第3話 『未來を知る者】

【未來を知る者】


惑星ソラリス


10年前の世界



 10年前のガルダダの外見は、頭は坊主頭で無精髭が生えている。眉毛は、後半部分が少し上がっていて、まぶたは一重で目は鋭い感じがしたが、同時に暖かさを人に与えた。


身の丈は、168センチ前後で筋肉質ながっしりした身体つきをしていた。


〜エルフの里〜


 ガルダダは、ラプータと別れた後、エルフの里に来ていた。


それは、”ドリーマー〟と呼ばれるエルフに会う為だった。


ドリーマーは、髪が、肩までと長く、色白でとても病弱に見えた。


全体から発する感じは、覇気がなく、身体はまるで借り物のようにみえた。



身の丈は、172センチとエルフ族にしては、とりわけて小さかった。


病弱の為かドリーマーは、ほとんど人に合わなかった。


それは王家の者でも例外ではなかったが、ガルダダという男だけは、ドリーマーにとって特別な存在だった。


「ガルダダ様が参らられましたが、どうしましすか?」


下女がドリーマーに聞いた。


『ガルダダ』


 ドリーマーは、一人呟き、ガルダダの訪問を快く受け入れた。


二人は、軽い挨拶をかわした二人後、ガルダダが話し始めた。


「私は、10年後の世界から来た」


「どうやって?」


ドリーマーは無表情で聞いた。


「叡智の箱」



「ふ〜ん」


ドリーマーは、”叡智の箱〟と聞いても全く驚いていない様子だった。


ガルダダは、この男が未來がみえるだけではなく、知識も相当あるという事を知った。


ドリーマーは、無表情でガルダダの言葉を待っていた。


ガルダダが、話し始めた。


「私の過ちでこの惑星を死なせてしまった」


「そうか、私の”見た未來〟でもそうなっている、君のいた10年後の世界では、やがて惑星ソラリスは、隕石となって地球という惑星に衝突するだろう」


「叡智の箱が言っていた、他の惑星にも影響するというのは本当だったか」


「だが、今回君は、叡智の箱に出会い、10年前のこの世界にきた、それは何故かわからないが、私のみた世界線と異なっている」


「私の死期が近いから能力が落ちているのかもしれない」


「もう長くないのか?」


ドリーマーは、頷いた。


「君は、未來がみえるから死期が近いのは、本当だろう、でも未來は変える事はできるんだろう?」


ガルダダは、ドリーマーに聞いた。


「君は今もっと大事な事を僕に聞くべきだ」


ドリーマーは、無表情にガルダダに対して言葉を発した。


ガルダダは、頷くと答えた。


「君に質問をしたら未來が見えてしまう、、私は君に世界を救うべき協力してもらいにきた」


「うん、わるくない」


ドリーマーは、無表情のまま、言葉を続けた。


「しかし私の能力は、未來がみえる事くらいしかない」


「ああ、わかっている、でも未來を知るのは恐ろしい」


ドリーマーは無表情でいた。


「この世界はやはりまた終わる運命なのか?」


ガルダダは恐る恐る尋ねた。


ドリーマーは、少し間を置き答えた。


「いや、僕はもうひとつの世界線をみた、つまり今、僕と君がいるこの世界線の未來」


ドリーマーは、話しを続けた。


「この世界線では、世界は終わらない。そして今回は君は魔女退治に行ってない」


「では誰が?」



ガルダダが聞いた。



「その人間は、地球にいる」


ドリーマーが答えた。


「地球になんて因果だ、、。この惑星が隕石になって衝突する星に、、」


「もうすぐ、我々エルフの民は、この地を去る、しかし私は、ここにしばらく残って君に協力する」


ガルダダは、ドリーマーの心遣いに感謝した。


「ガルダダ、この世界を託す者に、我々でやらなけばならない事ある」


ガルダダは、”そのやらなければならない事〟は何かとドリーマーは聞いたが、後で説明すると言った。


他の疑問に思っている事をドリーマーに聞いた。


「ドリーマー、エルフの民がこの地を去るのは、やはり世界が終わるか?」


「そうだ、私の予言だ」


「でも世界線が変わったのなら行く必要はないのではないか?」



「エルフ達が”ほかの地〟に行く事はこの世界線でも変わらない」


「世界が救われるなら、”ほかの地〟に行く事は無駄じゃないのか?」



「ガルダダ、さっきの質問に答えよう」


「さっき?」


「未來は決まっているかという事だ」


「物事が極端にいく事があれば、未來はかわる」


「運命を変えられる?」


ガルダダがそう聞くと、ドリーマーが頷いた。


「同時に私が見た未來も変わる可能性があるという事だ」


ドリーマーが続けて言った。



『未來は決まっているが決まってないという事か』


ガルダダは心の中で呟いた。


「あとひとつ。君に覚えもらいたい事がある」


「それは?」


「君にも時間がないという事だ」


ドリーマーは、なんの感情も感じられたい顔でそう言った。


【真鍋と金田】


地球


アメリカ合衆国ワシントンD.C.


