第4話 『掃除夫の決断』

【ドリーマー】


惑星ソラリス


ダナン城



 国王が鎮座する”王の間〟には、国王の他に、4人の側近と20名の兵士がいる。


その人数が居てもだいぶ余裕のある空間で、天井もとても高い設計になっていた。


そして、今その王の間には、騒めきが起こっていた。


 それは、ドリーマーという未来を見通す力を持ったエルフの言葉が原因だった。



「それは、この城中からザバルナ峡を経由してイノクニに行っていただく者を探す必要があります」


ドリーマーは国王に提案した。


「ドリーマーよ、ザバルナ峡がどんな場所かは、理解しているな?」


「もちろんです」


投げかけられた国王の言葉にドリーマーは、答えた。


「ザバルナが、未知の出入り口という事は、昔から言われいる事だが、あの場所に夢見て入っていた者は、全てその後、行方がわからなかったり、入り口に忌み嫌われた者は、死体となったのは知っているだろう」


 国王がドリーマーにザルバナの恐ろしさをつたえた。


 その場にいた兵士の中で、三番隊長を務めるラウルという男がいた。


 ラウルの心の中は、過去に起きた出来事に恐れをいだいていた。


(あの場所で友は、忌み嫌われ吹き上げる風の犠牲になった、ザバルナ峡の中に飛び込める者が、この城にいるとは思えない、、例え私でも、、)


三番隊長ラウルは、心の中で呟いた。


 ラウルがの横には、一番隊長のダンと言う男がいる、その男は、ラウルの緊張感を感じ、小声で叱咤しったした。



〈ラウル、なにを恐れている、国王からの命を受ければ我々は断れない、覚悟を決めろ〉


ラウルは、ダンの言葉を受け入れた。


 しかし、ラウルは、自分の恐れが気づかれてしまった事が、兵士として恥ずかしかった。



そんな中、側近のヤーコブがある提案した。


「ではドリーマーとガルダダのどちらかに行ってもらいましょう」


 側近ヤーコブが国王に語りかけるようないい方でそう言うとドリーマーは、それに対し答えた。


「いいえ、私とガルダダは行きません」


ドリーマーは、それがさも当たり前のような言い方で発言した。


「な、なに、!」


ヤーコブは、ドリーマーに対し高圧的な感情をあらわにした。


「私の体力では、入り口を越える事ができません、ガルダダには行けない理由がございます」


 ヤーコブは、ガルダダに”いけない理由〟を尋ねたが、ガルダダは”今は答える事ができない〟と言った。


 側近ヤーコブは、ガルダダに罵声を浴びせたが、ガルダダはそれを全て受け入れた。


 ガルダダは、国王に自分の不甲斐なさを表現するべく、頭を深く下げ床にひざまづいた。


 ドリーマーもガルダダと同じ行動をとった。


「もう良い、二人とも頭をあげなさい、城内の中からザバルナ峡に行く者を探し出そう」



 国王がそう言うと城内が、また騒めきだした。


「ドリーマー、確認だか”イノクニ〟に行き、その人間を連れてくると言う事で良いんだな」


「はい、イノクニとは、その世界では地球とも呼ばれおります、そこにこの世界を救う人間がおります」


「うむ」


「連れて来ていただいた後は、私とガルダダにある秘策がございますので、それをその人間に伝える予定です」


「わかった、まずはその人間を連れてくる事が先決だな」


「はい、そのとおりでございます」


城内では、誰がザバルナ峡に行くか議論され”騒めき〟だしていた。


(国王の間の階段付近)


 雑巾で拭き掃除をしている掃除夫が二人いる。


一人の掃除夫が、拭き掃除をやめて立ち上がった。


 その掃除夫の風貌は、雑巾に顔があり、あとは、手足がそこから生えているという人間離れした容姿をしていた。


 もう一人のキャプロスという男は、普通の人間の容姿をしていて、その場を離れよとす雑巾男に忠告した。


「おい、グリースどうした?」


 キャプロスは、相方の異変に気づききいた。


 雑巾男の名前は、グリースと呼ばれており、なにやらヘラヘラした顔で掃除夫キャプロスに答えた。


「キャプロス、ちょっとなにやら王の間が何やら騒がしい、おいらちょいと行ってくる」

 

