第17話 『金曜日の作戦』トロール編5

【地球】


アメリカ航空宇宙局


2022年9月16日(金)


大きな円卓を囲み、局員達が会議をしている。


その中心の位置にいるNASAでもっともその発言に影響力を持っている長官が話しを始めた。



「我々は、この緊急事態に作戦を立てた」


真鍋や金田、他の局員は、長官の話しに注目していた。


「DPT作戦でいこうと思う」


DPT作戦は、真鍋のチームからでた案が元になった作戦であった。


従来の隕石の軌道をミサイルで変えるというものからミサイルで隕石を破壊して回避するというのが作戦の主な特徴である。


何故、従来の軌道を変える方法より、破壊する方法をとったかというと、隕石の体積が大きすぎる事にあった。


しかし、このDPTにもリスクはある。


破壊された破片の何個かは、地球に落ちてきてしまうという可能性があるという事だった。


隕石そのものの激突より、被害は低くなる事は確かだが、それでもこれによって地球の被害がどれくらいになるかはまだわからないでいた。


【真鍋達がいる部署】


「DPTで良かったのでしょうか?」


金田が真鍋に問いかけた。


「DPTが一番、成功率が高い」


「でも、もっといい方法があると思います」


「君は最初、隕石を回避できないと言ってたじゃないか?」


「だからこそです、まだ案を練り直す事ができると思います」


「しかし、隕石は我々を待ってはくれないんだ」


真鍋は、強い口調で金田にそう言った後、しばらく黙り込んだ。



【惑星ソラリス】



バロン岩の祠



”zzz


zzz〟




トロール達は高いびきをかいて寝ていた。



そのすぐ近くにグリースとフィルがいる。


「フィル、交代で寝よ」



「はい」



「オイラ、2時間寝るから、フィルは、1時間寝たら交代してくれ」



「な、なんでですか?なんでグリースさんが2時間で、僕が1時間なんですか?」


「冗談や、お互い2時間づつで交代や」


グリースは、笑いながらフィルに言った。


フィルは、真面目な性格上グリースの冗談をあまり理解できなかった。


フィルには、ガルタダから借りていた時計を渡した。


そして、先にグリースが寝た。


フィルは、2時間たったのでグリースを起こした。


グリースは、起きている間、退屈だった。


”がぁーがぁー〟


”ぐぅーぐぅー〟


トロール達は、高鼾たかいびきをかいて寝ていた。


『暇ーだなぁ』


グリースは、暇だったので時計を1時間早く回してフィルを起こした。



「あ、交代ですか」


フィルは、寝ぼけながら起きた。


するとすぐさま、グリースは眠りについた。


それからフィルは、真剣な面持ちでトロールを見張っていた。


しかし、トロールは、全く尿の為に起きてこなかった。


”がぁーがぁー〟


”がぁーがぁー〟


時間が来たのでフィルはグリースを、起こした。


「あ、う、交代やな」


グリースは、ヨダレまみれだった。


フィルは、行儀良く横になって寝た。


グリースは、起きてから暇だったので一人しりとりやった。


”一人しりとり〟くらい面白くない物はなかったので、フィルを起こした。


「フィル、しりとりやんねぇ?」


フィルは、身体を揺らされ起こされた。


「じ、時間ですか?」


「いや、まだだけど、しりとりやんねー?」


「いや、時間ではないのなら、まだ寝かせてください」


と言ってフィルは再び横になり眠りついた。


グリースは、しばらくボーっとしてたが、飽きたのでまた時計を1時間早めてフィルを起こした。


そして、グリースは寝た。


フィルは、目を擦りながなトロールを見張った。



”zzz....zz〟


”ドターン、ドターン〟


トロール達は、時々大きな音を立てて、寝返りを打っていた。


フィルは、その音がするとビックとしたが、それがしばらくしなくなると睡魔に襲われだした。


”がくぅーん〟


「はぁ!」


フィルは、寝落ちしてしまう所だった。


『いけない、いけない』


フィルは、自分の指で目を見開いて起きてようと耐え忍んだ。



2時間が過ぎたので、再びグリースを起こした。


「あう、交代かぁ」


グリースが起き上がると


フィルは、すぐに寝息をたたて寝てしまった。



グリースはすぐに寝てしまうフィルを見て思った。



15分たった位でもイケんじゃねえ?



フィルが寝てから15分が過ぎた。



グリースは、時計を1時間45分早めてから、フィルをおこした。



「時間やで」



「は、はい、早い、もうですか?」



「そうや、ほらみてみ、2時間たっとるやろう」


グリースは、2時間早めた時計をフィルに見せた。


「確かに、寝ると時間はあっという間ですね」


「そーゆもんや」


フィルは、全く気づいていない様子だった。



「じゃあ時間になったらまた起こしてくれよ」


作者は思った。


グリースは、絶対ヒーローになれないタイプだと。



グリースは、再びヨダレを垂らしながら寝た。



作者は思った。


グリースのキャラクターグッズが販売される事になったら誰が買うんだろう?かと。



作者にそんな風に思われているとは知らず、ぐっすり寝るグリースであった。


”zzz....zz〟



しばらくしてフィルは、指で瞼を見開いて、トロールを監視していたのだが、その指にも次第に力が入らなくなり、しばらくすると船を漕ぎ出した。



”ガクィーン〟



「だ、だめだ、いけない」



フィルは、首を振った。



うっと、、



うっと、、




”ガクィーン〟



しばらくするとフィルは寝てしまった。



今度は、目覚めないで熟睡してしまった。



”zzz,..z〟



グリース、フィルはお互い寝息を立てて眠りについてしまった。


二人が寝た頃に、トロールCが起きて尿をしたのだ


二人はそれには全く気づ事は無かった。



しばらくすると、太陽がでてきた。


ここで余談なのだが、惑星ソラリスには太陽が2つあった。  


日の出の時の太陽の現れ方は、2つ同時ではなく、

少しズレた間隔で1つ目、2つ目といった具合に太陽が出てくるのであった。



”チュン、チュン〟



どこかで鳥の鳴き声がした。



いまだ、グリースとフィルは、どちらとも起きる気配が無かった。



”zzz


zzz〟


「がばぁー」


トロールBが突然、起き上がり



口から汚物を吐いた。



”レロレロレロ、、、〟



「ん、んBどうした?」



トロールAがBの異変に気づき、問いかけた。



Bは、汚物を吐いたかと思うと、立ち上がり、奇声発


しながら歩き出した。





「ギャーゴー」



「ウギャー」




トロールCが、Bの行動に不信感を感じた。


「あいつどうしたんだ?」



「わからない、、」


トロールAは、答えた。



トロールBは、一人、バロン岩な祠を出て歩き出した。



”ドスーン〟



”ドスーン〟



【バロン岩の畔】


正午



フィルが目を覚ました。



「はっ」



フィルは、いつの間にか、自分が寝てしまった事に気づいた。



トロール達が寝ている場所に目をやると誰もいなくなっていた。



「や、やばい、トロールがいなくなっている」



「グリースさん、トロール達がいなくなりました!」



グリースは、寝ぼけ眼で起き上がった。



「なんじゃ〜交代かぁ?」



グリースの寝ぼけ眼の顔は、


案の定、ヨダレまみれだった。


この時、グリースは自分の作戦が失敗した事にまったく気づいていなかった。


そして、地球での真鍋達の作戦も同じ運命を辿る事になるとは、なんとも皮肉めいていた。


つづく





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