約束


室内はシーンとしている。

俺は領主を掴んでる手を見ながら冷や汗をかいている。


やらかしたー。母さんを馬鹿にされた時からいい印象を持ってなかったとはいえ、この程度でキレてしまうとは。

しかも領主の胸ぐらを掴んでしまうとは。

でも母さんの知り合いだしワンチャンいけるか?


いや無理だろ。土下座でどうにかならないかな?


「ガッハッハッハ!

まさか私の胸ぐらを掴み、喧嘩売ってるのかと言われるとはな!

さすがはシシリア嬢達の息子、大した胆力だな!」

「えっと、、、ありがとうございます?」

「先程言った通り罰することはしない。

だがその手は離してほしい。

私の騎士が殺気立っている」

「あっすいません」

俺は言われた通り手を離し元の席に戻り座った。領主様の部下に睨まれながら。


「トム、君が友達思いなのは理解した。

変な聞き方をしてすまないね、一応勇者と知っている者が信用できないと困るからな」

「いえ、言いたいことはわかります。

俺、じゃなくて私も感情的になり申し訳ありません」

領主に向かって土下座した。


「頭を上げなさい。

気にしてない。だが私でなければ大事になった可能性もある。

これからは気を付けなさい」

「はい!肝に命じます」

座りながら敬礼した。


「ふむ。

ライト殿は勇者として相応しくなるよう王都で教育受けることになる。


トム、君も共に王都に行かないか?」

領主は顎髭を右手で触りながらそう言った。


「それはいいね!トム一緒に行こうよ!」

ライトは嬉しそうに言った。


「うーん。ライト悪い一緒にはいけないわ。


領主様。大変ありがたい申し出ではありますが、両親が私のためを思って考えてくれた

計画があります。

今の私はその道に進みたいと思っていま

すので、お断りさせてもらいます。

それにきっと一緒に行ってしまったら、


ライトと仲違いしてしまう気がしますので」

領主に頭を下げたながら伝えた。


「仲違いなんてあるわけないじゃない!

僕達はずっと友達だってトムいったじゃん!」

「落ち着けライト。きっとライトはこれからも変わらないと思う。

でも俺は変わってしまうかもしれない。


ライトは勇者だ。一緒に行けば知らされている人たちには比べられるし俺自身も比べてしまう。


そんな中きっと俺は嫉妬するし、不甲斐ない自分自身を責め、嫉妬に狂った俺はライトお前を遠ざける。

自分が傷つきたくないから。


ごめんなライト俺はそんな強い人間じゃないよ」

申し訳ない顔してライトを見た。


「比べられるか、、確かにそうだな。

トムすまないそこまで考えが至らなかった。


ライト殿にも期待をさせたしまったな。

2人の友情を守るため、納得してくれないか?」

「はい」

ライトは納得してない顔して返事した。


「ライト!そんな顔すんなよ、確かに王都に行ったらしばらく会えないかもしれないが、

一生会えないわけじゃないし、手紙でやり取りくらいできるだろ!


できますよね領主様?」

「ああ、中身は精査されるだろうが大丈夫だろう。

国王陛下にも私から進言しておこう」

「だそうだ!それに王都にはあの子も行くし寂しくないだろ!」

「あの子?まさか聖女のことも聞いているか?」

領主はびっくりした顔をして聞いてきた。


「えっライト話してないの?

領主様、俺が一番最初に聞きました」

「トム、君は聖」

「領主様それは先程やりました。

もちろん利用もしませんし、恩恵を得たいと望んでいません」

「私の言葉を遮るとは、さすがはシシリア嬢達の息子だ」

「領主様それも先程聞きました」

笑いながら言ってる領主に俺はつっこんだ。


「すまない、君との会話は面白くてな。

だが少しだけ用事ができた、皆少し席を外す。


トム、ライト達は明日この村を出る。

わかるな?」

「はい、わかっております」

返事を聞き終えた領主は部屋から出て行った。


「ライト行くぞ」

「うん。村長、お父さんお母さん行ってくるね」

俺達は部屋をでた。





「トム、部屋に勝手に入っていいの?」

「ああ大丈夫だ、むしろ後で感謝してもらえる」

副会長の部屋に俺達は入った。


「それで、さっきの話納得してないんだろ?」

「うん、やっぱり一緒に行けるなら行きたいなーって」

「俺も王都って場所には興味あるし、行ってみたい」

「じゃあ一緒に行こうよ」

「そう言ってくれるのは嬉しいが、さっき言った理由もあるしやめとくよ。


それにさ、行くなら自分の力で行くよ。

誰かのおまけじゃなくてさ。


そうじゃないと俺の人生じゃない」

副会長のベットに座ってるライトに伝えた。

喜べ副会長。


「ふう、、、、。

残念だけど諦めるよ。

トムにはトムの考えがあるんだもんね。


でも王都に絶対に来てね」

「多分な」

「トム!」

ベットから立ち上がりライトが睨みつけてくる。


「いやそこはしょうがないだろー。

王都に行くにも金がかかるし、王都滞在するにも大金かかるんだぞ。

絶対は無理だ!」

「じゃあ、その金は僕が払うよ!」

「だからそういうの嫌って言っただろ!

たく、前向きに考えとくから大人しく王都で待っとけ」

手をヒラヒラさせながらライトに言った。


「ははーん。前向きねー。


じゃあ大人しく待ってることにするよ」

「ようやく納得したか。

んじゃライトお前に仕事を与える」

「何?」

「ちょっと待ってね」

副会長の部屋に置いてある貴重な紙に女の子の名前を書きまくった。


「ライトこの紙に書いた女の子に今すぐ会ってこい。そして王都に行くことを話してこい」

「なんで?」

「いいから言う通りにしろ。

もししないなら、



手紙を返さない」

「わかった!んじゃ行ってくるね」

紙を奪うように取ったライトは走っていった。


「よし、帰るか」

村長とライトの両親に挨拶して家路についた。



この後副会長に感謝されたが、勝手に乙女の部屋に入ったのでビンタを食らった。

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