第22話 『罪人の流れゆく島』大剣士編1

【アスロン】


 国王軍は、12部隊からなりなっている。


その中で隊は30人からの構成になっていた。


 それぞれの部隊には、特性があるがここではその細かい説明は省こう。


 魔女との攻防により、現在の部隊は、ダンの1番部隊、ラウル3番部隊、隊長不在の9番部隊の1/4半分になっていた。


 魔女との合戦の前に、部隊が解体された事件があった。


 ここでは、物語を進めるのに重要な事に触れておこう。


一番隊の隊長は、大剣士と呼ばれるアスロン。


その妻は、元々、3番隊長であったキャメロン。女性でありながら戦術に関しては天才的な能力を持っていた。



 ある日の事、キャメロンが何者かによって殺された。


その犯人は、殺害の翌日に名乗りでた。


 犯人は、捕まって罪を償う予定であったが、その前にアスロンは、犯人を殺害した。


 裁判をまたずに行動に出たアスロンが、今度は、罪人となってしまった。


アスロンは、”ディック島〟に収容された。


 ディック島は、無法地帯と呼ばれて罪人たちや犯罪者たちが行く場所とされていた。


 現在、アスロンは、”ディック島〟での刑期をおえ、流浪の身になっている。



 アスロンは、刑期を終えてからでもなぜかディック島から離れなかった。


 本当の犯人を探しているとも言われていたり、人生を諦めたといわれたりした。


 彼は、死に場所を求めていると揶揄される事もあった。


 その行動は、罪人達を切るともうわさされていた。


 実際に”ディック島〟での彼と接触した人間はあまりおらず、真相はわからないままだった。




【ミント】



 ミントがファルゴに乗って下女に会う為”エルフの里〟に向かっていた。


「ファルゴたのむな」


ミントの声にファルゴは、何も反応せず、鋭い嘴を光らせ飛んでいた。


 そのうち、ミントが鼻歌を歌いだした所でファルゴの目の瞬きが心なしか多くなっていった。


 多分、少しミントの歌声がうるさく感じているのだろう。


 しかし、ミントはご機嫌に鼻歌をつづけていた。


 ミント達が向かうエルフの里は、もう少しの距離だった。



【パピコとグリース】


 パピコ達は、5、6人でいっぱいになる船でディック島に向かっていた。



 パピコ達以外は、ほとんどが疲れ果てた肉体労働者のようで皆、居眠りをしていた。



 甲板では、パピコとグリースが話していた。


「俺の知っているアスロンという男は、元々は、国王軍の隊長で、大剣士と呼ばれて尊敬されていた。しかし、妻が殺害されてからは、どこかが、おかしくなってしまった」


「それは仕方ない事よね」


「ああ、確かに、おれはアスロンに同情するぜ、なぜって誰でもそうなるだろ?、愛する人を殺されてしまったのだから」


 パピコは、遠くを見つめた。


「アスロンは、犯人を殺した罪でデック島に」


「うん、でも噂では、本当はアスロンは犯人を殺してないらしい」


「なんで自分はやってない言わなかったの?」


「言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだ。殺害した剣にはアスロンの指紋があった」



「アスロンが犯人ではないという証拠もあったが、アスロン自ら自分の仕業だと認めたんだ」



 パピコ達が話しを進めていると、さっきまで居眠りをしていた労働者の一人が話しかけてきた。



「ディック島には、観光かい?」



「いや、仕事、俺達は薬屋でさ」


 グリースが、そう答えると労働者は、それは良かったと言った。観光でくる者なんぞいないからなと言った。



 労働者は、加えてパピコ達に忠告したディック島ではバルクロス一派が島を仕切っているので、商売したければ、バルクロスに挨拶した方がいいとの事だった。



 バルクロスに挨拶する前に、その側近であるゾルゲ兄弟に目をつけられてたら終わりだとも言った。



 パピコ達は、アスロンを見つければ、それで良かったし、この労働者の言う事もあまり自分達とは関係ないような事に思え、聞き流していた。





【ディック島の居酒屋】


 パピコ達がディク島についたのは、少し薄暗くなっていた。


 パピコ達は、アスロンの情報を、得る為、”牛の一歩〟というディック島では有名な酒場に足を運んだ?


