第27話 『パピコの反撃』大剣士編6

〜前回までのあらすじ〜


 2023年の夏


 高校2年生の橘葉日子(パピコ)は、左半身麻痺で入院していた。

 そこに突然あらわれた雑巾男グリースに、自分の国を救ってくれとお願いされてしまう。

 その国へと行く事になったパピコ、連れらてきた世界は、昔読んだ事のある絵本の世界そのものだった。


 これは、最弱女子高生パピコが仲間と共に世界を救う物語である。


ー現在、パピコとグリースは、アスロンを仲間にする為、デック島にいったが、アスロンに仲間になる事を拒否された。


それは、死んだ妻の両親を守る為だった。それを聞いたパピコは両親のいるフフリンに向かった。


そこで、死んだ妻の両親を守る為バルクロス一派と対決する事になったのであった。


【パピコの反撃】


フフリンの街周辺


 グリースの上からパピコは、オーク達の群れに向かって言った。


 「ねえ、貴方達、この中で一番、ぴちぴちで美味しいのは誰?」


 オーク達は、パピコの声に戸惑っていた。


「な、なんだ?」


 オーク達は、周りを見渡り出した。


「そ、そりゃ、アイツだ!」


「ああ、あの小娘だな」


「じゅるるる」


無数のオーク達が蠢いた。


 ”がぁ、がはぁ〟


 「パピコなに、言ってんだよ!」


 グリースがパピコの口を塞ごうとしたが、それを制してパピコは続けた。



 「そう、何を隠そう、このあたしがこの中でもっともぴちぴちで食べごろよ!」


「んな、こたぁーわかってんだよ」


「はやく、食いてえ」



「ばかやろ、誰がお前なんかぬあの獲物をやるか!」


「早い者勝ちだ!」


 オークの1人がパピコの所へ駆け出した。


「て、てめ。待ちやがれ!」


パピコは、唾を飲みこんだ。


 「グリース、さぁ奴等がくるわ!」


「パピコ、お前、知らんぞ!どうするつもりだ」


「逃げるのよ!」


 アスロンは、パピコの言葉に呆れてた顔をしたが、その行動に救われていた。


(早くこの兄弟を片付けて二人を助けなくては)


 「おれが、先にアイツを食うぜ!」


 「ふざけんな!俺が先だ!」


 オークの群れがパピコ達に雪崩のように流れ出した。


 「なにをしている、まずはアスロンを殺せ!!」


”ぴぃ〜ろろ〟


 ギルドの言葉とドーマの笛が、オーク達の狂乱には、すでに届かなくなっていた。


(なんだ、ドーマの笛の効力はこの程度なのか、、?いや、まだ俺がドーマの笛を扱いきれていなかいのかもしれない)


 ギルドは、再びオーク達を統率するべき、笛を吹きはじめた。


 ”ピロロー〟


 グリースはパピコを乗せて岩山付近を全力で飛んでいる。


 グリースが振り返るとオーク達の重大なが自分目掛けて押し寄せている。


 グリースの額からでる汗が止まらなくなっていた。


”ぽた、ぽた、〟


「グリース、もう少し頑張って、私に秘策があるの、今はなるべくアスロンからオーク達を引き離して」


”ぺちゃ〟


 グリースの目に汗が入った。手で汗を拭うとパピコの言葉に答えてた。


「わかったぜ、でもおらー今すぐにでもしょんべんチビりそうだぜ」


 そう言うとグリースは、飛びながらヘラヘラ笑いだした。



 アスロンとゾルゲ兄弟の周りには、オークがいなくなった。


(ありがたい)


アスロンは、心で呟いた。


”ピロローロー〟


「くそ、、駄目だ、、オーク野郎ども、、戻ってこい」


 ギルドは、笛から口を離すと心からオークが自分の所に戻る事を願った。


 「ギルド、オーク達はどーした?」


 ゾルゲ兄が、ギルドにそう言うとギルド悔しい顔をみせた。


「所詮、オークどもは下等な生き物、心配すんな!俺たちがアスロンを始末する」



 アスロンは、剣を八の字に振り回し始めた。


”しゅーん、しゅーん〟


アスロンの周りに風が集まりだした。


「おい、アスロンちゃん、オーク達がいなくなったからからって俺達には勝てないよ」


(風は、アスロンとゾルゲ兄弟を交互に行き交いだした)