NASA


(アメリカ航空宇宙局)


休憩室



「ははは、金田くんもそれ、まじか!あはははは、あはははぁ!」


 真鍋は、金田の話しに爆笑していた。周りで休憩しているのは、ほとんどアメリカ人でに日本人は、真鍋と金田だけであった。


「真鍋さん、笑いすぎですよ、小さい頃の話しなんで、そんな面白いですか?」


「いや、金田君も人の子だったんだね」


「誰にいわないでくださいよ」


金田は、困った表情でそう言った。


「金田くんが。子犬に吠えられてオシッコもらしたとわな〜」


金田は、心の中で呟いた。


『なんでもう一回いうかな〜この人」


そして、真鍋に反撃するべく言葉を返した。


「いや、真鍋さんのうんちもらした話しのほうが凄いでしよ」


「ははあれは、ホント参ったよ、あれは随分大人なってからだかな〜」


金田少し顔を背け、肩がヒクヒクしている。


真鍋が、自分の上司という事もあるので笑うのをできるだけ押さえた。


「親父も随分厳しい人だったんだよね」


真鍋が続けた。


「それで、事業資金500万をお父様に借りれたんですか?」


「いやいや、そうは簡単にいかないよ」


「さすがに500万は、大金ですからね」


「そこで私は、親父を説得する事3時間したんだ」


「凄いですね、聞いているお父様も凄い」


金田が感心してそう言った。


「もう無理だと思ったよ、そしたら親父がなんか臭いなって言ったんだ」


真鍋は、少し早口になり続けて話しをした。


「そこで、俺は気づいたわけ、俺、うんち漏らしてたの」



「ははははははは、、!!」


金田は、押さえらず、笑った。


ずれたメガネを戻しなが真鍋に聞いた。


「自分で気づかなかったんですか?」


「ああ、全くな」


「そんな人います?生理現象に気づかない人なんて?」


「ここにいるじゃないか、わはははぁ」


真鍋は、自分の自虐ネタに誇らしげになっているようにもみえた。


「それからトイレに行ってその後、親父にまた説得しようと思ったら、親父が”もうわかったよ〟貸してやるって」


「へーなんか、最後は、逆に”いい話し〟ですね」


「うんこ漏らした所がか?」


真鍋が冗談交じりに言った。


「そこじゃないですよ」


真鍋が笑った。


雑談が終わると二人はアイスコーヒーに口をつけた。


アイスコーヒーを飲みなら、金田が話題をふった。


「真鍋さんってお子さんいらっしゃるんでしたけ?」


「高校2年になる息子と中学1年の娘がいるよ」


「息子さんと娘さんにはじゃあお父様の様に厳しく育てられたのですか?」


「いや、全然、自分の親と逆」



金田は少し意外な顔をした。



「金田くん、奇跡って信じるかい?」


真鍋が突然、変な事をいいだした。


「いや、私は唯物論者です、論理的でないものは全て信用していません」


「そうか、私と同じだな」


「でも、息子と娘は違うんだ、自由に育ってすぎたのが、原因かもしれないけど」


「そうなんですね」


金田は、聞き手に回っていた。


「最近、息子の同級生に左半身麻痺になってしまった女の子がいるらしいんだか、息子はその子が、絶対良くなると信じているんだよ」


「左半身麻痺ってどのくらいですか?」


金田は、その女子高生の事が少し可哀想になりそう聞いた。


「とても重症で一人では歩けないらしい」


真鍋は、窓の外に目を配らせて言った。



「毎朝、アイツは学校に行く前に神社に行っ


て願掛けているらしい、そんな事しても無駄


なのにな、、馬鹿なんだよ、アイツは」


金田は、氷だけになったカップをすす

った。


「多分、息子さんはその子の事が好きなんですね?」



「そうなのか?」


真鍋は驚いた表情でそう言った。


「そうですよ、好きじゃなかたらそんな事しませんよ」



「そうか」


そう言うと真鍋は、またアイスコーヒーの入ってないカップに口をつけた。


しばらく二人は、なにも喋らなかった。


”ジュ、ジュ〟


金田のアイスコーヒーが空になったおとがした。


「そろそろ、僕いきます」


真鍋は、頷いた。


金田は、立ち上がりアイスコーヒーの空のカップを丁寧にゴミ箱に捨てた。


「ご馳走様でした、じゃあ戻ります」



「私はもう一杯飲んでから戻るよ」


金田は頷いた。


真鍋は、自分のカップをゴミ箱に入れると


