第6話 『だみぃだこりゃ』

【神父の話し】


カナンドール国


ピュートン教会 

 


 神父は、34人の参加者に対して話しをしていた。


「一年前の話しカナンドールの


隣、インドラという小さな国があった。


首都はブリステル、そこにブリステル城があった。




ダナン王国の民主国家に対して、ブリステル


王国は、一党独裁国家であった。


そのため、民衆は貧しかった。


そこにカナンドール地方の外れに住みつく魔

女はそのブリステル王国に目をつけた。


ダナン王国の強欲な政治体制に不満を持っていた魔女は、一党独裁国家と手を組みダナン王国に一矢報いる為、ブリステル王国に働きかけた。


しかし、魔女の行為にブリステル党首は。魔女に提案を猛烈に批判し断固拒否した。


そのブリステルの態度に腹を立てた魔女は、魔法を使いブリステルの国、丸ごとを消滅させた』


「そんな事があったなんて、恐ろしわ」



神父の話しを聞いているマドレーヌがひ弱な声でいた。


今日は、月一回の神父による”お話し会〟であった。そのお話し会は、年齢を問わず誰でも参加ができた。


今日は、たまたま、神父が過去にあった出来事を話していた。


「神父様、なんで魔女はブリステルを消滅させてしまったのですか?ブリステル国と手を組もうって思ってたのなら、なにもブリステルを消滅させる必要はなかったと思うのですが」


エモンと呼ばれる青年が神父に聞いた。


「野蛮な考えしかないんだよ、あの魔女は」


靴職人バッシーナが横から口を挟んだ。


「エモン、そこが疑問なんだ?なぜ消滅させたのだろうね、何も国を潰す事はなかっと私も思う」


神父は快活なエモンに返答をかえした。


「ちぃ、魔女は魔女、あんな悪魔みたい奴はやく、ガルダダ様にやられてしまうべきだ」


バッシーナは、面白くない表情を浮かべて言った。

※なぜバッシーナが魔女に否定的になったのは。両親が魔女によってイタサレに変えらてしまったからであった。


※イタサレは、魔女によって半分人間、半分はそれいがの鉱物、植物、動物となった人間。


※そのイタサレになった人間は、世間では差別の対象となり、働く事や働く意志がなくなってしまった。その事によってダナン王国では、経済的に停滞期に陥っている。


神父が皆にまた話しはじめた。


『そして我が国ダナンの国王は、魔女の行為に対して恐怖を感じ国から追放を命じた。


しかし魔女は、追放を拒否した。


強行手段にでた王国は兵士達を使って、魔女の追放を心みたが、魔女の前には、ほぼ壊滅状態にさせられて、手も足も出なかった。


今度は、市民達が力を団結して魔女の追放を心みたが、その活動をした者たちは、魔女によってジングルに変えられてしまった。


どうする事もできなくなった国王は、大賢者ガルダダに魔女の追放を懇願する策にでた」


「神父様、噂ではガルダダ様が魔女退治を辞退したと言われてますが」



エモンは、神父に質問をした。



「エモン、何言ってんだ!ガルダダ様は人一倍この国の事を思っている、断るはずがないだろ!」


バッシーナは、エモンに対して強い口調で訴えた。


「エモン、それはどこで?」


神父は、エモンに尋ねた。


「うちのお店によく来る兵士達が話していたんだ」


「その兵士達の話しは、真実かわからない、あまり言わない方が賢明な選択だよ」 


神父は、エモンに苦言をていした。


一番後ろの席には赤毛の少女が座っていた。


その少女は、”サラ〟という名だった。


彼女は、終始不服そうな顔をしていたが、なにも、口にする事はなかった。


「さて、もうこの話は終わりにしよう」


神父は、聖書を取り出しページを開いた。


すると参加達もそれを真似た。



【パピコ】


カナンドール地方


ダナンの丘


「はぁ、はぁ、はぁ」


グリースは、少し息を切らしいる。


「ふぅ〜着いた」


 グリースは、背中に背負っていた葉日子を草の生えている場所に寝かせた。


「ここはダナンの丘、グラビトンという植物が奇跡を呼ぶと言われいるんだ」


大の字に寝ている葉日子にグリースは言った。


「無理、やっぱりこの世界に来ても身体が全然動かせない」


グリースは、焦りの顔をした。


「大丈夫だ、この場所で念じれば、奇跡は起こる!!」


「え、念じる?!なに、それ?そんな事で身体が、動くわけないでしょ!」


「ここは、グラビトンという植物が人間の思いを現実にしてくれるという言い伝えがあるらしい!」


グリースは、葉日子に力強く励ました。


「さぁ、さぁ!心を使うんだ!」


 葉日子は、急かされるままに、眉間に皺寄せ、力んだ!