「そうだといいな」


 アスロンは、今度は剣を四方に振りかざしながら兄弟に素早く詰め寄った。


 (今度は、一堂に風がアスロンに目掛け噴き出した)


(?風なんだ?アスロンが消えた)


 消えたと思ったアスロンは、ゾルゲ弟の背後に回っていた。


 それに瞬時に気づいたゾルゲ弟が、振り向き様、後ろにいるアスロンに斬りかかった。


 しかし、アスロンは、その攻撃をあっけなく剣でかわすと、弟の右腕を下から突き上げた剣で切り落とした。


”ぼたぁ、、、、〟


”どーすーん〟


 ゾルゲ弟の右腕が落ちた。



「て、テメぇ」



 ゾルゲ兄がアスロン背後から切り掛かると、アスロンは身体を回転させ、その攻撃をかわし、兄の無防備な左胸を貫いた。



 ”ぐわぁ、、どばぁー〟


 ゾルゲ兄の胸と口から、血が噴き出した。



 右腕を失った弟は、すぐさまアスロンの首を目がけて切り掛かると、その筋をかわし、今度は、逆にゾルゲ弟の首をはねた。



 弟の頭がギルドの方に飛んでいった。


「な、なんだ、この圧倒的な違いは、、まるで歯がたたないじゃないか、、」


 ギルドは、そう言うと残酷にもゾルゲ弟の踏みつけた。


(役ただずが、、)


兄に向かって言った。


「おい、ピックスもうやめろ!俺のオーク達がもどるまで逃げろや」


ゾルゲ兄は、ギルドの言葉に振り向いた。


「ギルド、うるせいぞ、、ばば、、」


 左胸を刺され兄は瀕死の状態だった。


「もう、いいだろう、、」


 アスロンがそう言うと兄は、アスロンを貫こうと剣をだした。


 アスロンがそれを避けると、兄に足払いをした。


”バシュー〟



”ばたん、〟




兄は、足を掬われると後ろから倒れた。



(よ、弱すぎるぞ、、、ゾルゲ兄弟、

、)


 ギルドは、一連の戦いをみてそう思った。



 悲しい目をしてアスロンはゾルゲ兄をみた。


「て、てめ許さねーぞ、、デベルを殺しやがって」


 アスロンは、目は悲しみの中にいた。


「あ、お前、、泣いてんのか?」


「おい!!アスロン、そんな弱い野郎、さっさっとやっちまえ」


 ギルドは、アスロンに向かって怒鳴りつけた。


 アスロンは、ギルドの声に気づき振り向くと、ギルドに向かって無表情の顔を見せた。


(アスロンの身体から特有のオーラがででいた)


 ギルドは、アスロンの表情と醸し出すオーラで悟った。


(ゾルゲ兄弟が、弱いんじゃない、、、次元がちがいすぎるだ、、、バルクロス、、いや、それ以上、、だ)