コーヒー焙煎してくれる自動販売機の前にだった。


金田は、自分の仕事場に向かった。


【ガルダダとドリーマー】


惑星ソラリス


カナンドール国



ガルダダがこの世界に戻って8ヵ月後


国王に魔女退治を依頼される日が来た。



〜首都ダナン〜


ダナン城



カナンドールの首都ダナンにその城はあった。



国王の部屋に通されるガルダダ。



ガルダダの目の前に国王いる。



「よく、来てくれたガルダダ、あなたにお願いしたい事があります」


ガルダダは、国王の言葉にひざまづいて聴いている。


「諸悪の根源である”メフィルトの魔女〟をなんとか制してもらいたい、その処分はあなたにお任せいたします」


「国王様、すみませんがそれはお断りいたします」


ガルダダは国王の要請を拒否した。


「なにをガルダダ、貴様、断るというのか!」


側近ヤーコブは、腹をたてた。


国王がそれを制した。


「ガルダダに訳をききたい」


「その件に関しては、私は不適任者です」


「なにを申す、大賢者と呼ばれているお前以外に頼める者は居らぬ」


「大剣士アスロンがおります」


ガルダダが、言葉を返した。


「アスロンは、城から追放した者だ、アスロンの性格上、ガルダダ、お主の口から説得して力を貸してもらうしかない」


「国王様、アスロン以外の人物がもう一人おります、多分その者がアスロンを説得してくれるでしょう」


「それは、ドリーマーの事か?」


ドリーマーが無表情に国王室に入ってくる。


ドリーマーは、国王の前でひざまづいた。


「表を上げよ」


国王がそう言うとドリーマーは、顔わ上げ口を開いた。


「先ほどのガルダダの話しは、”私の事ではありません〟私は未來をみる事しかできません」


『何をエルフの分際で未來が見れるなどと』


側近ヤーコブは、心の中で呟いた。


「そうか、お主ではないのか、では誰であるか?」


国王は、ドリーマーにきいた。


「その前にお話ししましょう、私がみた未來の世界を」


「なにが見える?」


国王が聞いた。


「この世界の終わりです」


ドリーマーは、そう答えると続けた。


「ガルダダ、ラプータ、アスロンの三人で魔女退治をした末路です」


「その結果、世界が終わるというのか」


「はい、終わります」


ドリーマーは、無表情に答えた。


「なんと、いう!未來など決まっておらぬわ!」


側近ヤーコブが口を挟んだ。


「静まれ、ヤーコブ!、私はこのドリーマーという男の能力を信用している、その男を罵るという事は、私を侮辱している事になるが、そうなのか?」


国王がヤーコブを制すと同時にそう言った。


「す、す、すみません、申し訳けございません」


側近ヤーコブは、国王にひざまずいた。


「ドリーマーお前、病にふせていたと聞いたが、身体は大丈夫なのか?」


「はい、もう命の灯火は消えかかっております」


ドリーマーは、力なくそう言った。


「そうか、今日はよく来てくれたな、本来ならそなたに知恵を貰いたく、何度か城の者を走らせていたのだか、お前からの知恵は貰えなかったと聞いている」


「それは、失礼いたしました」


国王まえでひざまづいた。


「もうそれはもう良い、ドリーマー、先程のアスロンを説得できる者を教えてはくれぬか?」


「はい、その者こそが、アスロンを説得でき、この世界も救ってくれましょう」


「だからその者は、どこにいるんだ!」 


側近ヤーコブが、じれったいドリーマーを急かすべ口を挟んだ。


「イノクニ※にいます」


※ダナンの間では、地球のイノクニと呼んでいた。


「イ、イのクニ、それは不可能ではないか?」


側近ヤーコブが言った。


「不可能ではございません、この城内からザバルナ峡に挑む者があれば可能です」


ドリーマーは、ヤーコブの事を受け流すかのように言った。


「ドリーマー、ザバルナ峡は、なんと言われいるか、知っての事か!」


側近ヤーコブがドリーマーを怒鳴りつけた。


「死の入り口」


ドリーマーが無表情でそう答えると城内のざわめきだした。


城内の兵士が、いった。


「未だかってザルバナ峡から生きて戻ってこれた者はいない」


国王の顔に緊張の色が走った。


つづく

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