第10話 『里に咲く花』エルフの里編

【直樹】


地球


神奈川県鎌倉市


真鍋直樹の自宅


PM21時


真鍋直樹は、スマホのメモに今日あった出来事をつづっていた。


”今日は橘が入院している病院に行ったのだが、橘は居なかった〟


”看護師さんの話しだと橘は、都内の病院に転移したとの事だった〟


”昨日、俺と三好が、病院に行った時になにも言ってなかったのに、、〟


”いや、三好には前々から転院の事を伝えていたのかもしれない〟



”プププ、、プププ〟



突然、スマホが振動した。



それは、親父から LINE電話を知らせるバイブレーションだった。



親父は、今アメリカのNASAで働いていた。なんでも民間からの異例の抜擢だったらしい。


その親父は、今仕事で、問題をかかえていた。


直樹は父親からの連絡を取った。


どうやら親父は俺に問題解決なんて求めてなくて世間話をしたい為、息子の俺に連絡してきた。




〈世間話でもしよや〉



〈親父も変わってるよな、普通、息子にそーゆの求める?〉


真鍋親子は、とりとめのない会話をした。


〈ところで隕石が、地球に接近している話しは噂になってるのか?〉


〈あんなの誰も信じちゃいないよ!〉


〈NASAも、極秘にしているからな〉


〈NASAがそんな事言ったら世界がパニックだよ、今はちょっと変わっている奴らが盛り上がってるくらいだよ〉


〈そうか、、〉


〈どうなの?なんとかなりそうなの?〉



〈希望はある〉

 

NASAにいる父親の前には、書類の山が立っていた。



〈じゃあな、そろそろ勉強するから〉



〈お前が、勉強するわけないじゃないか〉


〈はは、わかったちゃた〉


〈そういえばあの病気の娘はどうなんだ?良くなったのか?〉


〈順調だよ〉


〈そうか、良かったな、お前の力のおかげかもな〉



〈なんだよ、それ!、〉


しばらくして親子の通話は終わった。



直樹は、父親との会話がおわると心の中で妹に対する怒りが込みあげてきた。


『妹との奴が余計な事、言うから、、』


直樹には、2つ下の妹がいた。この妹は、無口な直樹と正反対にかなりお喋りだった。



そしてNASAにいる父親は、息子とのLINEが終わると少し安堵の顔をみせた。


目の前の資料を前に少し呼吸を整えて、息を、吐いた。


”ふぅー〟



【佐々木】


地球


神奈川県鎌倉市


湘南鎌倉総合病院


佐々木が入院している病室


佐々木は、パピコがまだこの病室にいた時に隣りのベッドにいた40代の主婦である。



看護師が佐々木に話しかけた。


「佐々木さん、だいぶ良くなりましたね」


「はい、このように元通りになりました!」


佐々木は、寝た状態で足を上下に動かせて見せた。


「明後日には、退院できますね」


「はい、今までお世話になりました」



「あれ、佐々木さんの隣のベッドって空いてましたっけ?」



「となり?」



「確か高校生くらいの女の子が入院してましたよね?」


「誰かいましたっけ?」


「私が入院した時から、誰もいなかったとおもいますけど」



「いない?、そうでしたっけ?」


看護師は、納得いかない表情をみせた。


【パピコとグリース】


惑星ソラリス


カナンドール王国のナブル


エルフの里の神殿


パピコとグリースは、エルフ達のいない神殿で、茫然ぼうぜんとしていた。


「なんで?誰もいないの?」


パピコは、呟いた。


「誰かいませんかぁああああ」


パピコの声を張り上げて言った。


しかし神殿には、声だけが響きわたるだけであった。



「誰もいないようやな」


グリースは、パピコに囁くとパピコは小さくうなづいた。



”!?〟



グリースがなにかに気づいた。


「こりゃ、ドリーマー様の予言が原因でかもしれないで」


「どういう事?」


「エルフの人々は、ドリーマー様の予言によって行動を決めると聞いた事がある」


パピコは、意味が、わからないという表情を見せた?


