第8話 『パピコと呼ばれし者』

【王の間】


 葉日子は、違和感を感じていた。


『この王の間で、異様な空気が流れている』


『人から発している?』


『この王の間、自体から放っているの?』


『わからない?』


『でも、何か良くない感じがする』


 葉日子は、側近サラモネからこれからの事を聴く事になった。どうやら、側近サラモネは、喉の調子があまり良くないらしく、何度か咳払いをしてから話を始めた。


「葉日子殿には、我が国の凶元の魔女を始末していただきたいのです。


なぜ魔女が、凶元かというと魔女には、隣国を消滅させられ、我が国の人間を次々にイタサレに変えられてしまったのです。



 葉日子殿は”イタサレ〟というのが、どの様な存在かわからないでしょうから説明いたします。


 ”イタサレ〟というのは半分人間、半分は鉱物、植物、昆虫、動物が混ざりあった半人間の事なのです。


 そのイタサレの出現によって、我が国の8つの国間での均衡が微妙に崩れて始めてしまいました。


 いずれ我が国も隣国のような悲惨な末路を辿ってしまうと国王始め我々は判断いたしました。


 そこで、国兵を使い魔女をなんとかしようといたしましたが我々の国兵ては、魔女には敵わず、大量の犠牲を出してしまったのです。


 そこで、困惑していた所、この国随一といわれている大賢者に魔女退治をお願いしようと思い立ったのですが、その大賢者に辞退されてしまいました。


 しかし大賢者と共にこられたエルフが、予言をしてくれたのです。


 その予言とは、イノクニに住む者がこの世界を救ってくれるとその世界を救ってくれる者こそ、葉日子殿、貴方様なのです。


 事の顛末は、このような次第です、ご理解いただけましたか?」


 葉日子はサラモネの話しを理解した。


 しかし、葉日子には少し疑問生じた。


「魔女を始末するのですか?」


「そうです」


「魔女を追放したのではダメでしょうか?」


「それでも構いません、しかし、魔女はそれには応じないと思います」


「そうなんですか?でも私に魔女を消滅させる事ができるかはわかりません」


「心配には、及びません、こちらにも対策がございます、それは大賢者からの知恵、そして我が国の兵士達が貴方をお供させていただきます」


「アイテムを使ったら魔女を殺してしまうのですか?」


「いや、それはわかりません、ただ貴方がこのアイテムなしには、魔女には太刀打ちできないと申されました」


「わかりました」


 群衆達は、葉日子とサラモネが何を話ししているかは理解できてないみたいだった。


「一番隊長ダン、三番隊長ラウル、共にこちらにまで来てください」


 二人の男達が王の前まできた。


 その男達は、兵士団のリーダー達であった。


 一番隊長のダンは、統率力にすぐれていて、武力が兵士団一だった。


ダンの外見は、身体付きのがっしりしていて、顔つきは、少し眉が上がっており、鼻が高く、鼻の下には立派な髭を生やしていた。


身長は、185センチ前後であった。


髪は、黒髪で短くカットされていた。年齢は190歳である。



 三番隊長のラウルは、頭脳で兵士団の中でも、策略に優れていた。


ラウルの外見からは、柔和なイメージが感じられた。


肌の色白く、目は大きく、瞳の色はブルーがかっていた。


髪は、金髪をしていて髪はそれほど長くないが、天然のパーマがかかっていた。


年齢は、100歳とこの世界では若いほうであった。


 葉日子は、王の間にはいる前にこの男に会っていたため、安心感を感じた。



「我が国には、魔女によって300人いた兵士達は今は30人しか残っておりません、しかしどうかこの者達と共に魔女退治をよろしくお願いします」


 サラモネの言葉は、酷く悲しい物だった。


現在残っている部隊は、第一、第三、第九部隊しか残っていなかった。


 1番隊長ダンと3番隊長ラウルが葉日子に挨拶してきた。


「葉日子殿、お供いたします、よろしくお願いします」


「三番隊の隊長をしているラウルです、よろしくお願いいたします」


「お二人共、こちらからもよろしくお願いします」


しかし、葉日子は思わぬ言葉を隊長達に言葉をかえした。


「でも申し訳ないですが、私には兵士さん達のお供は必要ありません」


サラモネは驚き、ダンとラウルは目を丸くした。



「私のお供は、あの者にお願いできますか?」


 葉日子が、ある方向に指をさした。


 そこには、グリースがいた。


「私は、あの雑巾男さんと一緒にいきます」


グリースは相変わらずヘラヘラしている。

 