「お前が行って何になる?」


キャプロスは、グリースをさとした。



グリースは、ヘラヘラしながらキャプロスの忠告を無視して王の間に足を運んだ。


”スタ〟


”スタ〟


 キャプロスは、グリースの行動に対し、舌打ちをしたが、仕方なくまた掃除を続けた。


『やれ、やれ、、』


グリースは、王の間の扉を開き、勝手に入った。


グリースは、王の間の異常な混乱をみた。


”ザワ〟


”ザワ〟


入り口付近にいた若い兵士にグリースは、今


のこの現象を尋ねてみた。


すると若い兵士は、初めは怪訝な顔をした


が、グリースの屈託のない表情をみて仕方な


く、説明してくれた。


「ふぅ〜ん」


グリースは、内容を教えてもらうとそう相槌あいずちした。


若い兵士は、最後に付け加えた。


「多分、誰もザルバナ峡に行く者がでないだろう」


(死のザルバナ峡か、、)


 グリースは、心の中で呟いた。



 ここで簡単にグリースの事を少し紹介しよう。


 雑巾の容姿をしたグリースは、掃除夫としてこのダナン城に雇われて、働いて1年になる、


 容姿は、先程も言ったが、雑巾に顔がついていて、その雑巾から人間の手足がでているという感じだった。


 周りの人間のグリースに対しての認識は、”カミアシ〟か”イタサレ〟《※》としてみられていた。


※カミアシ(元々生まれつき、人間ばなれした容姿の者)


※イタサレ(元々は、人間だったが魔女の魔法によって姿を変えられた者)


 グリース自身、昔の記憶を喪失してしまった為に、自分がカミアシかイタサレかを知らなかった。


という事がグリースの簡単な紹介である、では再び物語の続きを再開しよう。


 城内が混乱中、グリースは王の間の中央までテクテクと歩いてた。


城内の者達は、議論に夢中になり、誰もグリースの事に気づいていなかった。


グリースの通った後は、水がしたたり落ちていた。


”ぽた〟


”ぽた〟


 グリースは、ドリーマーとガルダダの横に立った。


 ドリーマーとガルダダがドリーマーに気づくと突然、グリースが口を開いた。


「おいらが、行くよ」


 城内は、ざわめいていてグリースの言葉は、かき消されていた。


 グリースの小さな勇気は、まだ誰にも届いていなかった。


「おいらが、ザルバナ峡に行くよ」


 城内の掃除をしてたキャプロスが、王の間をのぞいていた。


「あの馬鹿、王の前でなにしてんだ?」


 ドリーマーとガルダダは、そのグリースの言葉に気づいた。


 ガルダダは驚きの表情をみせたが、ドリーマーは、相変わらず無表情だった。



グリースは、さっきより大きな声で言った。


「おらが、行くよ!ザルバナ峡に!」


今度は、その声が城内の者に聞こえたよう


で、城内が鎮まりかえった。


、、、



 国王が怪訝そうな目で、グリースをみた。

 


