第25話 『ギルドの企み』大剣士編4

〜前回までのあらすじ〜


 左半身麻痺で入院中だった女子高生のパピコは、雑巾男に連れられ、異世界にやってきた。


 その世界は、昔読んだ絵本の世界そのものだった。


 これは。最弱女子高生パピコと雑巾男グリースが、暗黒の魔女から世界を救う物語。


 現在、パピコ達は、大剣士アスロンのいるディック島まで進み、アスロンの亡くなった妻の両親に会いに行く所だった。


【ミント】


 妖精トロールのミントは、エルフの里にいた。


 下女に”アダストリア〟に向かうのはガルダダの異獣フォルゴに送ってもらうと伝えるためだった。


 ドリーマーに使えていた下女は、わざわざきてくれたミントの行為が嬉しかった。


「少しこの里で休まれいきますか?」


 下女がそう言うと、ミントはその言葉に甘えて少し休ませてもらう事にした。


 ミントは、勝手にそう決めてしまったのでこの里で休んでいる間にファルゴが、ガルダダの元に帰ってしまうかもと、心配だったがその様子はなく、静かに身体を丸めて休んだ。


(良かった)


ミントは、心の中でそう呟いた。




【パピコ一行】


 パピコ達が、『ベーカリーダナス』に着くと中から大男が何かを抱えて出てきた。


 それは、バルクロスが、気絶したキャメロンの両親が二人を抱えていた。


 アスロンは、すぐさまキャメロンの両親と気づくとバルクロスに言った。



「その人達を離せ」


 バルクロスとアスロンは、お互いディック島に住んでいたが、面識がなかった。


 この時が初めての顔を合わせた事になる。


 アスロンは、バルクロスの事をなんてデカい男だと思った。




「貴様はアスロンか?」


 バルクロスは、すぐさま噂に聞いていた剣豪アスロンに気づいた?



「その人達をはなせ!」


「待ってください、自己紹介くらいさせてください、私はバルクロス、一応ディック島を仕切らせ貰っています」


(バルクロス、お前が)


ーバルクロスは、ディック島では、有名だった知らない人間はいないくらいに当然、アスロンの所にもバルクロスの噂は届いていたー


「あんたが、大悪とうのバルクロスか」


「いやですね、大悪とうだなんて、それより私はアスロンあなたに会いたかったですよ」



 そういうとバルクロスは、両親をギルドに投げ渡した。



「お前、何をする」



「今は、邪魔なんですよ、目の前に殺した人間がいるんでね」


ギルドがまた1人笑い出した。


きゃきゃきゃ


 パピコは、ギルドの薄気味悪さに震えた。



 アスロンからは、静かな剣を抜いた。




「お前は、デック島でも同じ事をしているよな?」


ギルドが横から口を挟んだ。


「まて、まて、バルクロス様は、魔女にイタサレになった人を救っているんだ!」


 アスロンは、うじ虫をみるような目でギルドをみた。


「それよっか、お前、バルクロス様にディック島きてから挨拶がないよな」


「ギルド、いいじゃねえか、大剣士さまは、お強いお方だ、俺なんかの事を見下してらっしゃるんだ」


「なーアスロンさん」


 パピコとグリースは、バルクロスから発する威圧感が、この場を支配していると感じていた。


 威圧感では、圧倒的にアスロンはバルクロスに押されていた。


 「ねぇ、アスロンさん、どっちが強いか勝負してくだよ」


 バルクロスは、自分の持っていた剣を鞘から取り出して言った。


 アスロンは、焦らすように何かを考えてそれには、答えなかった。


 「あれ、びびっちゃてるの?」


 ギルドは、アスロンに向かって吠えた。


 するとアスロンが口を開いた。


「貴様らの仲間は、何人いる?」


「なに、言ってんだ、二人だけだよ、バルクロス様と俺だけだよ」


 そうギルドが言うとバルクロスが、なにかに気づいた。


「兄貴、兄貴、!!」


 バルクロスが声のする方をみるとゾルゲ兄弟と町であったチンピラがきていた。


 「お前ら、なんだ?」


「兄貴じゃないですか?偶然だな」


「ピックス、なにしにきた?」


「いや、俺らは、こいつらに手をだしたアスロンを始末しようと思って」


「兄貴ももしかして」


 バルクロスは、邪魔が入ったと思い顔を歪めた。


 アスロンは、顔色ひとつ変えないで何かを思案していた口を開いた。


「さて、皆んな揃ったみたいだな、バルクロス」


バルクロスは、アスロンの言葉に顔を歪めた。


「待て、俺が呼んだみたいになってんな?それは違うぞコイツらが勝手に来たんだ」


「まぁ、どっちでも、いい事だ」


 アスロンは、バルクロスをみて言った。


「待ってください。俺たちにアスロンをやらせてください」


「おれらは、コイツにコケにされたんです」


バルクロスは、笑った。


「アスロンをお間らだけで、やれると思ってんのか?」


「兄貴こいつらでは無理だから俺たちがきたんよ」


ゾルゲ兄が言った。


「お前ら二人でもコイツは、手こずるぞ」


「早くしてくんないかなーバルクロス一派さんたち」


アスロンは、バルクロスを煽るように言った。



ギルドがバルクロスに耳打ちをした。



「貴方様のリスクもあります、あなた様自身ももしもの事があるかもしれません。ここはどうでしょう。、チンピラは、戦力にならないとしてもゾルゲ兄弟と私に任せてくださいませんか?」


「お前、何を企んでいる?」


「”ドーマの笛〟私にお渡していただければ必ずアスロンの息の根を止めてさしあげます」


「それが狙いか、でもドーマの笛は吹ける者が居て初めて価値あるものだ、ハッタリに使うのか?」


「まさか、ハッタリの通用する相手ではございません」


「ただドーマの笛が欲しいだけか?」


汗をかくギルド。



「は、はい、私は吹けませんが伝説と呼ばれる笛を持ってみたいのです」


「いいだろう、

ドーマの笛は、お前の物だ」


「有難き幸せ」


「でどうやってアスロンをやるんだ?」

 

「私には、頭脳があります、お任せください」



(やったぞ、ドーマの笛があれば

俺はこの人にも勝てる)



(まずは、アスロンを始末してから俺は全てを手に入れる)



ギルドは、心の中で一人興奮していた。



「アスロン、お前の相手は、コイツらだ!」


「バルクロス、お前は逃げるのか?」


「いや、コイツらにやられる事がなければ、その時は楽しみにしている、それとそのイタサレは置いてやるよ」


 アスロンは、それを聴くとパピコとグリースに目配せをした。


 ギルドがドーマの笛を持つとその魅力の虜になった。


『やっと私の元にきたか』



 ギルドは、なにやら不可視げな言葉をドーマの笛に呟いた。


つづく

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