 掃除夫キャプロスは隣にいたグリースに対して煽り立てた。


「おい、トチ狂った娘はお前をご指名してるぞ」


グリースは、周りを見ながらヘラヘラしている。


側近ヤーコブは、葉日子の言葉に疑問視した。


「兵士とは行かずに、あの掃除夫とな?」


「どういう事だ?我々の力を信用できないのか?」


1番隊長ダンは、聞いた。


「違います、魔女にまた武力でいけば、また同じ事になるでしょう、私は、賢者様の知恵と雑巾男さんと私で魔女をなんとかしてみせます」


「いや、待たれ、それさ危険すぎますぞ」


サラモネは、そういうと国王に助けを求めた


「グリース、葉日子殿がこう言っている」


 国王は、側近の言葉を無視してグリース聞いた。


「へい、仕方がないでですね、お供いたしますよ」


 グリースは、平然と国王の言葉を返した。



 掃除夫キャプロスは、グリースに言葉をかけた。


「お前もだいぶイカれてんな!」


 グリースは、キャプロスにウィンクしてそれを返した。



「葉日子殿は、我が国の兵力を気遣っての選択であろう」



「いや、国王それは買いかぶりだと思います」


 国王と側近が問答をすると葉日子は、側近の言葉に理解をしめした。


「はい、そのお方の言うとおりでございます。私は貴方の国の兵力の事は考えておりません。あくまでも武力を使わずにいきたいのです」


「正直だな」


 一番隊長ダンは、グリースはただの掃除夫だと国王に訴えた。


「いや、国王さま、グリースはこの中にいる誰より勇気があります」


3番隊長ラウルは、グリースを弁護した。


「うむ、ザルバナ峡から生きて戻ってきたのは、私の知る限りグリースただ一人だ」


 国王の言葉に側近ヤーコブは、言葉を返した。

「国王、勇気だけでは、魔女退治は成功できないと思います」


 国王が手をヤーコブに向けて制した。


 ヤーコブは、国王にひざまづいた。

 

「葉日子殿、あなたの意見、承諾しよう」


 葉日子は、国王の前に跪き深い会釈をした。


「グリースもう一度こちらへ参れ」


 グリースが葉日子の横まで、くると同じように国王に跪き、深々と会釈した。


「かしこまりました国王様、私めがお供いたします」


 グリースは、改まって言った。


「早速二人に旅支度の準備を」


 国王が皆に指示を出した。


 側近サラモネは、国王の行動が安易すぎる為、何か裏があると感じていた。



【魔女】


ドメルン地方


モーレス山脈の麓に


魔女ナルーシャの城がある。


 ナルーシャは、一人でこの城に住んでいた。


ナルーシャの話し相手は、モーグスと呼ばれる烏達くらいだった。



 ナルーシャは、この世界の異変に気遣っていた数少ない者である。


 ガルダダ、ドリーマー、そして魔女ナルーシャがこの世界が2度目だという真実を理解していた。


 ナルーシャは、薄暗い灯りのついた部屋にいた。


テーブルの食卓に腰を下ろして誰ともなく話をしていた。


『ガルダダめ、2度目の世界のやり直しかい?』


『哀れな賢者よ、何度やっても同じ事、結末


はいつも同じ運命からは逃れられないのさ』


 魔女は、立ち上がり、円柱に浮いている水晶玉をみて何かをみて不敵に笑った。


【パピコとグリース】


 ダナン城を後にした二人は、緑の豊かな広々した道を歩いていた。


「うそでしょー賢者のアイテムってこれから私たちが集めて完成させるの!」


「そうだよ、だからまずはエルフの里に行って」


葉日子の言葉にグリースは返した。


「えええ、ぱっと行ってぱっとやって帰りたいのですけど」



「なめてんの?本気でそんな風に思ってたの?」


 葉日子は、そのグリースの言葉を無視して空をみた。


「あとさー」


「今度はなに?」


「これ、男性の服よね」


「ああ、兵士たちの休日服ね、それ」


「他には、なかったの?サイズも全然あってないしー」


葉日子は、ぶかぶかのズボンを持ち上げて言った。


「その服、動きやすいと思うけどね」


「ねぇ、私さー女の子、女の子よ!」


 今度は、グリースが空をみてその言葉を無視した。



「ねえ、聞いてる?」


葉日子は、不貞腐れた顔をした。


【門番モスとホボと数奇な銃】


ダナン城


門の前



「モス、グリースに銃を返したのか?」


門番ホボは、同僚のモスに聞いた。


「ああ、すっかり忘れてた、まぁ、多分グリースもそんな事、忘れてんだろう」


「それもそうだな、はは」


門番二人


ホーリー老人が持っていた銃護身用の銃は、しばらく門番モスが持ち続ける事なった。




【パピコとグリース】


カナンドール国


 広々とした草原を二人は歩いている。


「あのさーこれからオイラの事、雑巾男ってのはやめないかい?」


グリースは、橘葉日子に問いかけた。


「そうね、雑巾男って流石にあまりよくないわよね」


「グリースと呼んでくれ」


「それが貴方の名前だったわね」


「名前を呼び合うのは、重要だと思うぞ!名前で呼び合う事で、仲良くなった感じがするじゃん」


「確かに二人しかいないから仲良くしていかないとね。ってか、あなた、そういえば私の名前呼ばないよね!」


「だってハヒコってなんか言いにくいだろう?」


「それが私の名前!ケチつけないでよ!」


「じゃあ、パピコ、パピコにしよー」


「パピコ?」


「なんか、突然閃いたんだ!」


「いや、それ佐々木さんが私につけたあだ名よ」



「そうなん」



「あなたは、単にそれを無意識に思い出しただけ、閃きでもなんでもないから!」



「そうか、でもどう?」



「うん、この世界で私はパピコ」



 葉日子は、空をみて少し考えた。



「なんか悪くないかも」



 パピコは、自分が別の人物に変わった気がした。


「うん、この世界では私はパピコ」




【ドリーマーと謎のエルフ】



『パピコと呼ばれし者がこの世界を救う』



 エルフ里にいるドリーマーとどこか別の場所にいるエルフが不思議な鏡を通して会話をしている。



(お久しぶりですドリーマー様、


承知いたしました)


(ありがとう、お前しか頼める者はおらぬ助かる)


 どこか別の場所にいるエルフの顔は、エルフにしては無骨な顔をしていた。


 会話が終わると武骨な顔のエルフは、ドリーマーの言った言葉を繰り返した。


「パピコと呼ばれし者がこの世界を救う」



つづく


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