「ドリーマー様の本当の予言は、この世界が終わるという事じゃないか?」



「なんでドリーマーは、私が救世主だって言ってたのでしょう?」


「だから私はここに来た」


「パピコ、もしかしたら君がきても世界が終わる運命は変えられないのかもしれない」



「そんな、、、いや、あなただって、私が世界が終わるって言ったときだいぶ反発してたじゃない!」


「、、でもこの状況からして、世界が終わる事が本当の予言」



「じゃあ、私がここに来たのは無駄だったの、、?」



グリースは、うなづいた。


パピコは、地べたに座りこんでしまった。


その様子に、グリースはヘラヘラと笑いだした。


パピコは、グリースをみるとヘラヘラしていたので、どういう神経をしているのか疑問に思った。



カッ〜ン


カッ〜ン



「パピコ、なんか聞こえないか?」


グリースは、ヘラヘラしなが言った。


神殿内で、二人のもとに足音が近づいてきた。


二人の前に、女性のエルフが、現れた。


そのエルフは、自分の事を、ドリーマーに仕える下女と紹介した。



「良かった、誰もいなかったたから、エルフさん達はいたんですね」


「良かったわ〜で他のエルフ達はどこにいるんや?」



グリースは、キョロキョロした。


「え、どこに隠れてるん?」


「いえ、私一人でございます」


下女は答えた。


「ドリーマー様と私の二人を除いて他のエルフ達は数週間前に他の地へ移動いたしました」


「なんや、ドリーマー様もいるんかいな!」



「いえ、私一人しかいません」


「なんや、今ドリーマー様とあんたはこの地に残ったっていたやん」


「先程、ドリーマー様は、お亡くなりになりました」



二人は、言葉を失い愕然とした。


下女は、二人を別の部屋に案内した。


「こちらへ」



二人は、案内されるまま、別室に入った。


どうやらそこは、ドリーマーの部屋らしかった。


そこにはベッドがあり、そこに人間らしい者がシーツを被せられて横たわっていた。


その周りに、色々な種類の花が身体全体に置かれていた。


「ドリーマー様?」


グリースが聞くと下女は、頷いた。



「お顔をみてもよろしいですか?」


なぜか、パピコはドリーマーの姿を見たくなり、下女にお伺いをたてた。



下女は、快く承諾した。


パピコとドリーマーの初対面は、ドリーマーの死後だった。


「お綺麗な人、これからどうされるのですか?」



「遺言どうりにお墓は立てず、遺骨はマレール川にお流しする予定です」


〜そこから数分後〜


「なぜ、ドリーマー様は、亡くなってしまたんや?」


「元々、長く生きられないお身体でした」



「でも最後に世界の役に立てたと喜んでおられました」


「役に立ったって!?」



グリースが下女の言葉に反応した。


「どうせ、世界は終わるんやろう?」



「何をおっしゃているのですか?」



「他のエルフ達は、この世界を捨てたじゃないか?」


「それが答えだ!」


「その事ですか」


「それは誤解です」


「誤解」


パピコがグリースと下女の会話に口をはさんだ。


下女は、パピコに向かって話し始めた。


「ドリーマー様は、2つの予言をなされました。


ひとつ目は、この世界が終わる予言。



もうひとつ目は、この世界があなたによって


救われる予言。


他のエルフ達は、最初のひとつ目の予言の元


に行動したのです」



「どちらが真実なんや?」


グリースが下女に食ってかかるような言い方をした。


「まずは、あなた方が予言について勘違いしている事をお伝えします」



下女は、一呼吸おいて話を続けた。


「予言に真実はありません。


予言とは、予言者がその時みた世界の全体の


流れです」



パピコとグリースは、全然理解できない表情をみせていた。


下女は、二人に構わず、話をつづけた。


「見る時期が変われば、見えるビジョンが変わるのです」



「それじゃあ、予言ってのは信憑性がないって事になんねんなー」



下女は、その言葉に首を振り否定した。



「未来はそれほど大きくは、変わりません、


ほとんど予言どうりになります。


