第35話 剣の錬成と敵襲 第一章完結
あっという間に王宮に瞬間移動で帰ってきた一行。
「ほんとに便利な魔法だな」
「行ったことある場所だけですけどね」
「みなさーん! おかえりなさい!」
「この声は……!?」
ペルーサが振り向くと白猫のミネットを抱えたカノン姫の姿。
「カノン様! ただいま戻りました」
「無事でよかったですわ。オリビアとグリンダも無事でよかったわ」
「姫様……ありがとうございます」
「オリハルコンは手に入りましたか?」
「はい! オリビアさんがボスを倒してくれました」
「まあ! すごいですわオリビア!」
「いえいえ、二人の協力のおかげですよ」
「あ、そういえば……これお土産です」
ペルーサはオリハルコンの破片をミネットに見せる。
カノンはデーモンの呪いで視力を奪われ、現在は愛猫のミネットの視界を共有して見ている。
「これは……もしかして、オリハルコンですか!?」
「そうです。奇麗な石だったのでお土産にと思いまして……」
「まあ! 初めての見ました……嬉しいです」
「いやぁ、喜んでもらえてよかったです!」
「あら、急にデレデレしちゃって。いつの間にお土産なんてとってたのかしらね?」
「グ、グリンダさん!」
照れるペルーサをからかうグリンダ。
「ふふ、みなさんお疲れでしょうから今日はゆっくり休んでくださいね」
「そうだな、今日は疲れた。ペルーサ、オリハルコンの剣の錬成は明日頼むよ」
「はい、今日のうちにもう一度図書館で勉強しておきますね」
「すぐにお風呂の用意をするのでみなさん疲れを癒してください! 旅の最中はお風呂なんて入れないでしょうから!」
「いやぁ、カノン様! それがそうでも――」
「ありがとうございますっ! さあグリンダさん、オリビアさん! 先にお風呂どうぞ!」
「ちょ、ちょっとペルーサくん!」
「?」
グリンダの話を急いで遮るペルーサ。
山の温泉のことがカノンにバレたら大変なことになる……と思ったペルーサであった。
◇
オリビアとグリンダが入浴の間、ペルーサは図書館で錬成の勉強をしていた。
「うーん、ダンジョンではとりあえず剣の錬成はできたけど……」
最後に予習をして、オリビアに少しでもいい剣を錬成してあげたいという気持ちからだった。
「ペルーサ」
「ん? カ、カノン様!?」
勉強中のペルーサの元にやってきたカノン。
「錬成の勉強ですか?」
「そうですね。少しでもいい剣を作りたくて……あ、オリビアさんとグリンダさんは?」
「二人はまだお風呂に入ってますよ」
「そうですか!」
なぜか一安心のペルーサ。あの二人と風呂がくっつくといつも事件に巻き込まれる。
「あの二人はケンカも多いですけど仲がよくて姉妹のようですわ。うらやましいです」
「……カノン様は兄弟は?」
「私は兄弟はおりませんわ」
(そういえば今までカノン様の家族構成とか聞いたことなかったな……聞いていいものなのか?)
「母は私を産んですぐに死んでしまったので、家族は国王の父だけです」
ペルーサの聞きたいことを察したかのように話し出すカノン。
「そうなんですか……」
「あ、でも母の妹……私の叔母はおりますね。今は隣国のタブライアの国王の妃として向かい入れられましたが……あまり仲良くはないですね……」
複雑な表情のカノン。
「タブライアですか。僕も詳しくはないですけど……たしかあまりよくない国って聞いたことが……」
タブライア、この国の隣の王国。豊かな国ではなく戦争の絶えない治安の悪い国だ。
「そうなんですよね。それもあって父も最近忙しいみたいで」
「そうなんですか……なにか僕に手伝えることがあったら言ってくださいね」
「はい! ありがとうございます」
(タブライアか……カノンさんの叔母さんのこともあるし今度調べてみよう)
◇
翌日、いよいよオリハルコンの剣の錬成をすることに。
王宮の庭に集まるパーティとカノン。
「さあ! 頼むぞ」
「はい! 昨日、最後に勉強して錬成魔法に磨きをかけましたから!」
収納魔法からオリハルコンの塊を出す。
「す、すごい大きさですね……」
持っているお土産の破片と見比べるカノン。
「しかもメチャクチャ硬いですからね……大変でしたよ……」
「ペルーサ君! 材料が余ったら私に指輪でも作ってね!」
「……いや、カノン様になら作りたいけど……」
