第28話 『招かれざる客』大剣士編完

〜前回までのあらすじ〜


 2023年の夏


 高校2年生の橘葉日子(パピコ)は、左半身麻痺で入院していた。

 そこに突然あらわれた雑巾男グリースに、自分の国を救ってくれとお願いされてしまう。

 その国へと行く事になったパピコ、連れらてきた世界は、昔読んだ事のある絵本の世界そのものだった。


 これは、最弱女子高生パピコが仲間と共に世界を救う物語である。



 現在、パピコとグリースは、仲間にすべきアスロンを追い、デック島へ、そこはバルクロス一派が牛耳っている島だった。


 パピコ達との出会いで、アスロンはバルクロス一派に狙われてる事に、しかし、アスロンは、バルクロス一派と向かい合う事はせず、亡くなった妻の両親に会うべきフフリンの街きた。 


 そこにアスロンを、追ってきたバルクロス一派をアスロンは、軽々倒したが、妻の両親との再会をまだ果たしていなかった。






【パン屋の前】



「目を覚しましたか?」


 アスロンが目を覚ました、キャラメル箱に身を包んだ夫婦に向かって言った。


「アスロンくん」


 夫婦の男性が、アスロンに気づくとそう言った。彼の名前は、レナードと言い、その横にいる女性は、クレアと言った。



「お久しぶりです」



 アスロンは、その言葉の感じ夫婦に亡くなった妻キャメロンと両親への敬意が感じられた。




【壊れた伝説と謎の伝説】


 崖の下、すぐそこには波がしぶきをあげて何度もおしよせていた。


 そんな場所でパピコとグリースは、粉々に砕けた笛について話しをしていた。


「でもこんな物でも持っていれば役に立つたかも」


 グリースが言った。


「いや、これはない方が人の為よ」


 パピコは、ぽつりと呟いた。


「確かにオークの力を借りるなんて悪っぽいよな」


「そういえば、伝説のものといえば、叡智の箱という箱というのがこの世にあるらしい、なんでもそれは、人の願いをなんでも叶えるという箱だ」


 パピコは、ダナンの丘でのグラビトンの事を思い出していた。


 私が身体を動かす言葉ができたのは、もしかしたらグラビトンという植物のおかげだったかもしれない。


(なんでも願いが叶う箱、、)


「確かにそんな箱があれば、とても良い物に思えるけど、それは同時に何か恐ろしい物を生み出してしまう気がする」



「ああ、パピコみたいに思う奴もいるよ、噂で聞いた事があるんだけど、その箱を破壊する為に生涯をささげる一族もいるくらいだ」


 グリースは、なにやら誇らしい感じだった。


「もしかして、グリースは笛を落として壊した事を良い事したと思っている?」


「いやぁ〜まぁ、なんともうしますかね」


 グリースは、顔を赤らめヘラヘラしだした。


 パピコは、グリースの言葉を軽く無視して、粉々になったドーマの笛が風に飛ばされてるのをただみていた。



 その飛ばされた笛の破片は、海の彼方に消えていった。


 それを見つめていたパピコは、なぜか自分が以前にさっきグリースがいっていた”叡智の箱〟に出会っている気がした。


 


【決別】


〜回想〜


 ある日、キャメロンの両親は、魔女によってキャラメル箱姿のイタサレにされてしまった。


 それからのレナードは、今までやっていた銀行を解雇された。しかし、レナードは昔からの夢だったパン屋を始めた。


 しかし、当然ながらイタサレになった者が、商売を成功させるにはこの国に住む人々の偏見という歪んだものがそれを許さなかった。


 レナードは、そんな事を思い出していた。そして、目の前にいる長髪の大男にいた。



「今日は帰ってくれないか?アスロンくん」



「わかりました」



 イタサレになった今でもレナードは、アスロンを許せないでいた。


(自分の娘を奪った男がいま目の前にいる)


