第32話 結局変態扱い・・・
人間給湯器のペルーサは不本意ながらも上の岩場に瞬間移動魔法でワープする。
間近で見る滝はなかなかの勢いだ。
「これ……温めるなんてできるのかな?」
初めての経験に不安なペルーサ。
「ペルーサくーーん! 聞こえるぅぅう?」
下の水辺からグリンダの大声が聞こえる。
「聞こえますよーーー!」
「早速温めて頂戴!」
「はーーい」
「幸せものねペルーサ君は!」
「え? なんでですか?」
「そこから私たちの裸覗き放題よーー!!」
下ではグリンダ、オリビア、アコンの三人がさっそく服を脱ぎ入浴の準備はバッチリのようだ。
「……なにも見えやしないな……別に良いんだけどね……」
はるか遠く、豆粒のような大きさにしか見えないグリンダから言葉に黙るペルーサ。
「さあ、はやく温めよう」
――炎魔法――
ペルーサは手から吹き出す炎で滝を温める。
「温度はどうですかーー?」
「まだ全然冷たいわよーー!」
「もっと強くするか……」
ペルーサは火力を上げる。滝から落ちる水が沸騰する勢いで熱せられる。
「ちょ、ちょっとーーー!! 熱すぎるわよ! 茹で殺す気!?」
遠くからグリンダの怒り声が響く。
「もう! 加減が難しいんですよ!!」
その後、試行錯誤しちょうど良い火力を見つけたペルーサ。
「いい温度よー! そのまま温め続けてーー」
「はぁ……」
いくらレベル100でもきっとグリンダたちにはいつまでもこき使われ続けるんだろうな……そう思ったペルーサ。
◇
「ふう、いい温度ね」
「ああ、露天風呂なんて最高だ」
「温かい風呂なんて初めてじゃ……いいもんじゃな……」
一方、ペルーサの苦労も知らずに温泉を満喫する三人。
「そういえば、なんでお前たちはオリハルコンのダンジョンを目指してるんじゃ?」
アコンが不思議そうに聞く。
「ああ、私の剣が折れしまってな。新しい剣の材料で使うオリハルコンを採りに行くんだ」
「付き合わされるこっちはいい迷惑よ」
「ふふ……グリンダもなんだかんだ優しいんじゃな!」
「そんなんじゃないわよ!」
照れるグリンダ。
「そういえばアンタはなんで山で暮らしてるのよ?」
今度はグリンダがアコンに聞く。
「ああ……私は物心つく前に山に捨てられてな。山犬に育ててもらったんじゃ」
「そうなの……」
「でもや山の生活もいいもんじゃぞ?」
「ふふ、元気に育ってよかったわね」
温泉でご機嫌なせいかいつもより少し優しいグリンダであった。
それから三人はペルーサがすごいレベルの魔法使いのこと、デーモンの呪いにかかったカノン姫を救うためにデーモン討伐を目指している話などをした。
「そうか……ペルーサはデーモンを倒したいのか……山で暮らしてる私でも聞いたことがあるくらい凶悪な敵じゃな……」
「そうだな。そのためにもオリハルコンの剣を作らねば」
「私も力になるぞ! 一緒にデーモンを倒してやる!」
アコンは力強く言う。
「あら? ずいぶんペルーサ君のために頑張るのね……もしかして……」
「ち、ちがう! そんなんじゃないぞ!」
顔を赤らめるアコン。
「ふふ、可愛いわね。まあでも……そんな貧相な体じゃペルーサ君は見向きもしないでしょうねぇ」
「な、なんじゃと!?」
「私のようなグラマラスなボディをペルーサ君は求めてるからねぇ」
グリンダは自らの体をアピールするようにポーズをとる。
「グ、グラマラス!?」
グリンダとオリビアに比べ、貧相な自分の体をそっと眺めるアコン。
「い、いいんじゃ! そもそもペルーサはなんて好きじゃない!」
「いいじゃないか……青春だ!!」
「うるさい!」
ガールズトークに花を咲かせる三人。
その時――
『バッシャーーーン!!』
「きゃあぁぁあ! 何!?」
入浴中の三人の目の前に何かが落ちてきた。
「なんだ!? 敵か!?」
立ち上がり剣を取るオリビア。
「ううぅ……」
「!? ペ、ペルーサ!?」
「す、すみません……足を滑らせてしまっ……え??」
岩場から落ちてきたペルーサ。温泉から起き上がると目の前には剣を構え仁王立ちのオリビアが。
「あ……オリビアさん……その……」
「ペルーサ……覚悟!」
「ちょっと! 待ってくださいよ!」
「言い逃れできんぞ!!」
『ビュンッ!!』
剣を振り下ろすオリビア。
「ひいっ!」
必死に逃げ回るペルーサを見て呆れるアコン。
「……ペルーサってもしかして変態なのか……?」
「そうよ。あれがあの男の本性なのよ」
「考え直すかな……」
ボソッと呟くアコン。
オリハルコンのダンジョンへの旅は続く――
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