『むごぉ、ごぉ、』


顔が、赤くなるだけで何も起こらない。


がさ

がさ


木の影から腰の曲がった老人が出てきた。


「お嬢ちゃん、そんな事しても無駄だよ」


その老人は、ホーリーと言った。


 白髪のその老人は、前頭部から頭頂部にかけて禿げ上がっていた。深い皺が顔に刻まれていた。



「なんだよ、あんた!水をささないでくれ!」


グリースは、老人に向かって言った。


「どこの誰だか存じませんが、そうよね!

絶対無駄よね!心の力を使うなんて聞いた事ないもの」


葉日子は、寝そべりながら首だけ老人に向けて言った。


「グラビトンの力を信じている者などいたとはな」


老人は鼻で笑った。


「ドリーマー様に教えて頂いたんだ!」


「ドリーマー、?あの詐欺師か、未来の事がわかるなどとほざいているエルフじゃろう」


「あんた、なんなんだよ、性格が、歪んでるよ!」


「あ〜そうかもしれんな、だからわしの周りには誰もいなくなってしまったのかもしれんな!」


【ホーリー老人】


パピコとグリースが来る前のダナンの丘



 ホーリーは、ダナンの丘に座り込み物思いにふけっていた。


『もうワシは、ここに通って何年になるかな


でもワシの願いは一向に叶えられない。


女房もわしの前から去っていき、子供もいない。


友達すらいない。


グラビトンを信じて通ったが何も変わらない。


もうこの年だ、生きる気力もなくなってしまった


そろそろええかの〜終わらせても』



 老人は、ポケットからビスケットを取り出しひとくち口にした。


『さって』


 老人は、思い詰めた顔をしてポケットから何かを取り出そうとした。


”モゾモゾ〟


”ザワザワ〟


しかし、ダナンの丘に少女を背負った雑巾のお化けがきた。


老人は、ポケットからだそうとしたものを急いでしまい、木の陰に隠れた。



「はぁはぁ〜」


雑巾のお化けは、芝生に寝転がった。


【グリース】


 グリースは、老人に向かって言い放った。


「ってかさーあんたさーおかしよね、なんでグラビトンの事、知ってんのさーあんたももしかして、ここで何か願っていたんだろう?」


葉日子は、老人の顔をみる。


「そうだよ、鋭いねー雑巾のお化けにしては」


ホーリーは、笑みを浮かべながら答えた。


「雑巾のお化けじゃねえよー名前はグリースや!」


「そうか、グリース君、じゃあ、私の願いはなんだと思う?」


「う〜ん、そうだな、幸せな老後?


それよっか、長生き、健康?」



「はははは、いい線言ってるけどどれも違うな」


グリースは、舌打ちした。



「じゃあなによ?」


「老人の願いなんかあんまり興味ないじゃろ、そんなことよりその娘はなぜ身体を動かせないの?」


葉日子が、話しをした。


「私は、違う世界からきたの、その世界で左半身麻痺が原因だと思う、いまは、さらに全身が動かなくなったの」


「まじか、悪化したの?全身?」


グリースが、訊くと葉日子は頷いた。


「どうしよう」


オロオロするグリース。


「それは災難だね〜」


 老人は、突然不適な笑みを浮かべた。



老人は、二人に気づかれないようにポケットから何かを取り出しサッと葉日子の方に投げた。



そして、不適な笑みを浮かべグリースを手招きして自分の方に呼んだ。


「なに、?なにか知恵があんの?」


「いや、いや、知恵ではなくな、さっきのワシの願いの話しじゃ、ちょっと聞いてくれるか?女子の前だと恥ずかしくてな〜」



「なんだよ、恥ずかしいって歳かよ」


ヘラヘラして老人へと近づくグリース。


 老人は、グリースが近づくとその首に素早く手を回しガッチリと押さえ込んだ。


 グリースは、老人らしからぬその力に圧倒され身動きが取れなくなった。


”ぐぃ、ぐぅ〟


「金だよ!金!ワシの願いは、金!この世は


金が全てさ!金さえあれば、失ったものを取


り戻せる!」



葉日子は、老人の行為に戸惑いを隠せなかった。


老人は、グリースを押さえている逆の手でピストルを取り出すとグリース頭に突きつけた。


「さぁ、出しなさい!お前は王家に使える者だろ!その娘のリュックの紋章を見ればわかるさ」


葉日子は、リュックには王家の紋章が刺繍されていた。

 

「ぐぐぅ、なんや、さっきと全然キャラ違うじゃねえかぁ!」



老人は、薄君悪い笑いをしている


「さー、金目の物を渡しな、殺しちゃうよ」


「お金ならありますけど、そんなには持ってません」


「じゃあ、コイツのポケットから、」


「いや、やめろ、くすぐったい!」


 グリースのポケットは後ろのお尻にあって、身体と一体化していた。


葉日子は、なんとしなきゃと思って身体を動かそとしたが、身体が動かなかった。


”うっぐ〟


すると葉日子の周りに大量の蟻が発生しだした。


「きゃーなに?」


「お嬢ちゃん、それは人食いありだ運が悪かったな、お前さんは、その蟻に食べられて白骨化するんだ、かわいそうにな」



「いやぁー絶対、いやーあああ!」



 葉日子は、無心になり、身体回転され、とにかくその蟻から離れようとした。


 くるくると周り、葉日子は立ち上がると、身体を這っている、蟻を隈なく振り落とした!!