「ふん! いいわ、自分で錬成魔法練習するわ!」
怒り出すグリンダ。
「じゃあ、いきますね……」
――錬成魔法――
オリハルコンの塊が光包まれる。
「ん……すごい魔力使いますね……」
「破片と比べたらそうだよな……がんばれペルーサ!」
時間はかかるが徐々に形を変えるオリハルコン。
やがて剣に姿を変えた。
「はあ、はあ、できました!」
「すごい! ありがとう!」
オリビアは出来たばかりの剣を持ち上げる。
「うむ! いい剣だ!」
「うまくいってよかったです」
ご機嫌に剣を振り回すオリビア。世界に一本の緑色の美しい剣に満足のようだ。
「だいぶ重い剣だ。もっと私がレベルアップしないと使いこなせないな」
「そんな重いんですか?」
「持ってみるか?」
オリハルコンの剣を受け取るペルーサ。しかし、
「うわああ!」
剣はあまりの重さにすぐに手から落ちる。
『ドンッ!!』
「……オリビア……あんたゴリラだったのね……」
地面にめり込む剣を見てグリンダがつぶやく。
◇
「最強の剣も手に入れたし、いよいよこのパーティも最強に近づいて来たな!」
「そうですね! 魔法使いの僕とグリンダさん、そして剣士のオリビアさん……あれ? 誰か忘れてるような……」
その時――
「敵襲ーー!!」
城内に大声が響く。
「敵襲!?」
「カノン様! お逃げください! 王宮の周りが大量の魔獣に囲まれています!」
王宮の門番が言う。
「魔獣ですって!?」
不安な表所のカノン。
ペルーサ、オリビア、グリンダの三人は走り出す。
「カノン様! 部屋に戻ってください! 僕たちで倒してきます!」
「いこう! 新しい剣の切れ味を試してやる!」
「行きましょう! それでどんな魔獣なの?」
「大量の野犬型の魔獣です!」
三人は足を止める。
「や、野犬……!?」
◇
「おー! きたぞペルーサ!」
「アコン……王宮にそんな大勢の山犬を連れてきたらダメじゃないか……」
「野犬って聞いてまさかと思ったけど……」
王宮を囲む野獣の群れの正体はアコンが連れてきた山犬だった。
「すまんな、こんな驚かれるとは思わなかったんじゃ」
「私たちが戻ってなかったら大変なことになってたわ……」
青ざめるグリンダ。
「あの……この方は?」
カノンはいきなり現れた少女のことをペルーサに聞く。
「あ、彼女はアコンといって、旅で会った山の姫なんです」
「おー、お前がカノンか!」
『パシッ!』
「こら! 失礼でしょ!」
アコンの頭を引っ叩くグリンダ。
「イタタ……すまん、姫か! 私もデーモンを倒す手伝いに来たんじゃ!」
「え? デーモンを?」
「私たちの山をペルーサ達が助けてくれたからな! 恩返しじゃ!」
◇
ペルーサはアコンと仲間になった経緯を話した。
「そうですか……工事のせいで食べ物が……ごめんなさい、アコン」
「そんな! 謝らんでくれ姫! ペルーサのおかげで前より快適になったくらいじゃ!」
ペルーサの作った橋は山犬の生活の役に立っているようだ。
「一緒に戦ってくれるんですね。感謝します、アコン」
「よろしく! 姫!」
カノンと握手をするアコン。
「これが今のこのパーティの最強メンバーってことだな!」
「そうですね!」
「この野生児には世間の常識から教えないといけないわね!」
「うるさいなぁ! おばさんは!」
「お、おばさん!?」
グリンダにまた引っ叩かれるアコン。
「ふふ、力強い仲間が増えましたね」
カノンがペルーサに言う。
「はい、これでデーモン討伐にも一歩近づきました」
「そうですね……でも」
カノンはペルーサを睨みつける。
「な、なんですか? カノン様……!?」
「また女の子の仲間なんですね! それもあんな可愛い若い子なんて! ペルーサには女の子を引き寄せる力でもあるんですかね?」
ふてくされるカノン。
「そ、そんな! 違いますよ……」
最強魔法使いのペルーサ
オリハルコンの剣を手に入れたオリビア
頭脳と経験、召喚魔法を操るグリンダ
山犬を操る山の姫アコン
デーモン討伐に向けてパーティは揃った。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!? さかいおさむ @sakai_osamu
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