場にいた。


「父さん母さんアル兄。

頑張ってきます。

とりあえずアル兄と父さん泣きすぎ。

母さん、ほんとに大丈夫?」

「大丈夫よ、気にせずにしっかり学んできなさい。」

泣きすぎてる父と兄を無視して母さんは俺を激励した。






そして、馬車は盗賊に出会いましたとさ。

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