第26話 『ドーマの笛』大剣士編5

 【ドーマと笛】



(第一章)


〜生い立ち〜


 その昔、オークを操れた唯一の存在がいた。


 その人物の名は、ドーマといった。


 ドーマの生みの母親は、頭が少し弱く、生まれて数ヶ月のドーマをオークの元に捨てた。


 ドーマの父親は母親とは一度きりの関係だった。だからドーマの肉親と呼べる者は、母親しかいなかったが、その母親は、ドーマを捨てた後みずから何日も食事を取らず、餓死した。


 その後、オークの元に捨てられたドーマは、オークによって育ってられた。


 ドーマは、不思議な能力を持った子供だった。


 その能力は、口から発する振動で動物達を操る事ができた。


 それは、オーク達も例外ではなかったのかもしれない。しかしこの時は、ドーマは自分がオークを操れるという事に気づいていかなかった。


 ドーマが、オークの元で生きてこれたのは、ドーマの能力のおかけだったかもしれない。


(第二章)


〜不思議な笛〜


 年老いたドーマはオークの元をはなれ、自分のやりたい事に時間を捧げた。


 ドーマがやりたかった事とは、ある箱を作る事だった。


 それは、”叡智の箱〟と呼ばれる古代バビロニアから伝わる箱を再現した物だった。


 ドーマは、ある日”叡智の箱〟を存在を知った。それはドーマの人生に衝撃だった。


 その箱は、謎に包まれていたが、奴隷の手で作られたという説があり、自分にもそれが作れると信じた。



 しかしドーマが作った箱には、なんの力もなくただの飾りだった。


 その箱をみたある男が、ドーマに言った。


「それは、お前が作るものではない、お前は、自分の作る物を間違えている」


 それを男から言われた日からドーマは、自分の作るべき物を考えだした。


 ある時、自分の能力の事を思い出し、閃きが湧いた。


「笛だ」


 その閃きに従い、ドーマはまた見よう見まねで笛を作った。


 何個か作ってみたが、音も鳴らず、箱の時のようにただの飾り物だった。


 それでもドーマは、笛を作り続けた。


 笛の音も鳴り馴染めてから何千個かめの時、自分でも驚くくらいの物ができたと感じた。


 それは、素材は陶器だったが黒光りした、なんとも薄気味が悪い物だった。


 それをドーマ自身が、吹いていみた。すると驚く事に、オーク達がやってきた。そして、オーク達は、ドーマの下僕のような動きをみせた。



 ドーマは、震えた。これを使えば一国の王にでもなれると思った。


 そして、笛を私利私欲の為に使い出した。


 それから、ドーマは、年老いていたが、笛の力を利用して、結婚して、子を持った。





(第3章)


〜継ぐ者〜


 ドーマは、あるときを境に精神に異常をきたし、死んだ。一国の王の夢は、叶わなかった。


 ドーマの死後、その笛は王家に渡ったと言われていたが、その笛の本当の力を発揮する事はなかった。


 ドーマの笛は、ドーマ以外、その音色を奏でられる事はなかったからだ。ドーマの子供でさえ、”ドーマの笛〟の力を発揮できなかった、


 しかし王は、諦めずドーマの笛を吹ける者をさがした。


 その中でギルド・ハルドラという靴屋がドーマな笛を吹ける事がわかった。


 しかしギルドは、その笛の力で、その国を我が物にしようとした。しかし、それは一歩及ばず叶わなかった。


 その後、幽閉されたギルドはその牢でその生涯を閉じた。


 その後のドーマの笛は行方がわからなくなり、この歴史を知っている物もほとんどいなくっていた。



【ギルド・ランバル】


現在


 そして、この笛を吹ける者は、カナンドールにいた。


 800年前に笛の能力を発揮できるギルド一族の末裔、ギルド・ランバルとい男だけだった。


 代々ギルド一族は、まだ本物のドーマの笛があると信じていてそれを探していた。


 皮肉な事に制作者の末裔であるドーマ一族は、笛の力を発揮する事ができないが、何も関係ないギルド一族は、ドーマの笛の力を発揮できた。


 そして、このギルド・ランバルもその笛の存在を信じて、定職にはつかず、いつも裏の世界に身を置いていた。


 そんな中で、バルクロスという男にあった。ギルドは、直感でこの男と共にいたらドーマの笛に出会える気がした。


 そして、ギルドは、今、この瞬間、夢にまでみた時を迎えていた。


(やっと私の元にきたか)


 そして、ギルドは、笛を吹いた。


 するとあたりの空気がやたら、重くなり、異臭を放ちだした。


 ギルドは、直感的にこれが本物だと感じた。




【パピコ一行】




 バルクロスが立去ると、ギルドはキャメロンの両親をほっぽりなげ、笛を吹いた。



「パピコ、グリース、その人達のそばに行ってくれ」


 アスロンは、すかさずパピコ達に両親を保護すると共に、恐ろしい異変を察知した。


「グリース、早くこの人達をお店の中に入れましょう」


 パピコも、アスロンの同じ物を感じそう言った。



「弱虫アスロン、やっとオレ達とやる気になったか?」


 ゾルゲ兄弟が、アスロンに詰め寄った。



 その時、なにからあたりが騒めきただし、異臭をがしてくるとそこらじゅうからオークが現れ出した。


「なんだ、オークどもが、、」


 ゾルゲ兄弟の兄ピックスが慌てて言った。



「ピックス。安心しろオークどもを携えているのは、俺だ」


「ギルド、てめーそれはドーマの笛か?」


 ギルドは、ピックスをみてニヤッとした。



 ピックスは、内心面白くなかったが、何かあれば笛を奪えばいい、と思った。


 ギルドは、それを察知して、バカ者、笛をふける者は俺以外いないんだと思った。


「さぁ、、そのアスロンを血祭りにあげろ!」


 ギルドは、オーク達に命じた。


 ピックスが、アスロンの脇を狙って剣を振り下ろすとアスロンは、後ろに下がった。


 ピックスの攻撃の後、弟のデベルがアスロンの足を狙って剣をふった。


 アスロンは、剣でそれを捌くと、襲いかかってきた、オークの腹に剣を貫いた。


「ギャハハ、」


一人ギルドは笑っていた。



 チンピラ二人は、オーク達に恐れをなして、アスロンに攻撃もできず、立ち尽くしていた、



 アスロンに対してオークどもがよだれをたらして、ジリジリと近づいていく。


 そして、何を思ったか、チンピラ二人にもオーク達は、襲いかかった。


「な、なんだよ、ギルド、オレ達は仲間だろ!」


「お前えらみたいに使えない奴等は邪魔なんよ」


 チンピラの長髪の方の頭をオークは、噛み付いた。


「ぎゃーあー」


 坊主は、オーク、4体が襲いかかり、身体を噛みちぎった。


二人は、オークの餌食になっていた。



 アスロンは、兄弟の相手で手一杯だった。


「ちぃ、まじい肉だな」


 オーク達はアスロンに次、次、襲いかかりはじめた。


「ぐっ」


”カキーン〟


アスロンがオークの首を切った。


そこに弟デベルが再びアスロンに腹に切りかかった。


 しかし、それを剣で捌き、襲いかかるオークの左手を切り落とした。


 しばらくすると、パピコとグリースがお店の中から出てきた。


 パピコ達は、アスロンが一人が、多くのオークに囲まれて、苦戦している様子に愕然とした。


 パピコは、何かを瞬間的に思い、言葉を発した。


「グリース、私を乗せて飛べる?」


グリースは、唾を飲み込んだ。


「パピコ、何をする気だ?」


パピコは、グリースにウィンクした。


つづく


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