 レナードは、亡くなった娘の事と向き合う事が、できなかった。


 それが、アスロンへの怒りになっている事は、自分でもわかったがどうする事もできなかった。


 あのバルクロスの言葉も信じたわけではない。


 キャメロンの死は、物取りの犯行という事になっていたが、それはアスロンに恨みを持つ者が犯人とされた。


 その犯人をアスロンは、殺害してディク島に事実上、幽閉された。


 しかし、本当の所はアスロンは、その犯人を殺害していなかった。


 レナードは、本当に娘キャメロンが殺された理由を知りたかった。


 アスロンが、パン屋からでようととをあけようとした時、パピコが入ってきた。


 「あ、アスロン?」


 「じゃあ、おれは行くぜ」


「もう、いいの?」


「おれは、招かのざる客だ」


 パピコの後ろからグリースが顔を出した。


「おぃ、目をさましたか?キャラメル箱」


 キャメロンの両親に軽口を叩いた。


「なんだ、君達は」


 レナードは、見慣れない雑巾男に警戒して言った。


「いやだな!俺たちは、命の恩人だぜ」


「命の恩人?」


「覚えないのかぃ?」


「グリース、もういいだろ!」


 そんなやり取りとりにアスロンは、割り込みグリースを制した。


「なんだよ、アスロン、こういう事はきっちりっと」


 アスロンは、グリースの耳のあたりを引っ張り上げ外に連れ出した。



 残ったパピコは、キャメロンの両親を見つめた。


 キャメロン夫婦は、パピコを不審者をみるような顔でみた。


 パピコは、何を言っていいか分からず、お辞儀をしてその場を去った、



 パピコは、振り返る瞬間、ある写真を目にした。


若い女性の写真だった。


(誰だろ?もしかしたらアスロンの奥さん)



 パピコが外に出ると、アスロンとグリースがやり合っていた。


「なんだでだよ」


「すまない、これは俺の問題なんだ」


パン屋の中に残されたクレアは、レナードに向かって言った。


「あなた、これで良かったの?」


「ああ、これでいいんだ」



 パン屋の店内にアスロンの妻キャメロンの写真がある。


 写真に写るキャメロンの顔からは、全てを包み込むような愛を感じられた。


 それぞれの想いは、キャメロンの死から1年という短い歳月では、未だかみ合わないでいた。


 

大剣士編編



【川沿いでの事】


川べりで三人が寝そべっている。


アスロンが口を開いた。


「俺は随分と間違えた人生を送ってきた」



 パピコとグリースは、横にねそべりながら黙ってアスロンの話しを聞いた、


「自分の妻も守れなかった」



「奥さんを」



 アスロンは、頷くと黙った。



 しばらく沈黙が続き風が、対岸から吹き始めた。



「それはアスロンさんの責任なの?」



「パコ、アスロンでいい」



「あ、はい」



「人生は、全て自分の責任だと思って生きている」



「それじゃ、生きにくいしょ?」



 真ん中で寝そべるアスロンに、左に寝そべるグリースは言った。



「いや、逆だ、誰にも期待しなくていい分、楽だ」



「でもさーさっき、自分の人生は間違いっだったて言ったよな」



 アスロンは、それを聞いて笑いながら答えた。



「ああ、確かに間違いだらけだ」




「私も」



 パピコもアスロンの言葉に同調するように小さく呟いた。



 アスロンは、それを聞いていないフリをしてやりすごした。


 そして、しばらくの沈黙の後、アスロンが口を開いた。



「俺は、キャメロンの両親をを人間に戻す」



 それはアスロンにとってはめずらしい事だった。


 キャメロンの死から無気力に生きていると周囲からみられていたアスロンだったからである。


 そんなアスロンの言葉にパピコは、反応した。


「アスロン、お願いがあるの、私達と一緒に魔女の所に行って」


 アスロンは、興味なさそうにパピコの方に顔を向けた。



「目的一緒だもんな、俺達、魔女を消滅させるって事でなぁ!アスロン、一緒に行こうぜ!」



「待って、グリース、それって魔女を殺すって事?」



 パピコは、上半身をあげアスロンの横に寝そべるグリースに言った。



「パピコ何言ってんの、イタサレの魔法を解くのに魔女を殺す必要あるだろ!」


 グリースも身体を起こしてパピコに訴えるように言った。


 グリースの身体から草がパラパラと、地面に落ちて草はまたそれと同化した。



「殺す必要ある?」



「パピコ、な、なに言ってんた、魔女は、凶元だぜ」



「なぜ、魔女が悪者なの?」



「魔女に良心があると思っているのか?」



「魔女は、殺させない」



 空を見上げて二人のやり取りを聴いていたアスロンは、驚いたような表情をみせてた。


 そしてグリースは、パピコの言葉が納得できない様子だった。


(なんでやねん、、パピコ)


 その時だった。


”ビューーーン〟



”シュッパ〟



 何処らかともなく、矢がパピコを目掛けて飛んできた。


 その一瞬の出来事にパピコとグリースは、全く気づいていなかった。


【謎の女戦士】


”ビューン〟



 突然、パピコを目掛けて矢が飛んできた。


 パピコとグリースは、その一瞬の出来事に気づいていなかった。


 しかしアスロンだけは、その事に気づいた。


 アスロンは、一瞬の風の変化を感じとるとパピコに向けられた矢を察知した、後は身体が勝手に動き出し、剣で矢を真っ二つに切った。


 アスロンが、矢が飛んできた方を見ると一人の女戦士が木の上にたっていた。



「魔女は、殺すべきよ」



 女戦士はそう言うと、地面に向かってジャンプした。



 地面に降り立っつと、もう一度繰り返し女戦士は言った。



「魔女は、絶対殺すべきよ」



つづく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る