第23話 『運命の歯車』大剣士編2



【アスロン】


日も暮れた、デック島


うらぶれた街で、数人が揉めていた。


そこには、パピコ達いた。


(アスロン、、この人が、)


 パピコは、目の前にいる男がアスロンだと確信した。


 高身長で髪の毛は長く、全体的に落ちた雰囲気を持っていた。絵本でみたアスロンとは少し違ったけどこの人だと思った。魔女の所にこの人が居てくれた心強いと思った。




「お前はカミアシかイタサレか?」



「知るかよー俺には昔の記憶がないんだ」



 アスロンは、グリースの言葉に表情を変えずにその言葉を飲み込んだ。


(※カミアシ、元々の生まれつきの異形な生き物。イタサレとは、魔女によってかえらた異形な生き物の事をいう)


「どっちにしてもお前は、この島から早く去った方がいい」


「おい、おい、腑抜けアスロン邪魔すんな!そいつは、おれらの獲物だ!」


 パピコは、どう考えても目の前にいるチンピラどもより、アスロンの方が格が上に見えた。



「あなた達、アスロンは大剣士よ!!あなた達なんかイチコロよ」



「なに言ってんの!こいつは、ゾルゲ兄弟から逃げてばかりの腰抜けだよ!」


チンピラの長髪が言った。



「おまえらこそ、バルクロス一派を立て付くという事がどういう事が知らねーのか?」



 チンピラの坊主の方が言った。パピコとグリースは、船で聞いた、”バルクロス一派〟には気をつけろという言葉を思い出してたじろいだ。



 チンピラの長髪ががパピコに襲いかかってきた。



 パピコが身を縮めようとしたが、長髪は、サッとパピコの左腕を捕まえた。


 アスロンが、その瞬間、パピコの腕を掴んでいるチンピラの腕を、素早く握り、不自然な方向に腕を曲げ、腕を捻った。


”パキーン!!〟



”ウゲゲェェ!〟



 チンピラ長髪が身をかがめ膝を落とした。



 坊主がそれに気づき、アスロンの腹を短剣を刺そうとしたか、それを軽くかわし、平手打ちで短剣打つた。


短剣が地面に落ちた。


 坊主が再び短剣を拾おうとした瞬間、アスロンが顔面を蹴り上げた。


 坊主は、数m飛ばされると地面に叩きつけられ動かなくなった。


”ぐぐぅ〟


 パピコは、アスロンの脚力に驚いたのと同時にアスロンの事が少し怖くなった。


 長髪が、うずくまりながアスロンに向かって唸った。


「てめ、俺達に手を出したって事はわかってるよな」



 アスロンは、その言葉を無視して、パピコに近づく声をかけた。


「大丈夫か?」


 アスロンからは、さっきまで殺気が消えていた。


 パピコは、アスロンに「大丈夫」ありがとうと小さくお礼した。


 酔いどれになっているグリースは、この状況に気分が大きくなってチンピラに生きがりだした。


「バルクロスって誰やねん!はぁ!!」



 その言葉に長髪は、顔を歪め、「ザコがっ」と呟いた。


 アスロンが酔っているグリースに近づき行動を制した。


「あまり、挑発するな」


 グリースの目は、焦点があっていなかった。



(めんどくさい事になった)



 アスロンは、心の中で呟いた。


 アスロンは、そのままグリースを肩で抱き抱え、パピコを連れその場から去った。


 長髪は、腕を押さえながら、倒れいる坊主の無事を確認した。坊主は、どうやら生きているみたいだった。


 長髪は、去っていくアスロン達に恨み目でみた。


 (アスロン、許さねぞ)



【宿屋での三人】


デック島


 宿屋ヤッケでは、明かりがついている2階の部屋で話し声が聴こえていた。



「なぜ、俺を探していた」



アスロンがパピコ達に尋ねた。


「アスロン、あなたにはアイテムの完成と魔女を倒すのを手伝ってもらいたいの」


「なぜおれが、君らに協力しなきゃならない?俺にはやる事がある」



「あなたの奥さんを殺した本当の犯人をこの島で探しているの?」



「なぜそう思う?」



「だって違うでしょ?犯人は別の人」



「そうだ死んだあいつは犯人じゃないだろう」



「犯人殺したのはアスロンじゃないんでしょ」



 アスロンは、パイプをとりだすと葉っぱに火をつけた。


「真実は、どうでもいい事だ」


 パピコは、アスロンは殺していないと感じた。


 ”がぁがぁー〟


 グリースは、酔いが回りすぎ、部屋にきてからずっと寝ていた。


「あなたは、もしかして、わざとデック島にきたの?」



 アスロンは、パイプを吹かしてそれには答えずパピコ達のこれまでの事を聴いた。


 パピコは、グリースの事と自分の事、そして魔女の事をアスロンに話した。


 アスロンは、黙ったまま、パピコの話しを聴いていた。


 「んで、私は、この世界では、パピコ、そう呼んでください」



「”パコ”か」


アスロンがパピコに向かって言った。


「パピコです」


「言いにくい」


「またそれ〜この国の人は本当自分勝手、もういいです”パコ〟で」


 しばらくすると寝ていたグリースが突然、起きだし、お腹空いたと言ったので、店主に頼み、軽く三人で食事をとった。


 食事を終えると、時刻は21時をさしていた。(カナンドールも地球と同じ24時間サイクルであった)

 