一番隊長ダンが三番隊長ラウルに聞いた。


「あいつは誰だ」


「掃除夫のグリースです」


グリースは、注目浴びたがヘラヘラとしていた。


側近ヤーコブが、突然のグリースの申し出に拒絶した。


「お前は、掃除夫だな、なにしにきた!こんな大事な任務、おまえごときにつとまるか?」


「おいら以外に、行ける者はいないと思うよ」


グリースは、側近ヤーコブにそう言った。


国王はグリースの言葉に眉毛を顰め、ドリ


ーマーに質問を投げかけた。


「ドリーマー、ザバルナからイノクニに行った者はいるか?」


「はい、10年前に一人、エルフの者が」


「その者は健在か?」


「はい、今も”イノクニ〟で生きております」


国王は、その言葉を噛みしめて、またドリーマーに質問した。


「普通の人間では、ザバルナ峡ははむりか?」


「無理でしょう」


「では、今目の前で懇願している者ではどうだ?」


ドリーマーは、少し黙った。


城内には、沈黙が逆に重苦しい空気を醸し出した。


 その空気を変える音がドリーマーの口から発せられた。



「彼は、飛べます、適任かと思います」



 ドリーマーは、そう無表情で答えた。


 グリースは、驚いた。自分が飛べる事を誰も知らないはずだと思っていた。


 側近ヤーコブは、ドリーマーの発言に苦い顔をした。


 そしてまたグリースは、相変わらずヘラヘラしだした。



【地球にきたグリース】



地球


神奈川県鎌倉市


滑川周辺


真鍋直樹と三好佳純が滑川の周辺を歩いている。


「橘の病室に”花を届けている〟って誰なのかな?誰かが業者に頼んでいるとか?」


直樹は佳純に聞いた。


「多分、橘さんのファンじゃない?」


「あいつファンがいるのか!誰だ、学校のやつかな?」


「なんか、ムキになってない?」


「いや、なってないって」



直樹は、バツが悪くなり変える話題をさがした。


”ジャパーン〟


川に何かが落ちた音がして、直樹が気づいた。


「川に誰が、落ちた?、それとも石?」


「魚じゃない?」


見ると鯉が跳ねた。


”ぱしゃ〜ん〟


「魚か、、」


直樹が呟いた。



二人が去っていた後、川から何かが顔を出した。



”バシャ〜ン!〟


 川から出てきたのは、雑巾の顔したグリースだった。



グリースは顔を、振った。



”ブルブル〟


グリースは、岸に上がるとキョロキョロしだした。


『はぁ〜死ぬかと思った』


グリースは、心の中で呟いた。


岸まで泳ぐとグリースは、岸に上がった。


そして、キョロキョロして何かを探した。


そこに、一匹の茶色柄の猫が歩いてきた。


グリースは、猫に喋りかけた。


すると猫が歩きだし、その後をグリースは、


ついて行った。



 目的地と思われる場所に着くと、茶色柄の猫は、鳴き声をあげ”くるり〟身を、その場から違う方へと変え去っていた。


グリースは、茶色柄の猫があまりに早く去って行ったので、礼をいいそびれてしまった事に少し後悔を感じた。


グリースが懇願した目的地は、タバコ屋だった。


『ここだな』


タバコ屋では、店主らしきお婆さんがコックリコックリと昼寝をしていた。


グリースは悪いと思ったが、お婆さんを起こす事にした。


お婆さんは、グリースに気づくと自分の横で寝ている茶色の丸々太った猫に向かって言った。


「アンタのお客さんだよ」


丸々太った猫が目をあけると


またお婆さんは、寝入りしてしまった。


太った猫はグリースに言った。


「久しぶりの客だな?どこからきた?」


「こんちは、惑星ソラリスからきました」


グリースは、ヘラヘラしなが言った。


「ソラリス、確か10年前にもソラリスからきた者がいたな〜」


太った猫は、昔を思いだしているようだった。


「今日はなにが希望だ?」


太った猫は、グリースに言った。


「両替をお願いしますだ」


 ここは表向きは、タバコ屋だが、裏の顔は、宇宙人達の入り口で様々なご用聞き場みたいな場所だった。


 グリースは、カナンドールのお金と地球のお金を交換してもらった。


グリースは、身体の後ろについているポケットにお金を入れた。


「地球は何しに来たんだ?」


太った猫は、聞いた。


 グリースはヘラヘラしながら、もう一つのポケットから紙を取り出して言った。


「この人間を連れて帰る為にきた」


 その差し出した紙は、”橘 葉日子〟の写真だった。


つづく




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る