第184話 三国同盟!

――オベロン王宮。



「失礼します」

「もう来たんか」


ヘレナの自室。その扉を開けて3人が入ってくる。中にはヘレナとダンがいた。


「どうも!」

「ヘキオンちゃん!さっきぶりやな!」

「怪我は大丈夫ですか?」

「へーきへーき。唾つけときゃ治る治る」

「そればっちい……」

「ホンマにするわけとちがうで」



アネージュが2人に近づく。


「話は?」

「聞いとる。エラいことになったな」

「アイツらの依頼主分からへんさかいなんとも言えへんけど……嘘って言うには不思議な点多すぎる」


オベロン。バグリジェ。王都。三つ巴の話し合い。全員が大物。空気もピリついている。


あーでもない。こーでもない。話し合い。慎重に進む。場合によっては無駄足となる。それは資源も時間も無駄だ。


だから全員で慎重に話し合っていた。時間にして10分ほど。短いが、3人からしたら1時間以上にも感じたはずだ。そんな時――





「――とりあえず3人で協定を結んで、明日に軍が来なかったら3人で戦争をする……でいいんじゃないんですか?」


ヘキオンが割って入ってきた。


「「「……」」」

「……ダメ……ですかね?」

「それはいいな」

「それええな」

「それええやん」



満場一致。ヘキオンの発言で全てがまとまった。


「じゃあそういうことで」

「え、え、こんなサラッとでいいんですか?」

「それ以上の案は思い浮かばないからな。……それに考えるのもめんどくさくなってきた」

「『三国同盟』ってとこか……燃えてきたなぁ!!」


オドオドとするヘキオン。民や兵士を率いるためには、こういう判断力も大事。その点で見るなら、ヘキオンに王としての素質はないのだろう。




「――手伝うてくれるってほんま!?」


ダンとアネージュが帰った後。カエデはヘレナに『戦争に行かせてくれ』と頼んでいた。


「アネージュ様から頼まれてた。頼まれてるからには嘘はつけない」

「いや助かる助かる!……でもカエデはんはいいとして、ヘキオンちゃんは大丈夫なん?」

「私はもちろん大丈夫です!前衛でバッタバッタと活躍しますから!」

「ダメ。ヘキオンは後ろにいろ」

「……え!?」


ショックそう。心を持ち直したとはいえ、まだ目立ちたい欲は残っている。


「な、なぜ……」

「危なすぎる。今回は魔物との戦いじゃなくて、戦争だ。俺だって助けにいけるか分からないんだぞ」

「それは……そうですけど……」

「そうやな……ヘキオンちゃんには民衆の避難を促してきてもらおかなぁ」

「私戦ったらダメですか……?」


みんなが戦ってる中、1人だけ安全地帯にいろ。ヘキオンはそう言われているかのように錯覚していた。



「あかんってわけとちがうけど……これも重要な仕事やで。避難のややこしいお年寄りや怪我してる妖精を守んねん。もし軍突破された時は――ヘキオンちゃんがその妖精たちを守んねん」

「私が……守る」


これも重要な仕事。とても重要な仕事。任されるということは、信頼されているということだ。


「――精一杯頑張ります!」

「流石ヘキオンちゃん!頼りになる!」

「えへへ……」



「カエデはんはどうするん?」

「後ろで見てる。危なくなったら出てくるよ」

「え、前衛で戦わないんですか?」

「戦争を挑まれたのはコイツらだ。助けはするよ。だがそれはするだけだ」

「……」

「あんたならそう言うと思ったわ。それに手を借りんのならそれが一番やしな!」

「うーん……」


ヘレナは別に気にしてないようだが、ヘキオンは不服そうだ。やはり心優しい。ヘキオンと違ってカエデはドライである。


だがそれはオベロンのことを思ってのこと。ヘキオン関連以外では、カエデは感情論で動くこともない。


○○だから●●。というのを徹底しているだけ。別に非情という訳では無いのだ。



「ほなカエデはんは見張りくらいはしといてくれる?敵がひねくれたやつやったら、『明日に襲撃する。そやさかい日付けが変わった瞬間に戦争しかけるで!』なんて奴らかもしれへんし」

「それくらいならいいよ」

「ヘキオンちゃんは……まだ動かんでもええかいな。誘導はウチの兵士たちがやってくれるさかい、ヘキオンちゃんは集まってる人たちの護衛をしてな」

「分かりました!」


重要な役割。そして戦い。そして悪夢のような1日……。


その日はヘキオンにとって忘れられない日になることをヘキオンはまだ知らない。












続く

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