 ギルドは、急に身体が震え出していた。



 ドーマの笛を持つ手が震え、口元に笛を持ってきたが、うまく吹けないでいた。




 アスロンは、ギルドの所にゆっくり近づいていた。



”ザッ〟


”ザッ〟



「て、てめぇ、オレにちかづくんじゃねえ」



 アスロンから、逃げだし始めたギルド。



 するとその瞬間、ギルドの手からドーマの笛が離れた。



 ギルドが上を見上げると、パピコを乗せたグリースが空から笑っていた。


「へらへら」


 グリースの上に乗っていりパピコの手にはドーマの笛があった。


 「笛が、、!」


 「いただきました!」


 パピコは、笑顔でギルドに言った。


 「おい、それは俺のだ!かえせ!」



 「こんな恐ろしい笛は返せません」



 ギルドは、怒りで顔を震わせた。


 アスロンがギルドに近づいている。


「く、くそ、、」


 ギルドは、後退りさてアスロンから離れた。



 グリースは、アスロンのそばで着陸した。




「オーク達をどうした?」



 アスロンは、着地した二人に聞いた。



「眠らしたの」



 パピコが答えた。



「どうやって?」



「私の呪文で!」



「呪文?」



「パピコ、ちょっと笛みせて」



「え、はい」


 グリースは、パピコからドーマの笛を受けとマジマジと眺め出した。


「ひぇーこれで、オーク達を呼んだんだな」



「ガルタダから教えてもらったの、眠りの呪文を」


「そうか、、でも良くできるようになったな」


 アスロンとパピコが話している中、グリースが誤って崖の下に落ちてしまった。


「あ、手が滑った、、ありゃ」



 ギルドが崖からドーマの笛が落ちた事にきづき、すぐに崖の下へと走りだした。


(ひゃ、ひゃ、まだ、俺はついている、神があの雑巾男から笛を引き離してくれたんだ)



 グリースが崖の下へと落ちる笛を目で追った。


(や、やば、、)



 ギルドが走り出すと、突然、ギルドは倒れた。


 ギルドが倒れた後ろには、ゾルゲ兄が立っていた。


 「てめ、なにしてんだよ、邪魔すんなよ」


 倒れたギルドが兄に向て怒鳴った。


 するとゾルゲ兄は、ギルドをボコボコに殴り倒した。


 ”げぼぉ、げぼぉ、、〟


「ギルド、悪かったな、弱い野郎で」


「ひゃ、あれ、、は、、アスロンが、強すぎる、悪かった、」




 ゾルゲ兄は、ギルドの口を目がけて蹴り倒すした。


”バゴォーン〟


「だまれ」

 

 ギルドは、その蹴りで後ろにぶっ倒れ気絶した。


 そして、ゾルゲ兄はアスロンに向かって声を荒げた。


「アスロン、弟を殺した貴様を許さねー、テメにどんな悲しみがあるかしらねーが俺とお前は違う同情した目で見るんじゃねえ」


 アスロンは、悲しそうな顔でゾルゲ兄をみた。


「て、てめ、その目で俺をみるな」


 ゾルゲ兄は、身体から溢れる血を手で抑えてながら、アスロンに近づき、剣をふりかざした。


 「罪をつぐなえ」


 そう言ってアスロンの前に来た瞬間、兄は口から大量の地をはき、前のめりに倒れた。


 ”どすーん〟

 

 アスロンは、自分の目の前に倒れた兄を抱き抱えた。


 そして、息がない事を知ると、そっとゾルゲ兄の目を閉じた。




「ねぇグリース、戦わない方法ってないの?」



パピコは、グリースに聞いた。



「俺にわかるもんか」



グリースは、ぶっきらぼうに言った。



【ドーマの笛の行方】


 グリースは、崖の下に飛んで、ドーマの笛を探しにいた。




「どうだ?あったか?」



 崖の上にいるアスロンがグリースに聞いた。


「あったにはあったが粉々になってますな〜」


 

「壊れちゃているの?」



 崖の上にいるパピコもグリースに言葉をかけた。


 グリースが無惨にも粉々になったドーマ笛を上にいるパピコアスロンにみせた。



「ああ、本当だ、、」



「これさぁーたぶんすげー笛だよな?アスロン?」


 

 グリースは、さっきより大きな声でアスロンに聞いた。



「ああ、それは伝説の笛、ドーマの笛だ」



 アスロンからそれを聞くと、グリースは、もう一度、手の平にある笛の破片をマジマジと見つめた。



「意外と簡単に伝説って壊れるのね」



パピコが横にいるアスロンに言った。



「伝説なんて、そんなもんさ」



 パピコとアスロンは、笑った。


 グリースは、二人の笑い声に気付くと上を見た。


「え、なに?なに?」


「グリース、君のお手柄だよ」


アスロンは、笑って答えた。



つづく。

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