しかし、例外があるのです。


それは、ある出来事がきっかけで


大きく変わる事があるのです。


そのひとつの要因としは、選択と行動の積み重ねです」


「選択と行動?」


「そうです。国が終わる世界をみたのは、ガル


ダダ様が終わった世界から帰ってくる前の事


です」



「終わった世界から戻ってきた?」


パピコが信じられないと言った感じで言葉を発した。



「はい、正確には、未来からガルダダ様が戻


ってきたというより世界全体がもう一度、”繰


り返される〟と言った方が良いでしょう。


ガルダダ様の意識だけが未來からきたという


感じが、一番適切な言い方だと思います」



「やり直しの世界?」


パピコが、尋ねた。



「そんなところでしょうか?」



「そんな事が、、可能なのですか?」


「どうやって?ガルタダ様は戻ってきたんや?」


グリースが聞いた。



「すみません、その事については、わたしも


詳しくは、ドリーマー様から聞いておりませ


んのでわかりません」


「それが本当なら、2度目にみた世界では、消


滅しない可能性があるのですね」


「そのとおりでごさいます」


下女は、言葉を続けた。


「しかし、未来はあなたの今後の選択と行動次第で変わってしまうという事もあります」


「では未来は決まってないという事ですか?」


「いや、未来は決まっていますが、決まってないのです」


「なんか、わけわからへんぞ!」


すると下女は、微笑んだ。


「これ以上のやりとりは、堂々巡りとなって


しまいます。私もドリーマー様から聞いていた


事をお伝えしているだけですのでもしかした


ら間違いを言ってしまっているかもしれませ


ん」


「いいえ、あなたの言葉で、私がこの世界に


いる意味を見出せました」



【ドリーマーが愛する場所】



「ところでマフィルカの瓶にはエルフの土を入れましたか?」


下女が二人に尋ねた。


「まだです」


「そうですか、それは良かった。


私について来てください」



下女に案内された場所は、神殿の中央付近に位置した広い敷地の庭だった。


そこには、色々な色の花で敷き詰められていた。


「きれい」


「うぉーすげー神殿の中央にこんな場所があったんかいな」


「お二人きたらここの土を使うように言われておりました」


『二人?』


二人は目を合わせた。


「ドリーマー様は、やっぱりわかってたんや、俺達がここに二人で来る事が」


「ここの場所は、日が良く当たるように設計されたのです


ドリーマー様も、ここの花達が大好きで良くこの場所にいらしてました。


他のエルフ達にとってもここは、癒しの場でした」


その場所は、色々取り取りの花に加えて沢山の蝶々もいた。


「お花を大切にしてたのですね」



「はい」


下女はなにかに気づいた様子だった。



「パピコさま、今、この花達が話しかけてきました」



「本当ですか?」



「え、花が話す?」



「これは、エルフ族以外の方にしては珍しい事です」



「なにを言ってんのや?」



「言葉ではないのです」



「パピコさま、何か感じますか?」




『う〜〜ん』



「あなたのいう事はなんとなくは理解はできますけど、でも私にはその感覚はあまり感じません」



「そうですか、あなたもそのうち必ずその感覚がわかる時がきます」



その下女の優しい言葉をパピコは受け取った。



パピコは、近くの土を手に取り、マフィルカの瓶にいれた。


するとマフィルカの瓶は瓶は、茶菓色の光を放った!!



「色々とありがとうございました。ところで、あなたはここを離れないのですか?」


「ドリーマー様が生きておられたら次の便に乗るつもりでした、でも私はこの地が好きです。なので、私はここに残ろうと思います」


「お一人だと寂しくないですか?」


「そうですね、一人は寂しいです」



「でも私はパピコ様達を信じております」



「はい」


パピコは、下女の言葉を心に刻んだ。



つづく


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