 その酒場は、荒くれ者達ど、溢れかえっていた。

 

 グリースは酒場のテーブルでビールを飲んでいる。その正面に、座っているパピコはトロピカルジュースを飲んでいた。


(このトロピカルジュース、美味しいけどなんか、アルコールが入っているような気がする)


「パピコ、それ飲ませてみろ!」


「いやよ」


「本当、それがアルコール入っているか俺が飲んで確認してやる」


 酒場の店員は、悪いではなさそうだったが、何か怪しげな雰囲気をかもしだしていた。


「パピコ、大丈夫、美味しいよ」


「いや、美味しいかどうかじゃなくて、これアルコール入ってない?」


「いや、大丈夫、」


 グリースは、ビールを三杯飲んでいたのでもうアルコールの判別は、できない様子だった。


「グリースは本当、お調子ものよね、あのときも薬屋というんだもの」


「いやね、この口が勝手に喋りだすんよ、でもそのおかげで怪しまれずにすんだろ」


「いや、完全に私達、浮いているわよ」


 周りを見渡すと、じろじろした視線を感じた。


 なかでも、店に入った時から二人の事を見ている二人組がいた。一人は、身長が高く、髪が長いわりに髪の量が少なかった。もう一人は、坊主で身長は低いががっしりした体格をしていた。


 二人ともこの街の労働者の雰囲気を出していた。


 グリースは、ヘラヘラと店員をよんで四杯目のビールをたのんだ。


 パピコが、その店員アスロンについて尋ねてみた。


 すると店主に聞いてくれと、言われた。


パピコは、立ち上がり店主の元に向かった。



「なんだ、お嬢ちゃんトロピカルジュースのおかわりかい?」


「このトロピカルジュースには、アルコール入ってますよね?」


「ああ、もちろん入っているとも、でも今はそんな事を聞きにきたんじゃないだろ?」


「はい、アスロンという男について聞きにきました」


「アスロンは、時々ここに顔をだすよ」


店主は、ニヤリと笑いパピコに言った。


「お嬢さん、悪い事はいわねー早くここから出たほうがいい、」


「なぜですか?」


「あいつらに目をつけらちまっている」


 パピコが、周りを見ようとするとそれを店主は制した。


「周りをキョロキョロすんじゃねえ、鴨が気づくと奴等は素早い行動にでる、ゆっくり店から出るんだ」


 パピコは、ポケットからお金を渡すとグリースの元に戻った。


(グリース、急いで早くこの店からでるわよ)


 グリースは、ご機嫌になって労働者とおしゃべりを楽しんでいた。




【パピコ】



 パピコは、ご機嫌でいたグリースを無理矢理、店の外へと連れ出した。


”ビック、ビック〟



「大丈夫?」



「な、なんだよ、パピコ、人がせっかくいい気持ちでお喋りを楽しんでいたのに」


「グリース、早く歩いて、お願いだから」


”ヒック、ヒック〟


 パピコは、グリースを手をひき、足早に歩いた。


 あたりは、もう真っ暗になっていた。



コッ


コッ


 後ろがら足音が聞こえだし、それが急におおきくなると声が聞こえた。



「おじょちゃん、そんなに急いでどこにいくの?」


 パピコが後ろを振り返ると店からずっとパピコ達をみていた二人組がいた。




「なんら、お前は、」



 グリースは、完全に酔っ払っていて、呂律まわらくなっていた。



”がふ〟



 グリースは、二人組が自分達に敵意を剥き出しな事に気づいた。


 「なんら、やんのか!」


 グリースは、酔っている事もあって長髪の男に威嚇し始めた。


 その様子に、二人組はうすら笑いを浮かべていた。


「なんだ、このイタサレ、雑巾男だよ」


「て、てめ、なめてんのか!」


 パピコがグリースの行動を制しよとした時突然後ろから現れた男にグリースは、羽交い締めにされた。



「誰だ!おめは!」



 グリースは、振り返り羽交い締めにしている男に向かって言った。



「お前は、カミアシか、イタサレか?どっちだ?」


 その長身の男は、落ち着いてグリースに聞いた。


「あーなんだ、どちらかだっらどーなんだ!」




「どちらにしてもお前はこの街から去れ」


 暗闇の中、グリースを羽交い締めしている男は、低い口調で言った。


「あーなんや、俺達は、アスロンを探しているんだ!なんでお前に指図されなきゃなんねーのよ」



羽交い締めにしている男の顔が少し歪んだ。



「邪魔すんなよ、旦那さん!」


 二人組の坊主の方が”羽交い締めの男〟に向かっていた。


 坊主の男は、何かに気づいたようだった。


「あれ!お前は、アスロンじゃねーえ?おい、雑巾男お前の探している男、ほれ、そいつだ」



 グリースは、再び振り返ろとしたが男の力が強くて振り返れなかった。



「アスロン、、」



 パピコが薄暗い中、長身の男に目をくばらせた。



「おい、腰抜けアスロン、邪魔するとお前からやちゃうぞ!」


 長髪の男が薄笑いをうかべると歯が黒ずんできたなかった。


坊主の男が突然笑いだした。



「はははははぁぁ」



「ははははぁいつも逃げちゃうアスロンちゃん」




 パピコは、その坊主の言葉が、信じられなくてアスロンの顔をみた。



 アスロンは二人組から目を逸らした。


 雲に隠れていた月がアスロンの顔を照らした。


 その顔には悲しみが感じられた。



『この男がアスロン』


 パピコは、こんな悲しさを感じる目をした人間をみるのが初めてだった。



つづく。



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