「ぎゃあー!


みみ、みみに入ってきた!


雑巾男、なんとか!して!」


グリースは、目を丸くして葉日子の行動をみてる。


葉日子が、走り回っていた。



「ぎゃあー



ひぁ、、。


とれた?」


グリースの口がぽか〜んと開いていた。


「おい、お前、動けんじゃん」


「うん??何?」


「気づいてないのか?」


「え?」


「動いている?」


「私が?」


グリースは頷く。



ホーリー老人は、笑いだした!



「ごめん、ごめん、冗談だ!」



 老人は、グリースから手をはなした。


「良かったな娘さん、動けたね」


「なに、嘘だったの?」


「ごめんなさい」


 ホーリーは、グリースの首から手をはなし、二人に頭を下げた。


「もしかして、私の身体を動かす為に?」



「いゃちゃうよ、単なる年寄りの暇つぶしじゃよ」


 老人のポケットから溢れるビスケットに蟻が群がっている。


「お爺さん、あり、人食いあり!」


老人は、笑う。


「それも嘘?」


 老人は頷いた。


 グリースと葉日子は笑った。


【パピコ】


ダナン城へと向かう道


 グリースと葉日子は、城に向かって歩き出した。


「ねえ、また私を乗っけて!」


「お前、もう歩けんだろう!」


「歩くぞ!」


グリースは、甘えてくる葉日子に強く言った。


葉日子は、少し不貞腐れた顔をしたが、ふっと何かに気づいて足を止めた。


「雑巾男、ちょっと私、あの場所に戻ってくる」


「なんでや?」


「ちょっと待ってて」


【パピコとホーリー老人】


ダナンの丘


 ホーリー老人は、一人海をみていた。


そこに葉日子がやってきた。


ホーリー老人は、ふりむいた。


「お爺さん、さっきの渡して!」


葉日子は、ホーリーに向かって手を伸ばした。


「なんじゃ?行ったんじゃないのか?」


「戻ってきた」


「ねえ、さっきの渡して」



「なんの事かね?」



「ピストル」


「ああ、それはあそこじゃよ」


 老人の指指す方向に目を向けると、草むら放り出された銃があった。


 葉日子は、その場に近づくとまるで汚い物をさわるように銃を人差し指と親指で摘んだ。


「お爺さんには、もうこれは必要ないよね」


老人は、それには答えなかった。


「ねえ、お爺さん、私達はもうお友達よ、わかった?」


 葉日子は、ホーリーに続けて話した。


「たとえ、わたしたちが、どこにいようが、どんなに離れていようが私達は、友達、いい、忘れないでね」


老人は、微笑みを浮かべた。


「じゃあ、貰っていくね」


「お好きに」


「じゃあね、お爺さん!」


 ホーリー老人は手を上げた。


「気をつけな」



 葉日子は、老人に別れを伝え、ダナンの丘を去った。


『なんて子だ、ワシの事をお見通しか、、』


 老人は、先程までここで自分の命を絶とうしていた自分を思い返した。


 あの娘らが、こなかったら自分は死んでいたと思った。


 ホーリーは、腰を下ろした。



『ずいぶん、若い友達ができたな』



 深く刻まれた顔から笑みが溢れた。



 ダナンの丘にグラビトンという植物があり、それは人の願いを叶えるという噂がある。


【パピコとグリース】



ダナン城に向かう砂利道



 グリースは、戻ってきた葉日子に気がついた。


「ごめん、ごめん」


「雑巾男、これ持ってて!」


葉日子は、グリースに銃を渡した。


「なんや、こんなのお前欲しかったんか!」


「別にほしかぁ〜ないわよ」


「じゃあなんで?」


「お爺さんが、もういらないからって!」


「いや、オイラもいらんよ!」


「いいじゃない!もらっとけ!もらっとけ!


必要になる時がくるかもよ」


「いや、絶対こないだろう!」


 葉日子とグリースは、ダナン城に向かって歩き出した。



”ザック〟


”ザック〟


 ホーリーの銃が、グリースの後ろのポケットから少しだけ顔を出していた。



つづく。










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