第5話 『私を必要とする場所』

【パピコ】


地球


神奈川県鎌倉市



湘南鎌倉総合病院


”AM2:15〟


葉日子は、幼い日の絵本の夢をみた後、目が覚めた。



隣をみると佐々木は、カーテンを開けていびきをかきながら寝ていた。



再び寝ようとしたが、眠れなかった。



窓の外をみた。



すると窓の外に雑巾のお化けいた。


「あれ、あれ?鍵しまってる!」


グリースは、窓の鍵が予想外に閉まっていて困惑していた。


”ガチャ〟


”ガチャ〟


グリースは、窓を何とか開けようと思った。




グリースと葉日子は、目があった。


葉日子は、雑巾のお化けをみて驚いてベッドから落ちた。


”パターン!!〟


佐々木は、それでもいびきをかきながら寝ていた。


「失敗や!!窓からきたのわぁ、今のタイミングやないなー」


グリースは、自分の浅はかさを呪った。


『あれ?』


グリースは、中にいた橘葉日子がいなくなった事に気づいた。


『おらんくなった?』


グリースは、目をサーチライトのように光ら


せ病室内を照らし葉日子の姿を探し始めた。


葉日子は、ベッドの下に隠れていた。


『なんなん、アイツ、、』


【ドリーマーとガルダダ】


惑星ソラリス


カナンドール地方


ザバルナ峡


グリースがイノクニに行った後のザバルナ峡。


ドリーマーとガルダダがザルバナの裂け目をみながら話をしている。


「あの雑巾男は、本当に大丈夫なのか?」


ガルダダがドリーマーに聞いた。


「いや、彼じゃなきゃだめなんだ」


「あいつは、一体なにものなんだ?」


 ガルダダはドリーマーがなにかを知っていると思い言った。


「ただの掃除夫だ、それ以上でもそれ以下でもない」


ガルダダは、ドリーマーが何かを隠している気がした。


ザバルナ峡の下から強い風がふきつづけている。



【パピコ】


AM2:35


葉日子が顔を上げると目の前にグリースがいた。


葉日子は、びっくりしてベッドの底に頭をぶつけた。


「あなた、どこから?」


「正面玄関からきたんよ」


葉日子は、思った。



『なんで、窓のセキュリティばちりなのに正面玄関は開いてんのよ、ってかお化けだったら窓くらいすり抜けられるじゃないの?』


グリースは、ヘラヘラして笑っている。



葉日子は、なぜか目の前の雑巾のお化けがヘラヘラしているのかが、不思議だった。


ヘラヘラしている雑巾のお化けに葉日子は、恐怖が徐々に消えていった。


「あんた、橘葉日子ちゃんやよね?」


雑巾お化けに”違います〟とは言えずに葉日子は頷いた。


「雑巾お化けさん、私に何かようですか?」


「雑巾お化けやないで、グリースや、よろしくな!」


葉日子は、意外と喋れる目の前の物体に目を丸くしていた。


「あんたに、おいらの世界を救ってもらいたい」


「え、なに?どーゆー事?」


「おいらの国が、ピンチなんよ、んでその諸悪の根源の魔女をなんとかしてもらいたい?」


「魔女?」


葉日子は、なぜか”魔女〟という言葉にドキドキした。


「意味わかんない、なんでわたし?」


「訳はおいおいって事で早速、きてくれ!」


「いや、絶対いや、なんでいかないといけないの!意味わかんない!」


木村は、突然起き出して言葉を発した。


「パピコちゃん行っといで!」


「木村さん!?なに?起きてたん?」


「こう、うるさくちゃ寝てらんないわよ〜」


「ごめんなさい、この雑巾お化けが突然」


葉日子は、グリースを指差して言った。


グリースは、木村を見てヘラヘラした。


「なんかわからないけど、もしかしたらそのお化けの世界と地球に迫っている隕石が、なんか関係してんじゃない?」


木村は、真面目な顔して葉日子に言った。


「もしかして、そのお化けの世界が隕石になってんのと違う??」


続けて木村は言った。


「そのこじつけ逆に尊敬する」


葉日子は、佐々木の言葉に否定的な返答をした。


「あんた、変な事いうな!これからおいらの世界は、この子によって救われるから隕石とは関係ないと思うで!」


グリースは、木村に向かって抗議した。


「じゃあ、あなたの世界が救われなかったらどうなるん?」


「えーとその時は、、、ソラリス、、どーなるやろ?消滅やろか??」


「ソラリス?」


葉日子にとって、ソラリスは聞き覚えのある言葉だった。


「なんや?」


「今ソラリスって言った?」


そうだ、絵本に出てきた国に名前。


「ソラリス、それがおいらの住む惑星や」


『魔女とソラリス』


葉日子は、心の中で呟いた。


「あなたの住む世界には、ガルダダという賢者はいる?」


「ガルダダ様、知ってんのか?」


「やっぱり」



「死滅してしまう星、ソラリスの話し」


「縁起でもない事、いうなや!エェ、コ〜ラァ!」


葉日子は、頭の中を整理した。


『もしかしたら、なにか関係しているのかも、地球に迫っている隕石、そして私はグリースの世界で起こった事を絵本で知っている』


しかし葉日子は悲しい顔をしてグリースに言った。


「でも私は、身体が動かないの、この身体でなにもできない」


それを聞いたグリースは、ヘラヘラしながら言った。


「お、助けてくれるんか!」


「だから、私はあなたの世界に行ってもなにもできないって!」


「いや、そんなのわかんないやん、もしかしてコッチきたら身体動くかもしんないしな〜」


葉日子は、しばらく考えた。


『ここにいたって私はなにもできない。


自分を必要としてくる雑巾のお化けが目の前にいる』


葉日子は、ベッドの隙間から身の出しながら佐々木に向かって口を開いた。


「木村さんいつも良くしてくれてありがとう」


 木村は。とっさに葉日子の決意を感じとった。


「パピコちゃん、だめよ、必ず帰って来なきゃ」


葉日子は微笑んでうなずいた。


「木村さん、大丈夫、すぐに行って戻って


くるから、私がいない間、なんとかうまくお


願いします」



「まかせておいて」


木村は、葉日子にそういうと優しく微笑んだ。


「ほな、行こうかね」


グリースは、そう言うと、ポケットから丸い


青い石を取り出し宙に投げた。


するとその青い石は、ブラックホールみたいな穴になった。


「さぁ、おいらに乗って!」


葉日子は、頷いた。


「行ってくるね!」


木村は、葉日子の顔みて念を押すように言った。


「パピコちゃん必ず戻ってくるんだよ」


葉日子は、親指を立てて木村の言葉に答えた。


ブラックホールに向かって二人は飛び立ち、その穴に吸い込まれて一瞬で消えた。


しばらくするとその穴も、どんどん小さくなって消えた。


「さて、もう一眠りするかね」


佐々木は、布団をかぶり再び眠りだした。


ガバッ!


起き上がる木村。


「!!」


いなくなった葉日子のベッドを見つめた。



「ああ、今日はもう無理や、寝れん」


つづく




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