 アスロンは、パイプを吹かしながら煙を見ていた。

 グリースが欠伸してねむそうにしている。 

 パピコは、店主が入れてくれたヤギのホットミルクを、飲んでいた。




「俺は、死んだ妻の両親を守っている」



 アスロンは、自分の事を語り始めた。


 その両親は、フフリンという街にいるらしくデック島から船で1時間くらの港街だった。



 アスロンによると、両親は魔女によって”イタサレ〟になってしまっているらしかった。


 アスロンと奥さんの両親には、以前から確執があり、キャメロンが亡くなってからも一度も会いに行っていなかった。



 パピコは、アスロンが罪の意識から、亡くなった妻の両親を守っているように感じた。


「アスロン、オイラ達がチンピラに襲われた時、なんでカミアシとイタサレはこの地を去れと言ったや?」


「バルクロスがイタサレを捕まえてどこかに売っているようだ」


(人身売買)


パピコは、心の中で呟いた。


「カミアシは?」


「カミアシは、売り物にならない」


「なんで?」


「カミアシには、不思議な力を持っているからな」


「どういう事?」


「カミアシ達を扱える者が少ない、だから売り物にはならない」


「グリースはカミアシ?」


グリースは、首を振った。


「わからないんや」


「だってグリースは、空を飛べる」


「そうでしょ、アスロン」


「カミアシは、神秘の力を持つ者、空を飛べるだけではグリースをカミアシと判断できないな」


(パピコは、ガルタダの所にいたウォルフィットとファルゴを思い出していた。もしかしたら彼等はカミアシかと思った)


「やばいやん、奥さんの両親、イタサレなんやろ?」


「そうだ」


 デック島は、人身売買されてもあまり公にはならないらしく、フフリンにいる両親はまだ安全だとアスロンは言った。


 だからと言ってフフリンの街もこの先も安全だとは、限らない。


「そうか、アスロンはんは、両親さんの事を守ってる為、バルクロスとの無駄な争いをさけてきんやね」


「だが、もう今日の事で争いは避けられないだろう」


「アスロン、あなたは、罪の意識を感じているの?」


 アスロンは、パピコに対して怖い顔した。


「俺が、自分の人生を生きていないと言いたいのか?」


「いや、そういう事じゃなくて」


 パピコが少しアスロンの言葉にたじろいだ。


「パピコ、やめろよ〜あまり、アスロンはんの気分を逆撫でするなよ」


 グリースは、話しの方向を変えてアスロンに話しだした。


「アスロンはん、とりあえず、バルクロス一派はあなたを舐めきております。

バルクロス一派をやちゃえば、両親のことも全て解決するんやないの?」


 アスロンは、パイプを吹かした。その煙が部屋の中をさまいだした。


「俺達も助太刀しますぜ!なあ、パピコ!」


とグリースはパピコを見た。


「いやそんな事より、アスロンは先に両親の所に逢いに行くべきよ」


「パピコ、やめろ〜よ、生意気な事いうなよぉ〜アスロンはんの気分がまた害されるだろ!」


 完全に酔いが覚めたグリースは、パピコの言動が、気が利きでなかった。



 アスロンは、怖い顔しながらパイプを吹かし始め、あたりは煙で充満した。



『歯車が動きだしたか』



 アスロンは、一人呟いた。


 宿屋の外は、もう既に真っ暗になっており、カナンドールの夜を満月が辺りをてらしていた。



「わかった行こう」



 アスロンは、静かにそう言うと、パイプの火を指で握り潰して消した。



「ほれ、そうだろう、やっぱり、そうきたよ!アスロンはんは、男気溢れてるお人なんよ!」



「パコ、君も一緒に行ってくれるか?」



「もちろんです」


パピコは、笑顔で答えた。


(パピコを連れて、おや、?)


グリースは、戸惑いを隠せずに言った。


「行くって?当然、バルクロスを倒しに行くんやよね?」


「いや、キャメロンの両親の元に向かう」


 アスロンは、パイプを袋にしまいなが答えた。


”へなへな〟


 グリースは、身体から力が抜けて座りこんだ。


 そして、心の中で正直アスロンは”本当に腰抜け〟なんやと思った。


「グリース、君が思うように私は腰抜けだ」


グリースは、アスロンに心を読まれたのかと驚いた。


「アスロンは腰抜けじゃないわよ」


 パピコが、グリースにそういうとグリースはアタフタして立ち上がり口を開いた。


「そ、そ、アスロンはんは、腰抜けなんかじゃない、わかっとるわいそ、そんな事」


 アスロンが、剣を手にするとグリースの方に向けた。


 グリースに動揺が走った。


(アスロンはん、本当は怒っている、や、ヤバい、切られるで、、なんか、言わなきゃ)


「だ、だから、アスロン、あんたは、腰抜けじゃない、両親に会いに行く方が勇気が必要だよ、、そう、バルクロスなんて相手してられっかよ、って所っすよね、、」


(ねぇ、、お願い切らないで)


 グリースはそう言うと身を屈め、アスロンの攻撃に備えた。


 しかしアスロンは、ただ自分の剣を目の前にある棚に置いただけだった。


「今日はここに泊まらせてもらうよ」


 アスロンがそう言うと、グリースはほっと胸を撫で下ろし、またヘナヘナと尻を地面につけた。

 

 その夜、アスロンは自分の寝ぐらには帰らず、パピコ達のいる宿屋に泊まり、明日に備える事にした。




つづく

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